第46話権太坂VS神楽坂
予想以上の反響に立花が色々な
予測を立てる。
今まで女神を知らなかった人達も
これだけテレビで彼女の顔と名前を
連呼していれば
絵色女神を認知しているだろう。
そんな彼女が自由が丘駅まで
立花と手を繋いで歩いていれば
朝の情報番組を見たばかりの
女子高生にロックオンされて
すぐにTwitterにアップされて
終わってしまう。
芸能人が車で移動して出入り口が
見つからないマンションを
利用したがる理由が分かった。
女神にその事を説明すると
彼女もそれを理解しており
事務所側は今日の事を想定して
送迎の車を準備していた
との事だ。
変装してもバレる
リスクはある。
彼女に自由が丘駅からは
タクシーに乗って
移動するように2万円を渡して
駅までの距離は女神を
先に歩かせて
立花が5mほど後ろを
歩いていく
駅まで尾行作戦をする事にした。
身支度をして
外に出ようとした時に
女神が玄関先で
モジモジしている。
『忘れモノか?』
立花が聞くと
頬を赤らめながら
下を向いたままだ。
バレるリスクを
恐れているのにしょうがないな
『いってきます、の
キスをする?』
立花がそう聞くと
すぐに顔を上げて
『はい』と
彼女が笑顔で返事をしてくる。
リクエストに応えて
立花が女神のアゴを
持ち上げて唇を重ねた。
3秒ほどして
立花が唇を離すと
目を閉じていた女神が
ゆっくりと目を開けて
名残惜しそうに
立花を見つめている。
立花も、それを理解しており
再びキスをして
舌を絡めあった。
1分ほどの濃厚な時間が終わり
駅までの護送作戦を
始める事にする。
アパートのドアを開けて
女神が足早に家を出て
立花がすぐ後から女神の後ろ
5mほどを歩き、駅へと向かう。
朝の通勤、通学時間なので
他の通行人に出会うが
みんな駅方面に
向かっているので顔を
確認される事はなかった。
野球帽にマスク、
伊達メガネで
完璧な変装をしている
女神なので
仮にスレ違っても
バレるリスクは少ないのだが
先行して歩いている女神は
立花が後ろから歩いているか?
気になって
何度も振り返ってしまい
その行為を何度か
繰り返しており
かえって
不審者のようになっている。
女神と立花の間を、
たまたま歩いていたオジサンは
女神が何度も
振り返って来たので
チカンに間違われたと
思ったのか?
急ぎ足で
女神を追い抜いて行った。
尾行作戦は失敗だな。
そう感じた立花は
女神の横に並んで
歩く事にして
そのまま駅へと
向かう事にした。
誰にも見つかる事なく
駅に到着した女神は
タクシーに乗り込んで
集合場所に向かって行った。
駅から電車に乗って
会社に向かう立花は
Yahooニュースを開いて
情報収集をする。
検索キ-ワ-ドは女神の事と
エクシブハンターの事で
占められており
改めて、
今後の密会方法を考え直す
必要を感じる立花であった。
朝の通勤タイム、
都内は車もラッシュで
多くなるが、
それても集合時間10時より早い
9時前に女神がサニー本社の前に
到着すると
100人以上のファンが
待ち構えており
大騒ぎとなっている。
『アタシじゃないよね?』
そう独り言を女神が言う。
だがイヤな予感がする。
『運転手さん、駐車場まで
行って貰えますか?』
そう言って遠回りになる
地下駐車場へ
車を回してもらった。
時間は9時、
集合時間より1時間も早い
今日こそは1番乗りかな?
そんな気持ちで集合場所である
会議室の扉を開けると
既に越中美桜が来ていた。
『おは、美桜ちゃん早すぎ』
女神の呼びかけに
スマホを見ていた
彼女が反応して
『来たな有名人』と
女神を見ながら笑って
話しかけてくる。
『やめてよ〜、
そんな事を言うのは』と
女神が答えたが
急に美桜が真顔になり
マジマジと
女神の顔を見つめ始めた。
『何か付いている?』
心配になった女神が
美桜に聞くと
『女神ちゃんヤッタ?』と
お下品な質問をしてくる。
相変わらずストレートな美桜に
女神が顔を赤らめて
『まだ、やってないよ』と
下を向いて答えた。
『おかしいな、
顔がヤッタ顔なんだよ』と
美桜は腑に落ちない顔だ。
女神はビックリしていた。
『美桜ちゃんは
何で、そう思うの?』
素朴な疑問を
美桜にぶつけてみると
『自論だけど』
『男とした女って、
目元が変わるんだよ』
『視線が優しくなるって言うか』
『穏やかな感じに
なるんだよね』と
美桜の解説を聞いた女神は
自然と頷いている。
『本当にやっていない?』
美桜に再び聞かれた女神は
『半分かな?』と
恥ずかしそうに答える。
『半分?』
美桜が不思議そうに質問すると
『生理中だったんだ』と
女神がクチを尖らせて言うと
『ウチは生理中だと
彼氏が喜んで
付けずにしてくるよ』と
過激な武勇伝を言ってきた。
『だって2日目だよ』
『ムリでしょ?』と
女神は言うが
『じゃあ半分までって、
どうしたの?』と
聞いてきたので
昨夜の出来事を割と
細かく説明をした。
『女神ちゃん、だったら
イッタんじゃない?』
『それなら、
今日の艶っぽいのも
納得出来るんだよね』と
笑顔で言ってきた。
それを聞いて
更に赤くなる女神に
美桜が更に
ゴニョゴニョと入れ知恵をして
女神は耳まで赤くなっている。
だが次に会う時は
生理が終わっているだろう。
今、美桜に聞いた事を
試してみようと誓う
彼女がいる。
ガ-ルズト-クが
一通り終わると
美桜から記者会見の質問が
次から次へと続いた。
緊張をしていたが
会場の雰囲気に感動していた
心境を話すと
美桜は
『女神ちゃんは、だいぶ先に
行っちゃったよね?』と
寂しそうに言ってくる。
美桜の、そんな発言に
『そんな事ないよ』と
女神が否定するが
『朝の情報番組で全局でウチが
映る事なんて一生ないよ』と
美桜は呟いた。
美桜も全局で
放送される日が来る日が
今は、まだ知らない。
そこからはCM撮影や
ポスター撮影の事を
美桜に聞かれた彼女は
嬉しそうに説明をした。
立花に説明をしている時も
楽しいのだが
同じ環境の美桜は聞き上手で
女神が質問されると
嬉しい項目を
ピンポイントでしてくれる。
『ほんで、ほんで?』
学校の休み時間に
友達と話しているようで
女神も普通の17才に
戻ったように
キャッキャっと楽しく
話をしていた。
しばらく2人で
話しをしていると
ガヤ、ガヤと騒がしく
大勢の人が来る声が
聞こえてくる。
時間は9時20分、
集合時間には
まだ、だいぶ早いが
権太坂36の先輩達も
集まってきたのである。
すると女神を見つけて取り囲み
『テレビ見たよ』
『Instagramに
私をアップしてよ』と
一斉に彼女に話しかけてくる。
先輩に場所を譲るように
美桜はゆっくりと
女神から離れて
部屋の端っこに1人座った。
『私も仕掛けないと、
追いつけないな』
そう言って一枚の名刺を見て
美桜は呟く。
先輩達の取り調べは
延々と続き
『1番優しい先輩は誰って
聞かれたら
私って言ってよ』とか
『プライベートで仲が良いのは
私って言ってよ』と
図々しいものが多かった。
困った女神が
愛想笑いをしていると
『バン』と
大きな音がして扉が開き
1人の女性が
すごい剣幕で入ってきて
『絵色女神はどこ?』
そう言って怒り心頭で
彼女を探す。
『船木さんだ』
権太坂のメンバーが
名前を出す。
船木正子、
神楽坂36のNO.5で
バラエティ番組にも
出ているアイドルだ。
『アタシです』
人の輪の中心にいた
女神が手を挙げた。
すると女神の元へ
一直線で歩いてきて
『この泥棒猫』と
彼女を罵ったのだ。
初対面の彼女に
泥棒猫呼ばわりされたが
女神には意味が分からない。
『何の事ですか?』
先輩であり有名人でもある
船木からの
泥棒猫呼ばわりされた件が
何かの誤解だと分かって
貰いたかった。
そんな気持ちで女神が話すが
『とぼけてんじゃねぇよ』と
船木の怒りは治らない。
会議室にいた全員が静まる
船木の迫力に
圧倒されそうだったが
『本当に
分からないんですけど』と
女神が聞くと
『オリファルコンの
CMの件だよ』と
怒鳴りつけたのだ。
テレビで見せる、
おバカキャラからは
想像出来ない迫力に先輩達は
怯えているが
『オリファルコンのCMで
船木さんに何の迷惑を
かけたんですか?』と
女神は、ひるまなかった。
『はぁ?なめてんのか?』
『人のCM案件を盗んでおいて』
『ふざけんじゃねぇよ』と
アイドルより、
ソッチの世界が似合いそうな
雰囲気で迫ってくる。
『アタシ盗んでいませんよ』
女神がそう言うと、
被せるように
『あのCMは
私で決まっていたんだよ』
『打ち合わせも何回もしたし』
『それが日曜日に
バラしが入って』
『会見の場所には
本当は私がいたんだよ』と
怒りながら説明をしてきた。
『船木さんがCMで
決まっていた事は
初めて聞きました』
『アタシも月曜日に突然、
CM出演を聞かされて
ビックリしたんです』と
女神の状況を説明するが
『どうせ枕でもしたんだろ?』と
蔑むように
船木は吐き捨てた。
枕営業
人気のない女性タレントが
仕事と引き換えに
ベッドを共にして
得る仕事の事だ。
『どうせ
オリファルコンの社長に
ベッドの中で頼んだじゃない?』
船木が言った言葉に
『アタシが会長に
初めて、お会いしたのは
CM出演が決まった後ですよ』
『そんな事してませんし、
計算も合わないです』と
女神も一歩も引き下がらない。
『なんなら今、
オリファルコンの会長に
電話して
聞いてみましょうか?』と
女神が言い出すと
船木がひるみ
『そこまで、
しなくていいよ』と
電話をかけるのを止めたので
『広告代理店の濱口さんなら
真相を知っていると
思いますから』と
女神が言った時に
『止めろって言ってんだよ』と
船木がブチ切れたのである。
『権太坂のくせに
生意気なんだよ』
『3軍は3軍らしく、
おとなしくしてりゃ
いいのが分かんない?』と
言った言葉に
他の権太坂メンバーは
ムッとする。
その視線に気付いた船木が
笑いながら
『オカダ チカの抜けた
権太坂を3軍って呼んで
何が悪い?』と
言い放ったのだ。
オカダ チカ
体調不良を理由に
無期限活動停止中の
権太坂36の不動のエ-スだ。
彼女が抜けた事で
一部の人は権太坂の事を
3軍と呼んで比喩していた。
そんな中
『アタシ達が3軍なら
船木さんは4軍ですね?』と
女神が言い返したのだ。
それを聞いた船木が
『何で私が4軍なんだよ』と
敵意剥き出しで
言ってきたので
『3軍のアタシに
CM競争で負けたんだから
4軍じゃないですか』
女神の発言に
権太坂36のメンバー
全員が笑っている。
だが、それを聞いた船木は
鬼のような形相になって
『てめぇら、ぜって〜
許さねぇからな』と
全員に睨みを効かせた。
サニーミュージックの中では
神楽坂の方が
パワーバランスは上だ。
歯向かうなんて
許されない上下関係が
出来ている。
その神楽坂36のNO.5を
怒らせてしまった。
タダでは済まないだろう
権太坂のメンバーが
全員そう思っていた時
『船木さん、
コッチも向いて下さい』と
明るい声で女神が話しかけた。
『はぁ?』
怒り狂った船木が
女神を見ると
スマホで船木を撮っている。
『なめてんのかよ?』
『こんな時に写真なんか
撮りやがってよ』
そう言って女神に
近づこうとした。
『違いますよ船木さん、
動画ですよ』と
女神が訂正すると
『写真だって動画だって、
そんなのはドッチでも
良いんだよ』と怒鳴るが
女神は
『テレビのおバカキャラの
船木さんが本当は、
こんなに迫力があるって』
『動画の方が世間には
伝わるじゃないですか?』
笑顔でそう答えた。
『ウソでしょ?』
真っ青になった船木が
女神に聞くと
『はい、船木さんが
怒鳴り込んでこの部屋に
入ってきた部分も
全部、録画しています』
女神の、その説明に
『脅す気かよ?』と
船木が震えた声で
聞いてくる。
『脅すなんて、とんでもない』
『でも、アタシ
おっちょこちょいなんで
よく失敗しちゃうんです』
『上げるつもりが無い動画を
間違えてアップしちゃう時が
あるんです』
女神が、そう説明すると
『お前、そんな事したら
タダで済むと思うなよ』と
言って
女神を睨みつけた。
『船木さんは
朝のワイドショーを
見てくれました?』
『アタシの
Instagramの登録者数が
300万人を超えたそうです』
その話を聞いた時に
船木は怯えたような
表情になり
『ウソでしょ?』
『そんな事しないよね?』と
声を和らげて
懇願するように聞いてきた。
『間違えて
アップしちゃったら、
すいません』
300万人にさっきまでの
悪態が晒されたら
船木の芸能人生活は
終わりだろう。
それを察した彼女は
『すいませんでした』と
言って
権太坂の部屋から出て行った。
『ヤッタ〜』
『最高だよ、女神』
権太坂のメンバーが
女神を取り囲み
歓声を上げている。
みんな船木の事を
嫌っていたが、
どうする事も出来ずに
いつも悔しい
思いをしていたからだ。
そんな船木を
成敗してくれた女神は
彼女達の中で
ヒ-ローとなっている。
『でも、よく動画なんか
撮っていたね?』
メンバーの誰かが
言った言葉に
女神が
『動画なんて
撮ってないですよ』と
笑いながら説明する。
『なんか、
いじわるされたんで』
『意地悪を仕返して、
やっただけです』
そう説明する女神を心の中で
『こわっ』と思う
権太坂のメンバーであった。
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