第70話賞味期限

立花とのテレビ電話を

切った女神は

久しぶりの文字以外の

コミニケーションに

満足して、

控え室に戻っていく。


電話は嬉しかったのだが

一つ気になる事があった。


『何で、アパートの廊下に

出ているんですか?』


立花の背景が

部屋の中でない事に

気付いた女神が質問すると


『会社の仲間が来ているから

女神とのテレビ電話で

バレたら』


『色々と面倒だろ?』と

立花は説明していた。


立花さんは自分で

『会社内で喋る人間なんて

1人くらいしか居ない』と

言っていたのだが


それなのに

夜にアパートに仲間が

来ているなんて意外


でも自分がアパートに

行かない事で


立花が寂しい思いを

しているのでは?と

考えていた女神は

少し安心した。


普段、喋っている

立花さんは普通で

コミュ障とも思えない。


きっと、ふざけて

自虐ネタとして


友達がいないと

言ったんだろう、と

考える事にする。


場所は立花のアパート


さっきまでの

修羅場がウソのように

静まりかえった

アパートに1人


立花は、さっき

藤波係長が

来なかったら、

どうなっていたんだ?


そんな事を自問自答する。


女神と話した今、

冷静となり


性欲の波も去ったので

蝶野に電話をして


アパートに

呼び戻すつもりはない。


だが次も蝶野に

迫られたら断われる

自信が立花にはなかった。


出来ない彼女の存在と、

すぐに出来る

彼女以外の女性の間で

苦悩している。


苦悩しているのは

蝶野正子も同じだった。


彼女の今までの

男性遍歴では


カラダをエサにすれば

どんな男も

飛びついてきたので


付き合ってから

スルのではなく

ヤッてから付き合う


見た目で気に入った男に

モ-ションをかけて

ベッドに入った後に


性格を知って

付き合う事を決めていた。


なので見た目は

イケメンだが


中身がスカスカの男も多く

1週間で別れる事も

ザラであった。


この前まで

付き合っていた男とは

結婚まで考えていたが


蝶野のワガママに

彼氏が我慢出来ずに

破局している。


別に次の男を

探せばイイだけ


私が気に入って

声を掛ければ


どんな男もチョロく、

イチコロよ。


そう、たかをくくっていた。


取得困難な国家資格を

所有しており


旦那さんにしても

自分の思い通りになる男


立花をそう

決めつけていたが


何度、アタックしても

落とせず


しまいには

中学生女子のように


立花が好き過ぎて

心配で寝れなくなる始末だ。


こんな事はなかった。


派手な格好をして、

イイ女を演じていたが


元々は

オタク女子気質なので

普通の恋愛に対して

免疫が無い。


更に立花には

モデルクラスの彼女が

いるので

見た目でも勝負にならない。


短大の時に

同じゼミの女子が


自分の事を

ヤリ○ンと呼んでいた事を

知っていた。


モテない奴らが、

ほざいていろ


そう思っていた。


だが落ち着いた

年齢になってきて

世間が見えてきてから


男性経験の多い女子が

世の男子から

敬遠される事を知った。


遊ぶ女と

結婚する女は違う


付き合っている時の

男子の行動で

あなたにも分かる男性心理


そんな記事を見つけると

読んでしまう。


自分の彼女が

男性経験10人を

超えていたら

結婚相手には見れない。


そんな記事を見た時には

立ち直れなくなった。


蝶野は経験人数が

20人を超えてから

数えるのをやめた。


蝶野も自分で分かっている。


車だって、新車がいい。


中古車だって、

前のオ-ナ-が3人と

50人だったら

3人が選ばれていくだろう。


立花も、それに気づいていて

私に手を出さないのでは?


そう思った時に

自ら宣言してしまった


都合の良い女と言う言葉を

後悔していた。


付き合った男には

アニメ好きだと言う事は

言ってこなかった。


喋ったら

引かれると思って


ひた隠しにしてきたが

立花も同じアニメ好き


彼氏とアニメの話しをして

盛り上がる付き合い方に

密かに憧れていた。


取得困難な国家資格を

持っているので


将来有望と考えて

ピンチで守ってくれた

立花を良いと思っていたが


更にアニメ好きと分かり

これ以上の結婚相手は


いないとさえ

考え始めていた。


結婚する相手で女性の

人生は大きく変わる。


愛があれば、お金なんて

いらない。


そんな事を言っているのは

世間知らずの

子供の戯言である。


酒飲みでギャンブル好き

ろくに働かない父親の元で

蝶野は育っていた。


裕福ではない家庭で

ギリギリの生活だった。


友達が夏休みや冬休みに

ディズニーランドに


行ったと言う話をする時は

その輪から出ていく。


順番に自分の話しを

していき


何処にも行っていない

蝶野は惨めな思いを

するからだ。


服を買って貰った。

靴を買って貰った。


今日はピアノのレッスン

明日はバレェのレッスン


自分には関係ない

話ばかりが続く。


蝶野は会話の輪に

入れないので

家へと逃げ帰る。


家にいる時にイヤな事を

忘れさせてくれたのが

テレビのアニメだった。


異世界の話、未来の話

外国の話、魔法使いの話

ちょっぴりエッチな話


現実から逃避するように

蝶野正子は

アニメを見まくった。


そして中学2年の時に

アニメの世界のように


憧れの先輩が蝶野に

告白をしてくる。


嬉しくて付き合うと

周りの女子の

蝶野を見る目が

変わっていった。


かっこいい先輩と

付き合う女として


羨望の眼差しで

あったのである。


劣等感の中で育った

蝶野が初めて知った

優越感だった。


かっこいい男と

付き合えば

自分も認めて貰える。


それから彼女は

男を選ぶ時に


いかに注目されるか?で

付き合うように

なっていった。


気になった立花に

彼女がいても


奪い取ってきた自信と

実績で今回もイケると

思っていたが

上手くいかない。


彼氏にも逃げられたし、

いつまでも立花は落ちない


私は女として

賞味期限が切れている?


24歳の彼女は、

そう心配している。


お尻も垂れてきた?

胸も小さくなっている?


1人ベッドの中で悩み、

布団を頭から

被る彼女であった。


ここにも1人

敗北感に

打ちひしがれている

女性がいる。


藤波係長だ。


噂で

立花に彼女がいるのは

聞いていた。


だが目の前で

嬉しそうに笑顔で


電話をしている姿を

見たのは

ショックだった。


更に蝶野も

立花を狙っているのが

明らかになり

更に超える壁が高くなる。


蝶野は24歳、

自分はもうすぐ31歳


肌ツヤでは

勝負にならない。


イケイケOLの蝶野が

おしとやかになったのは


立花の影響なのは

誰にでも分かった。


でも、まさか家に

上がり込んでいるとは

思わなかったので


アパートまで押し掛けて

鉢合わせをしてしまい

大恥をかいてしまう。


群馬県で同じ部屋に

泊まらなかったら


憧れだけで

終わっていただろう。


だが風呂に入っている

姿を見てしまい


立花の全てを

見てしまった後に


我慢出来ずに

寝ている彼に

キスをしてしまった。


同意なく寝ている相手に

キスをする事は


後ろ指をさされる事は

分かっていたが


欲望に負けて、

寝ている立花に


キスをして

それ以上も考えていた。


だが、キスをした瞬間に

立花が寝返りを打ち


起きたと思って

慌て立花から離れる。


それ以降はビビって何も

出来なかった。


欲求不満だけが残っている。


藤波係長は寝る前に

自分で自分を

いじめてから寝る。


今夜も頭の中で

立花としている事を

想像して没頭していく。


妻のいる男は

絶対に好きにならない

そう決めていた。


彼女のいる男は?


結婚を半分諦めていたが

恋愛は自由じゃないか?と

思っている。


日本酒に酔った藤波係長は

自分のベッドの中で乱れ

やがて眠りについた。

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