第52話美桜の決心

記者会見の翌日から

サニーミュージックの

権太坂チ-ムの電話は

鳴りっぱなしだった。


TV局からの

バラエティ番組への

ゲスト出演依頼や

ラジオ局や雑誌も出演依頼が

多数来ており対応出来ずに

スタッフを増員したほどだ。


漫才のM-1で優勝した瞬間から

そのコンビのマネージャーの

電話に出演依頼が

殺到すると言うがその勢いで


絵色女神への

出演依頼が殺到している。


向こう1ケ月は

全てスケジュールが

埋まってしまっている為に


TV局へは出演辞退を

しなくてはならない状態だが


『せっかくですから

越中美桜なんて

どうでしょうか?』


『彼女も女神と同期で次に

売れるのは彼女だろうと』


『ウチで1番の

推しメンバーなんですよ』


『今のうちから

使っていたら、

鼻がきくって業界でも

評判になりますよ』


そう言った事務所の売り込みで


『そうだね、女神ちゃんの

代わりに女性アイドル枠は

欲しいから』


『その子の予定を

押さえておいて下さい』


こんな感じで事務所で1

人が売れると


補欠要員で他のメンバーも

メディア露出が増えていく。


補欠要員で

出演出来たタレントは

嬉しい気持ち半分


自分のチカラじゃない事を

認識して

複雑な気持ち半分である。


大手事務所や

売れっ子アイドルがいる

事務所なら


おこぼれや売れっ子の

バ-タ-で出演機会も

見込めるが


何の後ろ盾もない

タレントの方が圧倒的に多く


アイドル戦国時代の中で

埋没している。


女神の給料も多くなかったが

弱小事務所に所属している

タレントは1ケ月の給料が

10万円以下の人間も

珍しくない。


本業のアイドルの仕事が

不定期で入るので


時間制でアルバイトのシフトに

入ることも出来ない。


事務所に隠れて

個人撮影のモデルとして

稼ぐ者や


水商売で短期で

稼ぐ者もいるが

SNS全盛期の今


身元がバレたら芸能人としては

終わってしまうので


秘密の会合で

スポンサー探しをする

タレントが多い。


美人女優が

ファッションブランドの社長と

結婚なんてニュースが流れるが

この秘密会合が

舞台となっている。


元広告代理店の

社員だった人間が

当時取引のあった社長たちに

女優やタレントとの

パーティーをセッティングする。


金持ちたちは地位も名誉も

高級外車も

手に入れてしまうと


次に欲しいモノは

『イイ女』である。


外国の王様しかり、

全てを手に入れた男が

欲しがるのは


人が羨むような

美女を手に入れることだ。


安定や保証の無い

人気稼業のタレントは


将来を危惧して

玉の輿を目指して


金持ちや社長が集まる

パーティーに

こぞって参加したがる。


両者の利害が一致して

毎回、会合は大盛況だった。


女性タレントは参加費は

無料だが男性側は

数十万円を支払う。


高額な年収を稼ぐ

連中にとっては

痛くない金額だ。


女性タレントは無料だが、

ある程度の

基準は設けている。


自称アイドルや

見た事のない

地下アイドルは

参加は出来ない。


タレントからの紹介で

参加にしないと

社長たちからは

高額の参加費を

取っているので

クレ-ムがくるからだ。


逆に有名な女子アナや

人気女優を

連れてきた女性タレントには

特別ボ-ナスが支払われる。


全く接点が無いと

思われるプロ野球選手と

女子アナが結婚したり


人気若手女優がIT社長と

突然、結婚したりするのは


『情報交換会』と言われる

この秘密会合が

きっかけである事が多い。


その会場に越中美桜が

姿を見せたのは

1週間前の事だった。


少ない給料を

補助してくれる人や


芸能界での自分の

後ろ盾になってくれる

スポンサー探しが

目的であった。


会場では胸に名前と年齢、

アイドルやグラビア、

モデルといった属性を

書いた名札を

つけている女性達と


男性陣も名前、年齢、

職業、会社名

そして露骨に

年収まで書いてある

名札をつけて

会は進行していく。


立食パ-ティー式で

何個かの円卓の上には

ホテルの

ケ-タリング料理が並ぶ。


その円卓を輪にして、

色々な人が

歓談をしていた。


越中美桜は初めて

会合に参加したので


ネ-ムプレ-トには

若葉マークを

付けて参加となっている。


ピ-クが過ぎた

グラビアアイドルより


誰もコンタクトを

取っていない

若葉マークを男達は

求めるので


越中美桜の手元には、

すぐに社長たちの

名刺が集まっていった。


会合に参加する時に

後で名前と顔が

覚えきれなくなるので


第一印象や提示された条件を

貰った名刺に点数で

メモすると良いと


運営スタッフに

聞いていたのが

役に立ってきた。


現役アイドルで

16歳の越中美桜の元には


すぐに30枚近くの名刺が

集まったからだ。


参加している男たちは

変態が多く

若い美桜には

列が出来ている。


その場で貰った名刺の裏側には

社長のプライベートの

携帯番号が書いてあり


女性が気にいった場合には

後から連絡が

出来るようにしており


会場で話がまとまらなくても

機会を持てるように

してあった。


越中美桜は会場で貰った

名刺に1週間

電話をせずにいた。


それは熊本に残していた

彼氏の事が

1番大好きだったからで


電話をすれば

彼氏を裏切ることになる事は

彼女も分かっていた。


金持ち達が自分に何を求めて

援助やスポンサーを

申し出ているかは

分かっている。


権太坂で頑張ってきたが

芽は出ない。


そのうち売れたら嬉しい、

軽い気持ちで

しばらく活動していたが


同期の絵色女神が

目の前でブレイクした。


ゲ-ムアイドルとして

CM出演を

決めただけでなく


佐山サトシを引っ張ってきて

新曲のセンターまで獲得した。


神楽坂の人に

枕営業を否定していたが


何もなくて女神ちゃんが

大活躍をするなんて

あり得ない。


私の方が絶対に可愛い。


チャンスさえ有れば

私の方が売れる。


彼女には負けたくない、

その一心で


名刺をくれた男性に

電話をしていた。


電話の相手は

チョコレートやアイスを

作るお菓子会社の

30代の社長だった。


美桜も知っている

有名メ-カ-の社長を

30代でしているので

おそらく2代目だろう。


見た目や印象で

選んだ訳ではなく


『ウチのCMに半年契約、

それとは別に

月のお手当は50万円』


『会うのは月3回で

泊まりはナシ』


『会う時間は2時間、

どうかな?』


電話で聞いた内容で

美桜は即決した。


電話をした、

その日の夜に社長に

呼び出されて


都心の高級ホテルの一室に

呼ばれた


美桜は社長と面談を始めた。


『こんな関係だから契約書は

存在しない』


『だが月曜日には、

美桜ちゃんの事務所に


広告代理店から

CMの出演依頼が入る』


『そこで契約がスタートする』


『それで良いよね?』


社長に聞かれた美桜は

覚悟を決めて

『はい』と頷いた。


『じゃあ、こっちにおいで』

そう言って美桜を

ベッドに誘う。


手を引っ張って、

美桜をベッドに


仰向けに寝かせた社長は

『美桜ちゃんは

16歳なんだよね?』と

言いながら

ニヤニヤして聞いてくる。


嫌われちゃいけないと

思った美桜は


ひきつった笑顔で

『はい、そうです』と答えた。


それを聞いた社長は

嬉しそうな顔をして


美桜のほっぺたを

ベロベロと舐めて

ヨダレまみれにした後

乱暴に美桜を扱った。


きっちり2時間、

美桜を楽しんだ社長は


『料金は精算済みだから

泊まっても良いし


好きに使ってよ、

俺は帰るからさ』


『また連絡するよ』

そう言って

部屋から出て行った。


広いホテルの部屋に

1人残された美桜は


全裸のまま

風呂へと歩いていくが


社長にぞんざいに扱われて

フラフラした足取りに

なっている。


全身を舐められて

ヨダレの匂いが

残っていたので


早くシャワーを浴びて

社長の痕跡を消したい。


『いたっ』


乳首がお湯にしみて

激痛が走った。


『何度も、乳首を

ねじりやがって

いてぇ〜んだよ』


『こうちゃんは、

もっと優しく

してくれていたんだよ』


そう言った自分の言葉で

彼氏を思い出した。


熊本から東京に来る時に

『俺を捨てないでくれよ』

と言う彼氏に


『私が好きなのは

こうちゃんだけだよ』と

誓って上京した事を

思い出す。


帰省する度に

愛しあっていて


『大学は東京に行くから

待っていてくれ』


彼氏は変わらぬ愛を

伝えてきた。


熊本に残してきた

彼氏の事を思い出すと

笑った顔が

思いだされていく。


シャワーを浴びても

消えない乳首の痛みが


彼氏を裏切った事実だと

認識して


美桜は声をあげて泣いた。

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