第53話副社長就任

エクシブハンター世界大会の

ニュースで世界一斉の

ダウンロードが発生して

サ-バ-ダウンした翌日


オリファルコン本社では

休日返上で土曜日の午後に

会議が行われていた。


猪木会長を筆頭に

開発チ-ムも集まり

世界大会の開催に向けて

最終打ち合わせをしている。


『木曜日、金曜日だけで

500万ダウンロードを

超えています』


『アイテム購入の課金も

20億円を突破してますので』


『最終的には

世界大会開催までには50億円は

達成出来ると思います』


担当部長の説明に頷く

猪木会長


記者会見を含めて世界大会の

経費は15億円だったので


大会の運営はプラスと言って

間違いないだろう。


プレイ中の画面での

バグの修正確認も

終了していた。


会議の参加者は

この内容で会議を

終了しようとしていた。


『副社長から

何かありますか?』


猪木会長に、

そう聞かれた立花は


『副社長じゃないって』と

前置きをしながら喋り出す。


『お金がかかる

話なんですけど

良いですか?』と

猪木会長にお伺いをすると


『どうぞ?』と

了解を貰う。


『ダウンロード出来る国の

YouTubeで母国語でCMを

流します』


『携帯ゲ-ムをする層の

人達はYouTubeを

見ている人が多いと思います』


『記者会見のニュースが

落ち着くとダウンロード数は

落ち着くと思うので』


『認知度を浸透させるために

世界大会の開催中は

しばらくCMを流したいです』


『開催前と開催中の波状攻撃で

エクシブハンターの世界大会を

強く印象付けたいのですが?』と

立花が発言する。


それを聞いた猪木会長は

坂口さんをチラッと見ると


『画像は絵色さんの素材を

使えばナレ-ションの人だけ』


『その国の方に頼めば、

すぐに対応できると思います』


それを聞いた猪木会長は

『それでは、すぐに

準備して下さい』と

言って指示を出した。


『まだ、ありそうですね?』と

立花を見ながら会長が微笑むと


『実現可能か?

分からないのですが

何点かあります』と

話し始めたのである。


通訳アプリの性能は、

この数年で格段に向上した。


日本製のソフトである

エクシブハンターが

世界中でヒットしているのは


プレイしている人が違和感を

感じず自国のゲ-ムだと

思うほど自国の言語で

画面内の説明が翻訳されて

いるからである。


そのシステムは

ログインした時に


国名を選択する事で

プレイヤ-の国籍を判断して

その言語でそのまま

プレイする事ができるからだ。


立花の提案は

ログインした選手が


自国での自分の順位が

分かるシステムと


世界での順位を知れる

システムを作り


プレイせずに観客として

ログインした人が

自国の選手で

ファンになった人を

登録出来て、常に観戦出来る

システムを追加するものだった。


観客が応援している選手の

活躍を見て応援する際に

投げ銭システムでサポート

できるようにする。


選手は、その資金で

アイテムを購入して

武装強化して上位を目指せる。


応援した選手が成長して

戦っていき自国内での

ランキングと世界での

ランキングが分かれば


ゲ-ムをしない観覧者も

オ-ナ-気分で

エクシブハンターの世界観を

共有出来て参戦したつもりで

楽しめるのでは?

と言うものだった。


オリンピックなどで

ルールが分からない

競技であっても


自国の選手が出ていると、

つい見てしまう

愛国心を狙ったものである。


YouTubeで事前に

周知徹底していれば

今までゲ-ムに興味の

なかった人も気になり

好奇心で見てくれるのでは?


その観覧者も、

いつかプレイヤ-に

なってくれたら裾野が広がる。


『世界大会が終わっても

エクシブハンターを

継続してプレイしてくれる

可能性が大きくなると

思うのです』


これには会議に参加していた

オリファルコンの社員からも


『確かに盛り上がる』

『推しを応援したくなるよ』と

絶賛の声が多く聞けた。


その他にも立花のアイデアは

発表されてその全てを

採用する事が決まった。


『副社長の

アイデアはすごいですね』


『なんでウチの社員に

ならないんです』

と言う社員達の声を聞いて

猪木会長は微笑んでいる。


絵色女神のCM起用が

強引過ぎたと社員から

反発が出ることを

猪木会長は心配していたが


結果、起用は大成功となり

女神の起用に

立花が絡んでいる事を

薄々感じている社員も


今日の立花の

提案力を知ったら

文句を言う

人間は出ないだろう。


世界大会の発案者である

立花に今日の会議の

参加を促していたのは

猪木会長だった。


『言い出しっぺですから、

仕上げには

付き合って下さいよ』


『立花さんのお休みの

土曜日に本社で会議を

しますから参加して下さい』


言い出しっぺか?


見届ける義務はあるよな?


会長に誘われて

参加する事を決めてから

アイデアを温めていた。


元々約束していた

会議だったので

立花も最終会議に

参加をしたが


会議が終わったのを見て、

そそくさと

帰り支度を始める。


その姿を見た猪木会長が

『この後、飲みに

行きませんか?』と

立花を誘うが


昨夜の棚橋との深酒もあって

『昨日は友人と、飲んでいて

酒は遠慮したいです』と

断ると


『でしたら、

お茶にしましょう?』と

誘いの手を変えてきた。


絵色女神の事で

お世話になっていた事もあり

無下に断る事も出来ない。


『でしたら、お茶で』と

言って猪木会長との、

お茶会が決まった。


オリファルコン本社の

会長室で応接室に2人で座り


コ-ヒ-を飲みながら

まったりとしている。


『今日は女神さんは

どちらですか?』と

立花に尋ねると


『新曲のレコーディングと

テレビの収録が

3本入っているって

言ってましたよ』と

他人事のように

立花が説明をする。


『立花さんの希望通りに

売れっ子に

なったじゃないですか?』と

猪木会長が笑いながら

言うが

立花は納得していない表情だ。


『忙しくなってきた

みたいですけど


何を基準に売れたって

言うんですかね?』


立花が哲学的な質問を

会長にする。


『難しい質問ですね』


『でも、ある程度

自分の中で設定した目標に

達したら』


『売れたと言っても

良いんじゃないですかね?』


『でも、CD売り上げ1位とか

ド-ム公演は

達成していないとすると』


『確かに、まだ売れたとは

完全に言えないのかも

しれません』


自問自答した猪木会長も

答えは

見つけられてないようだ。


すると立花は

『会長は、オリファルコンが

いつ売れたと

実感しました?』と

今度は会長自身に質問をする。


質問された会長は

コ-ヒ-を飲みながら

考えこみ


『売れたと言う表現が適切か

分かりませんが』


『エクシブハンターの

ダウンロード数が

国内1位になった時』


『人生で、あの時ほど

嬉しかった事はないですね』と

言いながら目を細めた。


『自社の株式を

東京証券取引所に

上場した時より

嬉しかったんですか?』と


立花が

企業家の夢である上場との

回答ではなかった事が

意外だったので質問すると


『確かに

上場も嬉しかったですけど

あくまで、それは結果でした』


『初めて世の中に作品が

認められた』


『自分が信じてきた道が

間違っていなかったと

証明された事』


『ダウンロード数の

国内1位を獲得した時に

それを実感しました』


会長は、その時を

思い出したようで

熱く語っていたのであった。


更に会長の熱弁は止まらず

『現在は国内シェア1位ですが

あと3年以内には

世界シェア1位を奪取したいと

思っています』と野望を語る。


その話を聞いた立花は

『フ-』と

深いため息をついたので


猪木会長が

『喋り過ぎましたか?』と


自分が原因だと思って

立花に尋ねると


『違います』と

慌てて弁解をした。


『会長しかり、女神もですが

みんな目標と言うか夢が

あるじゃないですか?』


『俺には何にも

夢が無いんです』と

寂しそうに呟いたのである。


『今の会社は好きですが、

絶対に入りたい会社だった

訳じゃないし』


『仕事にやりがいは

感じていますが

生活の為に働いている

感じもします』


それを聞いた会長は

『でしたら、本気で

オルファルコンの入社を

考えてくれないですか?』

そう提案してきたのであった。


『オリファルコンの

入社ですか?』

そう言って考えこむ立花


つい先日までは

スカウトの話が出た瞬間に

立花は断っていたが


今日は拒否をしない立花に

猪木会長も手ごたえを

感じたのか


『エクシブハンターの世界大会が

終わってからで結構です』


『副社長への就任の返事を

聞かせてください』


猪木会長の誘いに対して

立花は


『考えさせてください』と

答えを保留したのであった。










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