第71話CMクィーン

オルファルコン社の

CMが放送されると


権太坂36のサイトは

一時繋がりにくくなった。


CMを見てファンに

なった人が絵色女神の

グッズを求めて


大挙してサイトに

集中したからである。


だが、女神のグッズは

先週に全て完売しており

全商品入荷待ち状態で

あった。




サイトに来たからには

何か欲しいと考えた人々は


女神を含めた

全員が写っている

グッズを買ったので

そちらも今日で完売となる。


その人気は握手会の

事前予約でも

如実に現れており


CD購入に同封されている

抽選での握手会の参加券は

ネットで事前予約が必要だが


女神の枠7200枚は

全て予約済みとなっていた。


握手会と言えば

聞こえは良いが


1人1秒で手にタッチをしたら

流れ作業のようにスタッフに


アイドルの前から

引き剥がされ

外に出される催しだ。


『応援してます、

頑張って下さい』


その言葉を全部、

言い終わった時には

外に出されて

終わっている。


だが大好きなアイドルを

目の前、50cmの

至近距離で見れて


タッチ出来る事は

魅力的であるようで


毎回、握手会は盛況で

CDの売り上げに

貢献をしている。


女神の7200回の予約枠は

1人1秒で60人と

タッチするのを


2時間連続で実施して

こなせる数字である。


運営サイドも

流れ作業のように


処理をしていかないと

こなせない人数であった。


握手会当日は

ミニコンサートもあり


お目当てのアイドルと

握手を出来なくても


楽しめる

イベントになっている。


なので推しの枠が

取れなかった


ファン達は2番推し、

3番推しの握手会に

変更希望を変えていき


握手会での対応が神対応で

推しを変えたなんて話も聞く。


前回の女神の握手会の

希望者は200人程度だった。


運営サイドも、

ここでの人気で


グループ内の

序列を付けている。


残酷だが2桁しか

列に並ばない

メンバーもおり


公開処刑のようなイベントに

耐えられずに

胃が痛くなる者も

いるそうだ。


こんな時に運営サイドに

『水着の仕事が

入っているけど

やってみるか?』


そう言われたアイドルは

起死回生の一発にかけて

青年誌のグラビアに登場する。


朝から流された

女神が出演する

オリファルコン社の CMは

日本中の話題をさらっていた。


絵色女神って可愛いよな?


モテない中学生男子3人組の

ジャガイモは


『俺、絵色女神だったら

3億円を払っても良い』と

空想を語り


友人に


『絵色女神と付き合う為に

俺ら3人で韓国に渡って

アイドルに成らないか?』と

妄想を膨らませている。


屋上でジャガイモが

戯れる日本は

幸せであると言っても

過言ではない。


場所は

サニーミュージック本社


広告代理店の数社から

問い合わせが事務所に

何件も入っている。


『絵色女神の出演料と

CM出演可能な

業態を教えてくれ』と言う

ものばかりだった。


オリファルコンが

一番最初に女神に目をつけて

華々しく

オンエアが開始された。


女神出演中の CMを見た

他企業のクライアントから


出演の打診依頼が代理店に

殺到していたのだろう。


ここに需要と供給の

バランスが出てくる。


当初、オリファルコンの

CMに女神が出演した時の

契約金は1億円だった。


次のミラージュ社が

依頼した時は

1億1000万円にアップされて


ジャックモンド社の時は

1億2000万円と

2番手、3番手は

上がってきている。


だが、これは

オリファルコン社の

CMが放送される

前だったので


絵色女神の出演料は2億円に

今日から変更となった。


その値上げした予算でも

化粧品会社と


即席麺メ-カ-が

即決で出演依頼を

確定させていた。


はじめから3億までなら

抑えて欲しいと

言われていたのだろう。


この日、新しい CMが

女神の知らない間に

7本も決まった。


CMクィーンと

呼ばれる女優でさえ

現在は18社である。


それをデビューして

半年も経っていない

アイドルが

モノにしているのは


間違いなく

シンデレラストーリーだろう。


この事態で事務所サイドは

女神のテレビ出演の方針の

変更を決めた。


今まではバラエティの

ゲストでも


ワイドショーでも

呼ばれた番組には出演を

させてきたが


この何日間で視聴率の

高い番組に出演を

絞り始めたのであった。


この1週間の

多忙なマスコミ媒体の出演に

女神が疲れてきた事を

考慮したのも一つだが


過度の出演で

タレントの鮮度の劣化を

未然に防ぐのが目的である。


日本のテレビ局は

1人が売れると各局が

こぞって出演依頼をして


どの局の番組にでも

出演するので世間に、

すぐ飽きられてしまい


タレント生命の

寿命が短くなる。


飽きられてしまう。


芸能人としての宿命だが

やり方次第では


賞味期限を

伸ばす事は可能だ。


山田プロデュ-サ-は

そう考えて


女神の出演を

制限する事にした。


この方針で女神に

時間のゆとりが

作れるようになる。


『立花さん土曜日、日曜日は

お休みですよね?』


仕事の合間に、

今日も女神が

電話をしている。


日曜日は蝶野とアニメイトに

行くが女神には内緒だ。


『あぁ、休みだよ』

立花が答えると


『金曜日の夜に泊まっても

良いですか?』と

彼女が尋ねてきた。


『金曜日って、明日の夜か?』


『仕事は大丈夫なのか?』

立花が、ここ最近の女神の


ハ-ドスケジュールを考えて

心配すると


『金曜日の夜は終わりの

予定が21時なんです』


『次の日は朝10時に

赤坂なので

夜更かししても

大丈夫なんです』


そう聞いた立花は

『俺は土曜日はヒマだから

全然、大丈夫だよ』


立花が答えた事で金曜日の

お泊まりが決定する。


1週間振りに

女神が泊まりに来る。


前回は女神が女の子の日で

途中までで終わっていたが

今回は大丈夫だろう。


明日が楽しみな

立花とは違って


嬉しい半分、

複雑な気持ちが

入り交じる女神であった。


広告代理店の濱口に

無理矢理とはいえ


キスをされた事を立花に

まだ言っていない。


言ったら嫌われて、

振られてしまう?


キスされた事を

立花に話すか?


女神は悩んでいた。

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