第39話世界デビュー 1
記者会見の会場は
日本有数のホテルである
大帝国ホテルの飛翔の間だった。
収容人数500人の
ホ-ルとなっており
政治家のパ-ディ-や
芸能人の披露宴
そういった大規模な
催しをする際に
使われる会場で
小さな体育館規模だ。
開始は14時からだが
絵色女神は10時に会場に入り、
中で全景を眺めている。
広告代理店の濱口の話では
テレビ、ラジオ、新聞、
雑誌、SNS
招待した企業が、ほぼ全て
今日の記者会見に来るとの事だ。
その数およそ200社
世界的に大ヒットしている
ネットゲ-ム
エクシブハンターへの
世間の関心度を象徴する数である。
全体リハーサルを
経験しているから
自分の出番と担当は
把握している。
後は間違えないようにするだけ。
これだけを信念に
絵色女神は会場を後にして
関係者の控え室に戻った。
彼女に与えられた控え室は
マネージャ-の佐野さんと
彼女の2人だが
学校の教室くらいの
大きさとなっている。
控え室にはメイクセットが
あるので後でメイクさんや
スタイリストさんが
作業をするにしても広すぎる。
控え室内にはホテルの
ケ-タリングが
準備されており
飲み物や軽食があった。
サンドウィッチやクラッカーや
フル-ツの盛り合わせがあり
全て食べ放題との事だ。
ハムのサンドウィッチを
つまみながら
『朝ご飯を
食べなきゃ良かった』と
もらす、
食いしん坊な女神である。
マネージャーの佐野さんは
さっきから電話対応で
大変そうだ。
『コン、コン』
ドアがノックされて
『どうぞ』と
女神が答えると
ドアが開いて
広告代理店の濱口が現れた。
『どう、緊張していない?』
『大丈夫そうだね』
濱口の視線の先には
新しいサンドウィッチを
クチに含んでいる
女神の姿があった。
プロジェクトビ-ナスに
10億円の予算が
かかっている事を
知っている濱口は
『彼女に10億円の
価値があるのかね?』と
記者会見の発表の当日に
まだ半信半疑であった。
まぁ俺には関係ないけどね
与えられた仕事を
失敗せずに完璧に
完成させて終了する、
それだけだ。
『11時から会場で
最終リハーサルがあるから、
よろしくお願いします』
そう言って濱口は
控え室を後にする。
電話を終えた
マネージャーの佐野さんが
『女神ちゃん緊張してない?』
『大丈夫?』と
聞いてくるが
佐野さんの方が
緊張しているようだった。
時計を見て、
まだ時間があると思った
彼女は
『ちょっとトイレに
行ってきます』と言って、
控え室の外に出た。
すぐに女子トイレを
見つけて1番奥にある
個室へと入り
立花に電話をする。
すぐに立花に繋がり
『もうすぐ始まっちゃいますよ』と
立花に話し始めたのである。
『もう始まるのか?』
時計は10時、
午前中に記者会見って
やるものなのか?
そう思っていると
『記者会見は
14時からなんですけど』
『全体リハーサルが11時から
スタートするんです』と
報告してきた。
『頑張れよ、としか
俺は言えないけど』
『トップアイドルが
近づくんだから』
『ココが踏ん張りどころだよ』と
立花が言うと
『会場には来れないですよね?』と
彼女が心細い口調で聞いてくる。
今日は会社を休んでいるので、
行こうと思えば会場には行ける。
記者会見には死んでも
参加はしない
だが会場で女神を応援するのは
可能では?
『いまさら部外者の俺は会場に
入れないだろう?』と言うと
『会長さんに
頼んでみましょうか?』と
提案してくる。
確かに猪木会長に言えば
何とかなりそうだ
『でも記者会見には
絶対に出ないし』
『行けたら、
行くって感じだし』と
あまり乗り気ではない感じを
彼女に伝えてみたが
『本当ですか?』と
彼女の声が変わり
絶対に来る前提の話に
なっている。
『行けるか、わからないし』
『絶対じゃないぞ?』と
立花は言うが
『立花さんが会場に
いてくれるだけで』
『1人じゃないと思って、
頑張れます』と
既に嬉しそうだ。
そこまで言われてゴネるのは
男として情けないと思い
『とりあえず会長に
連絡してみるよ』と
来場の可能性を伝えると
『ヤッタ-』と
彼女が大声で大喜びした。
彼女が電話をしているのは
女子トイレなので
隣の個室にいた人は
ビックリして
出ていたウンコが引っ込んだ。
『まだ確定じゃないぞ』
女神に念を押したが
『着いたら
連絡してくださいね』と
彼女は記者会見の会場で
抱きつきそうな雰囲気で
興奮している。
やがて彼女との
電話を切った立花は
猪木会長に電話を入れた。
『あぁ、そうだ、
そのままで大丈夫だ』
『すいません、
打ち合わせ中でした』と
言いながら猪木会長が受電する。
『突然、すいません、
かけ直しますよ』
立花が切ろうとすると
『保護者として心配ですか?』と
笑いながら
会長が話しを続ける。
『まぁ、そんなところで』
『今日の記者会見に
俺も見学に行っても
良いのかな?と思いまして』と
切り出すと
『見学なんて言わず
出席してくださいよ』と
笑えない冗談を言ってくる。
『そう言うと思っていたから
行きたくなかったんだよな』と
立花が悪態をつくと
『奥様に会場に来て欲しいと
言われたのではないですか?』と
サラッと怖い事を
会長が言ってきた。
『奥様?』
『奥様って何ですか?』と
立花が質問すると
『女神さんが
立花さんの奥さんになるから
トップアイドルに成るって
嬉しそうに
話されていましたよ』と
言ってきたのだ。
『会長、周りに人は?』
女神の結婚話を周囲の人に
発表されたら
たまったもんじゃない
心配になった立花が確認すると
『すいません、ご安心ください』
『今は1人で別室に来ております』と
説明をしてきた。
ふぅ〜、とタメ息をついた
立花だが
『アイツそんな話を
していたんですか?』と
別の角度のビックリ話を
確認すると
『私が言った事は
内緒にしてください』と
クチを滑らせた事を
クチ止めしてくるが
会長以外には
喋ってないので
立花に告げ口をした
犯人は絞られる。
『それは、それとして』
『会場に行っても
良いんですか?』と
立花が確認すると
『どうぞ、お越しください』
『特等席を準備して、
お待ちしてます』と
ご機嫌な口調で答える
猪木会長だ。
『それが怖いんだよな』と
立花が難色を示すと
『場所はお好きな場所を
お選び下さい』
『立花さんに
来て頂けるだけで光栄です』
『アナタと私が作った
エクシブハンターが
最高の場所で
お披露目をする機会なんです』
そう言われた立花も
感慨深いものがある。
沼に沈んでいた
自分を救ってくれた
ゲ-ムの最高舞台
『確かに俺も見たいです』と
本音を会長に伝えると
大帝国ホテルに着いてからの
説明を聞く。
アパートから1時間も
かからないだろう?
猪木会長との
電話を切った立花は
無駄な休みに
なりそうだった今日を
最高の休日に変えるタメに
大帝国ホテルへと
向かうのであった。
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