第56話同じ価値観
胸を強調した黒ニットを
着てきた蝶野の作戦は
成功だと言っていいだろう。
彼女の発した
『都合のいい女』と言う言葉
立花はそれを聞いた瞬間に
蝶野と裸で絡み合っている
自分の姿を想像して
下半身が反応して
完全体になっていた。
記者会見が終わった日に
女神が女の子の日だったので
最後までする事は
出来なかったのだが
女神の身体の隅々まで見て
自分のタッチで悶える
彼女に興奮して
立花の眠っていた
男の本能は
完全に復活してしまった。
立花には発射したい
欲望はあったが
初めての女神に気を使って
ギンギンだったのに
我慢をしてしまっている。
言ってみれば
今の性欲は満タン状態である。
そこに美人な後輩が
いやらしくないが
色っぽい服装で
告白してきた。
棚橋ではないが、
蝶野の胸を見てみたい
後輩ではあるが
1人の女性として
彼女は魅力的だった。
立花はしばらく言葉を
発せずに
妄想と現実を往復している。
その間が
長く感じられた蝶野は
沈黙に耐えられず
『今は答えを出さなくて、
いいです』
蝶野は断られるモノだと
思って立花に、
そう言ってしまったのだ。
立花を落とせる
寸前だったが、
常に上から目線で
男を攻略してきた蝶野は
女子中学生が
憧れの先輩に告るような
こちらから告白して、
付き合う経験がなく
戦況を見誤ったのだ。
沈黙に耐えられなくなった
蝶野正子の判断ミスであった。
『立花さんを
好きだって言った事は
忘れてください』
『立花さんが遊びたい時に
呼び出してくれるだけで
良いです』
『呼んでくれたら
夜中でも行きます』
そう言った後に席を立ち
『ちょっとトイレに
行って来ます』と言って
真っ赤な顔をして
テ-ブルを後にした。
妄想の世界から
現実に戻ってきたが
残された立花は
放心状態だった。
『俺の事が好きなのか?』
独り言を言って
ニヤついている。
一方トイレに
緊急避難してきた蝶野は
鏡の前で自分の顔が
真っ赤になっている事で
更に恥ずかしさが
倍増しながら
『どうしよう?
告白しちゃった』と
あたふたしていた。
『好きです』
その4文字は、
相手から言わせる
そのポリシーを捨てて
アタックしたが
玉砕してしまった。
そう感じた蝶野は
頭を抱えて悩んでいた。
モデルクラスの彼女と
別れた訳じゃないのに
何を別れる前提で
自分は話して
しまったのだろう。
恥ずかしくて死にたい。
どんな顔して会えば良いのよ。
合コンクィーンと言われた
彼女が今は恋する
乙女となっている。
だが、席には
戻らないといけない。
覚悟を決めて、
立花のいる席に戻った
蝶野は
『大変失礼致しました』と
頭を下げて立花に詫びたが
『何で、謝るんだよ』と
立花に言われて、
少しビックリしている。
『休日に1人ぼっちの
俺が気の毒で
遊んでくれようと、
してくれたんだろ?』
『蝶野の迷惑に
ならない程度に
声をかけるから』
『その時は一緒に
遊んでくれよ?』
蝶野の告白を
聞かなかった事のように
普通に接している
立花の行動に
彼女は感動していた。
『本当に、
いつでも空いています』
『カラオケでも、ドライブでも
何でも誘ってください』
蝶野が笑顔で返す。
蝶野が
トイレに行っている間に
立花から
エロモ-ドは消えていた。
それは、
おとといの日に見た
棚橋を罠にはめていた
慶子の怖さだった。
あの時の話では
棚橋は慶子と合意で
ホテルに行ったが
後で大変な事に
なっていた事を思い出し
蝶野のアプローチに
警戒心を持つ事に
していたのだ。
純粋な気持ちに
なっている蝶野には
気の毒だが
友人が騙されていたのを
目にしており
立花が警戒するのも
仕方ないであろう。
後輩としての距離を
保ちながら蝶野と接して
行こうと心に誓った
立花である。
『車は持ってないから
ドライブは行けないし』
『歌は下手だから、
カラオケも行っても
聞く専門なんだよ』
立花としては、
やんわりと
断ったつもりだったが
『カラオケで立花さんの
好きな曲を
私が歌いますよ』と
蝶野が予想外の事を
言ってきた。
一緒に歌えないなら
カラオケに行く意味が
無いと思って言ってみたが
蝶野は合わせようと
してくれている。
それならと
『俺の好きな曲って
マニアックだから蝶野は
知らないと思うよ』と
立花が言うと
『え〜、何系ですか?』と
興味津々に質問をしてきた。
『今、アイフォーンで
毎日聞いているのは
恋衣って曲なんだけど』
『知らないだろう?』と
立花が言うと
『もののがたりの1期の
オ-プニングの曲
ですよね?』と
正解を言ってきたのである。
『何で、蝶野は
知っているの?』
ビックリした立花が聞くと
『私、アニメが
大好きなんです』と
カミングアウトしてきたのだ。
『え?蝶野も
アニメが好きなの?』
普段の蝶野を見ていると
三代目のような
ワイルドなイメージを
勝手にしていたので
アニメが好きなのは
意外であった。
『他には何が
好きなんですか?』
蝶野に、
そう言われた立花は
同じマニアに会えた喜びで
『異世界おじさん、
なんて好きだったな』
立花が言うと
『私もオ-プニングの曲も
好きですし』
『エンディングの
一番星ソノリティは
95点を出した事も
あります』と
立花のツボを完全に
抑えた100点の
答えを返してきたのであった。
『立花さんに
予定が無いなら来週に
池袋のアニメイトに行って』
『その後にカラオケの
鉄人に行くなんて
どうですか?』と
次回のアポを
蝶野がサラッと聞く。
池袋のアニメイト、
しばらく行ってないし
異世界おじさんを
聞かせてもらえる。
『リコリスは歌える?』
子供のように立花が聞くと
『Clarisは全曲、歌えますよ』
そう蝶野が答えて
『是非、お願いします』と
立花からお願いをしていた。
その時の立花の頭には
慶子に騙されていた
棚橋の姿は消えて
絵色女神の存在も
忘れていた。
相手に無理して
合わせる必要のない
同じ価値観は安心できる。
立花は蝶野と
次の日曜日に会う約束を
してしまったのである。
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