第57話既読スル-
蝶野と別れた立花は自宅に
帰るタメに電車に乗っていた。
時間は20時、次の日が
仕事だと言う事を考えたら
社会人としては常識の
範囲内での解散時間である。
蝶野がアニメ好きだとは
意外だった。
周りのアニメ好きを
探すのは難しい。
アニメを好きだと
カミングアウトすると
『マジで?』と
今まで仲良く喋っていた
友人から白い目で
見られた状況を
アニメ好きなら
一度や二度は経験して
イヤな気分に
なっているからだ。
だから自分から
アニメ好きだという事を
白状する事は少ない。
SNSで仲間を
見つければ良いのだろうが
アニオタは基本、
自分から人に
声をかけたりするのが苦手だ。
砂漠で遭難して1人で
歩いて迷っていた時に
他の人に会えた
喜びに似ており
身近にいたアニメ好きの
蝶野との来週の池袋が
楽しみになっている。
ここに来てやっと
女神の存在を
思い出した立花が
スマホを見ると
女神からのLINEが3件
入っている事に気付いた。
内容は
『今、ライブ番組の
収録の合間です』
『佐山さんが作った
曲じゃない新曲なんで
私の出番は少ないです』
『また連絡します』
その次は
『返信がない、え〜ん(泣)』
『お休みだから、
お昼寝ですか?』
『ゆっくり休んで下さいね』
最後のメッセージは
『大丈夫ですか?』
『病気じゃないですよね?』
『心配なので、返信下さい』
12時から8時間、
ほったらかしにしていた
立花のスマホに
入っていたメッセージだった。
分刻みのスケジュールで
トイレに行って
やっと1人になれた
時間に打っていた
女神のLINEであったが
立花は
『大丈夫です』とだけ
打って返信をした。
収録と言ったって、
空き時間には楽屋にいて
ヒマなんだろ?
もっと長いメッセージを
打ち返す事も
出来るだろう?と
立花は思っていた。
テレビで見る芸能人は
楽屋で談笑しており
女神も、そうだろうと
思い込んでいる。
実際は雑誌の
取材記者が例を作って
待っており、
各社が順番待ちして
インタビューをしていた。
女神ブレイクで
数十社がインタビューを
申し込んできたが
インタビューだけで
時間も場所も
抑えていたら、
さばききれないので
雑誌の記者に
楽屋に来て貰い
他の権太坂36メンバーが
いる楽屋で女神だけ端っこで
インタビューの
ハシゴ取材を
受けていたのである。
収録が再開されると
インタビューは中断し
収録が終わったら
インタビューを再開
インタビューが終わったら
新しいCMの
打ち合わせが入っており
お行儀が悪いが
先方の了解を貰って
打ち合わせをしながら
食事を取っている
状態だった。
その多忙の中、
トイレに行く時間だけは
1人になれるので
立花のレスを楽しみに
トイレに走っていき
返信を確認するがレスは無い。
『立花さん、病気なの?』
『1人で寝込んでいない?』
彼女は心配で、
たまらなかった。
だが心配をしていた相手は
後輩のふくよかな
バストに鼻の下を
伸ばしており
8時間待たして
返したレスは
『大丈夫です』の
5文字だった。
環境の違う2人なので、
お互いの状況が
分からない。
急激に変化した
女神の仕事環境を
立花が想像して
思いやる事が出来ていなく
全てが悪循環であった。
最初は立花も、
かまってくれないから
意地悪してやる位の
気持ちだったのかも
しれない。
女神がトップアイドルの
道を歩き始めたから
自分は足を
引っ張らないように
身を引いた方が良いだろう。
半分冗談で
半分本気でそう考えて
自分は1人ボッチに
戻ってしまうが
しょうがないと思っていた。
だが人生最高の
モテ期に入った彼は
女神に好きと言われてからも
武藤慶子や蝶野正子と
続けて美人に告白されて
俺ってモテるのでは?と
調子に乗っていたのである。
女神が居なくなっても、
何とかなると
思い始めてもいた。
武藤慶子に、
あれだけの事を
言っておきながら
自分の事はお粗末である。
蝶野が言った
『真夜中でも
呼び出してください』
あの言葉には
グッと来たというか
全部持っていかれている。
夜中に呼び出すなんて、
ヤる事なんて
一つしかないじゃん。
それを、
あの蝶野が言ったのだ。
イケイケなイメージな
彼女だが、
仕事をヘルプして以降は
立花に対して
絶対服従で従順であった。
資格取得に向けて、
頑張っている姿を
見ていると応援したくなる。
女神も、アイドルで
頑張る姿に感動して
応援を始めたが
自分の手の届かない場所に
行き始めて
しまっているが
蝶野は何の制約もなく
会いたい時に会える。
マスコミの目を
気にする事もなく
好きな時に好きな場所で
自然体でいられる。
次に付き合う女性は
結婚する相手にしたいと
考えている
立花のポリシーは
変わっていない。
女神と結婚する可能性は
あるのか?
17歳の現役アイドルで
目下トップアイドルの
仲間入り間近。
何の取り柄もない
会社員の自分とは
不釣り合いなカップル
やはり、そこに
行きついてしまう。
久しぶりの立花からの
レスが来た時に
女神はすぐに分かった。
テレビ収録時には
御法度である
スマホを、コッソリと
衣装に
忍ばせていたのであった。
権太坂の衣装は
女子高生のブレザーを
イメージした衣装だったので
内ポケットに
スマホを入れる事は
可能ではあったが
万が一に収録中に
鳴ってしまい、収録を
止めてしまったら
めちゃくちゃ怒られる事を
女神も分かってはいたが
立花のレスが
返ってこない状態では
何も考えられず
居ても立っても
居られずの行動であった。
スマホを確認したい。
早く収録が終わって欲しい。
そんな時に限って
収録は長引き
立花のレスが来てから
1時間半後に
収録が終わって
権太坂のメンバーは
楽屋に行ける状態となる。
すぐに女神は
スタジオを出て廊下で1人
スマホを確認した。
『大丈夫です』
立花からの安否連絡に
胸を撫で下ろしたが
淡白なレスに違和感を感じた。
具合が悪いが
心配させない様に
強がっているメッセージ?
猪木会長や
佐山サトシのような
自分が知らない人と
会っているから
返信が出来ない?
色々な事を頭の中で
考えているが
立花が他の女と
会っている事は
全く予想をしていなかった。
『勝手に具合が
悪くなっていると思って
心配していたので』
『大丈夫で安心しました』
女神が急いで打ったLINEは
すぐに既読になった。
『時間は23時前だから、
まだ立花さんも
寝ていなかったんだ』
リアルタイムで
繋がる事が少なかった
女神は立花からのレスを
待っている。
そこに権太坂の先輩が
『女神、
ミ-ティング始まるよ』と
呼びに来た。
『はい、今行きます』
スマホを握りしめたままの
女神が楽屋に
走って行ったが立花からの
レスは来なかった。
自由が丘のアパートに
戻っていた立花は
女神のLINEを見て
『心配だったら
会いに来いよ』と
悪態をついて
LINEを見終わった
スマホを床に置いて
寝てしまったのだ。
女神は仕事中も、
仕事が終わってからも
スマホを握り締めており
深夜2時に家に
帰ってからもスマホを
握り締めて
立花のレスを待っていた。
だが明け方になってからも
立花のレスは来る訳もなく
その日、女神は一睡も出来ずに
朝を迎えたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます