第68話鉢合わせ
アパートに来ている?
蝶野のLINEに驚いた
立花が急いで
玄関のドアを開けると
紺のレディーススーツを
着た蝶野が玄関前に
立っている。
『よく俺の家を
知っていたな?』
そう言いながら
彼女を玄関口まで
迎え入れた。
『この前、食事をした時に
酔った立花さんを
送りましたから』と
説明すると
『そうだったな、ゴメン』
『俺、寝不足で撃沈して
覚えていないんだよ』と
立花が謝る。
やっぱり
全然覚えていないんだ
蝶野は安心したのと
残念な気持ちが
入り交じる
複雑な心境になる。
『こんな遅くに、
すいません』と謝る蝶野に
『別にいいよ携帯でゲ-ムを
していただけだから』と
立花が説明する。
蝶野は今日、
彼女が来ていなかったら
チャンスと
予想をしていたのだ。
土曜日、日曜日に会わず、
昨日は急遽遠方で宿泊
恋人同士なら
今日は絶対に会いたい筈
更に1人暮らしの
彼氏のアパートなら
気兼ねなく行ける。
なのに今日も来ていない。
これは、もうすぐ別れる。
蝶野はそう推測したのである。
国家試験は口実であり、
立花のアパート内での
状況を確認したいのと
日曜日まで待ちきれず
立花と2人きりに
なりたかったのが
彼女を動かした
要因であった。
『狭いけど上がるか?』
立花に、
そう言われた蝶野は
『じゃあ、ちょっとだけ
お邪魔させて貰います』と
言って
蝶野は家に上がる。
台所の前を通ると
キッチンには前回と同じく
ペアの食器類が置いてあり
同棲しているように見える。
だが今日は事前リサーチで
彼女は来ないと聞いていた。
2人きりでも邪魔されない。
殺風景な部屋に
通された蝶野は
牛丼弁当の
空き容器が置いてある
テ-ブル前に座った。
立花が冷蔵庫から
ペットボトルの
お茶を持って来て
蝶野の前に置き
『試験の事なら
明日、会社でも
良かったのに』と言うと
『国家試験は口実です』と
蝶野は正直に白状をして
『本当は日曜日まで
待てなくて立花さんに
会いに来たんです』と
下を向きながら
恥ずかしらそうに
言ってきたのである。
時間は20時前
先日、蝶野が言っていた
『呼んでくれたら
夜中でも行きます』を
思い出した立花は
下半身が一気に
熱くなるのを感じた。
それを悟られないように
立花は
『どうしたんだよ、
急にそんな事を
言い出して』と
蝶野に聞くと
『昨夜、立花さんが
係長と一緒に
泊まるって考えたら』
『一睡も出来なかったんです』
『その時に私は、
やっぱり立花さんが
好きだって分かりました』
『彼女さんがいても、
かまいません』
『今日、泊まらせて
貰えませんか?』と
真剣な眼差しで
立花に迫ってきた。
『都合の良い女』
日曜日の蝶野の言葉が、
また思い出され
つい蝶野の胸に視線が
いってしまう立花である。
彼女がいる男に
告白して2番目でも
かまわないと
思っていたのに
係長との宿泊で焦りが
大きくなっていき
立花に自分の事を
認めて貰う承認欲求が
強くなってしまった
蝶野であった。
葛藤
女神が好きな自分と
目の前にいる
すぐに抱けそうな蝶野
蝶野が彼女でも悪くない。
昨晩、浮気の概念の話で
頭に浮かんだ
胸を揉む妄想をした時の
相手は蝶野であった。
全部したら浮気
胸までならセ-フ
自分勝手な理論である。
だが、それを咎めるモノは
誰もいない。
ここは密室で
立花と蝶野しか
いないのだから。
立花は自分の心臓の鼓動が
早くなるのを感じていた。
避妊具を買った事を
思い出す。
使わない
使うつもりは無い。
でも、もしかして
使う時になっても大丈夫
『泊まるって言っても、
ベッドは一つしか
ないけど?』と
立花が告げる。
泊まる事は
拒否されていない
そう感じた蝶野は
『一緒に寝るならベッドは
一つで良いじゃないですか』と
立花を逃げられない状況に
追い込む言葉を投げかけた。
女神とは次に何時会えるか
分からない。
女神が刺激した結果、
立花の性欲は
完全に復活していた。
エッチがしたい。
男の素直な本能だ。
黙っている立花を
見ていた蝶野は立ち上がり
向かい合って
席から歩いて来て
立花の横に座り
『今日だけ、
わがままを聞いて下さい』
そう言って立花の首に
自分の両手を回して
キスをしてきた。
目を閉じて震えている
蝶野を見た立花も
目を閉じて
蝶野のキスを受ける。
拒否されたら、どうしよう?
嫌われたら、どうしよう?
キスを仕掛けた蝶野の
賭けであった。
立花に
拒否されなかった事が
嬉しかった。
こんなドキドキするキスは
中学生以来だ。
手をつなぐだけで
心臓の鼓動が
早くなっていた頃と同じだ。
立花も爆発寸前だった。
会社の後輩を
1人の女性として
認識している自分
蝶野がゆっくりと
顔を動かして
『キスしちゃいました』と
苦笑交じりで言ってくる。
『あぁ』
薄皮一枚で繋がっていた
立花の倫理観は切れていた。
頭の中から
女神の事は消えており
一匹のオスとして
蝶野を抱きたい欲望が
頭を占めている。
立花の瞳を見て、
それを感じた蝶野が
『ベッドに行きましょう?』
そう立花を誘う。
催眠術にかかったように
『うん』と
立花も頷き
立ち上がった時に
『ピンポ-ン』と
玄関のチャイムが
鳴ったのであった。
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