第37話ライバル

蝶野正子が撃沈した


その噂は社内の女性の間で

噂になっている。


露出度の高い服を着て

立花と食事に行った。


成功していたら、

彼女の性格からすると


次の日に立花にベタベタして

周りの人間に勝ち誇ったように

2人の関係を誇示するだろう?


だが今日の彼女は

立花に話しかけられても


どこか、よそよそしくて

昨日、立花を誘うのに失敗して

気まずい雰囲気となった事が

推測出来る。


ざまぁ


女性社員の裏グループでは、

彼女の敗戦を嘲笑う

メッセージが飛び交う。


そんな事を知らない立花は

仕事の開始前

食堂にある自動販売機に

飲み物を買いに来ていた。


お気に入りの飲み物を買って

オフィスに戻ろうとした時に

他に人がいる事に気づいた。


武藤慶子だった。


彼女と話すのは食事の前日、

会社の前で一緒に飲みに

行って欲しい、と言われた後に


『わたし、エッチなんです』と

囁かれて以降だ。


そこまで女性に言われたが、

断わる。


女性に恥を

かかせてしまった事は

誰が考えても分かるだろう。


それがあって立花からは

話しづらかったが


慶子から

『蝶野さんとの食事は、

どうでした?』と

話しかけてきたのだ。


『あぁ、その件?』

『日本料理屋さんに行って

美味しかったよ』

立花がそう説明すると


『襲われたり、

しませんでした?』

慶子が心配そうに

聞いてきたので


立花が笑いながら


『大丈夫です、

このように無事です』と

説明する。


『蝶野先輩に

ホテルに誘われたり

しなかったんですか?』


踏み込んだ質問を

してくる慶子に


『それは、

なかったんじゃないかな?』


『会話を、あんまり

覚えていないんだよ』


『実は寝不足で、

酒を飲んだから


酔っ払ったみたいで

覚えてないんだよね』と

記憶が消えている事を

話すと


『良かった』と

彼女は笑顔で安心していた。


『あの人の事だから、

立花さんの家で

襲っていたんじゃないかな?と

心配していたんです』と、

嫌悪感を丸出しで

悪口を言ってくる。


そう言われた立花が

愛想笑いをしてると


『明日は有給を取って

病院にでも行くんですか?』と

慶子が聞いてきた。


総務の仕事をしている彼女は

社員の勤怠関係の処理を

しているので

出勤予定を把握している。


平日の有給休暇は法事や

結婚式

1日検査をする人間ドックで

休む人間が多いので、

彼女もそう聞いたのだろう。


だが、武藤慶子はあきらかに

立花に好意を示す行動を

取ってきている。


自分の事を諦めて貰う

意味もあり


『彼女とデ-トをする予定で

休みを取ったんだけど、

向こうが仕事になったから

暇になっちゃったんだよね』と

彼女がいる事をアピールした。


彼女がいる


その事で諦めてくれると

思っていたが


『だったら私も休みを取るから、

一緒に出かけましょう?』と

立花をデ-トに誘ってきたのである。


『ムリだよ、

俺には彼女がいるから』

めげずにアタックしてくる

慶子の迫力に負けないように

立花が言うが


『別に遊びに行くだけなら、

先輩と後輩で問題ない

じゃないですか?』と

引き下がらない。


だが立花も

『昨日の食事会だって、

行く事を報告したら

プンプンしていたのに』


『自分が仕事で

行けなくなったのに

別の女の子と出かけるなんて』


『許してくれる訳

ないじゃんか』と

ムリだと言う事を

説明すると


『言わなければ

良いじゃないですか』と

笑いながら答えてくる。


『そんな事が出来る訳ないだろ』

立花がそう言ったが


彼女は


『2人だけの

秘密にしましょう』と言って

立花にキスをしてきた。


会社の後輩に

無警戒の状態でキスを迫られて

避けられる人間がいるだろうか?


突然の事で固まっていた立花が

我に返り

慶子から慌て離れた。


『何をやっているんだよ?』


ビックリして、取り乱している

立花が

慶子に言うが


彼女は悪びれずに

『私は2番目でも良いんです』

『2人で出かけましょう?』と

微笑んできたのである。


『次やったら怒るからな』

そう言って立花は

食堂を出ていった。


1人食堂に残された

武藤慶子は立花の

唇の感触を思い出すように

舌を大きく出して

自分の唇を何度も

舐め回したのであった。


キスされちゃった


逃げるように食事を出た

立花は

慶子にキスをされた事が

思い出されて

頭の中でル-プしている。


絵色女神以外とは

エッチな事はしない。


危ない武藤慶子には

近づかない。


そんな誓いを立てて、

立花は自分の机に座り

仕事を始めたのであった。


その後、蝶野正子も武藤慶子も

立花に絡んでくる事はなく

順調に作業が進み

定時に仕事を終えた立花は

自宅へと帰った。


それから、しばらく経って

棚橋も仕事が終わり

会社のビルを出ると


彼の前に突然、人が現れて

『棚橋さん、

ちょっと良いですか?』と

聞いてきたのである。


『慶子ちゃん?』


待ち伏せするように声を

掛けてきた武藤慶子に

棚橋がビックリしていると


『お時間あったら、

この後2人で飲みに

行きませんか?』と


サシでの飲みを

誘ってきたのであった。


普段から清楚な武藤慶子に

メロメロだった


棚橋は

『いいよ、行こう、行こう』と

鼻の下を伸ばして同意をして


急いで駅へと向かい

渋谷の居酒屋に入り乾杯をする。


最初の1時間は世間話で

盛り上がっていたが


武藤慶子が突然

『棚橋さんに聞きたい事が

あるんですけど』

『宜しいですか?』と

切り出してきた。


2人で酒を飲んで

テンションが上がっている

棚橋は

『いいよ、いいよ、

何でも聞いて』と

笑いながら答えてくる。


『実は立花さんの事

なんですけど』と

本題を切り出してくると


『慶子ちゃんも

立花の事を聞くの?』と

露骨に棚橋が

イヤな顔をすると


『他に誰か

聞いてきたんですか?』と

彼女が質問をし返してきた。


『この前も蝶野に

立花の彼女を教えろ?だ』


『立花の趣味は何だ?って

聞かれたけど』


『絶対に教えなかったんだ』と

棚橋が説明をする。


アイツも同じ事を考えていたか。


武藤慶子が心の中で、悔しがる。


だが、何事もなかったように

『やっぱり立花さんの事なら

棚橋さんに聞いてみよう?と

思いますもん』と


清楚な彼女のイメージを

崩さない笑顔で

棚橋に微笑えんでいる。


その笑顔を見て

棚橋が悲しそうな顔で

『慶子ちゃんも

立花を狙っているの?』と

聞くと


『え?わかっちゃいました?』と

隠すことなく

答えてきたのである。


『ねぇ?何で突然、

立花ばっかりモテているの?』と

言って棚橋は泣くように

机に崩れて嘆いていた。


『立花さんの彼女って、

どういう人なんですか?』と


棚橋の泣きなど関係なく

慶子が質問をすると


『めっちゃ可愛いんだよ』と

棚橋は秘密を

喋ってしまったのだ。


『おいくつの方なんですか?』

慶子の質問の手は緩まない。


酔っていた棚橋は

『写真を見せて貰った

だけだから詳しくは

知らないんだけど』


『めちゃくちゃ

可愛いかったんだよね?』


『あっ、でも慶子ちゃんの方が

可愛いよ』と

棚橋が取り繕う。


『ありがとうございます』

棚橋に、変わらぬ笑顔で

答えた慶子だが

実際はイライラしていた。


そこからも酒を飲ませて

棚橋が知っている

立花の情報を聞き出した彼女は

色々と考えをめぐらせている。


やがて棚橋もだいぶ

酔いが回ってきたのか


『そろそろ帰ろうか?』と

彼女にお開きの提案をした。


外に出たのは

21時を過ぎた頃なので


次の日の仕事を考えたら、

丁度良い時間だろう。


2人して並んで歩いている時に

慶子が

『立花さんに振られたら

慰めて貰えますか?』と

甘えた声で棚橋に聞くと


『いいよ慰めてあげるよ』と

酔っ払い棚橋が

胸を張って、宣言をする。


すると慶子が歩くのを止めた。


彼女の歩みが止まった事に

気づいた棚橋が


『どうした、慶子ちゃん?』と

聞くと


『慰めて貰うの、

今はダメですか?』と

涙目で慶子が聞いてくる。


『え?今?何?』


意味が分からない

棚橋が聞くと


『エッチがしたいです』と

棚橋の耳元で囁いた。


『マジ?』


そう棚橋が質問すると、

彼女は小さく頷いた。


ズッキュン


一気にカチンカチンになった

棚橋はこのチャンスを

逃がさない気持ちで


武藤慶子の肩を抱いて

ホテル街へ足早に

消えていったのであった。


難攻不落


誰もが落とせなかった

天使が目の前にいる。


友人である立花に

好意を抱いているのは


さっきまでの会話で

分かっていたが、


彼女から

『エッチがしたいです』


そう言われた時に

理性や道徳感は吹き飛んだ。


棚橋はオスとしての本能で

動いてしまっている。


道玄坂に着くと、休憩5000円の

安いホテルが目の前に入った。


満室ではない事だけを確認して

綺麗だ汚いも考えずに

ホテルに入り、部屋を選ぶ。


エレベーターに乗りこんだが

選んだ部屋の階まで着く時間が

長く感じられる。


さっきから彼女と

会話は一切していない。


喋った瞬間、考えを改められて


引き返されたら?


その恐怖心からであった。


部屋の前に着いて

そこで初めて武藤慶子を見るが

恥ずかしそうに下を向いていた。


その肩を優しく押して

部屋に入る事を棚橋が促す。


そうされた彼女に

抵抗のチカラはなく

部屋へと吸い込まれて

ドアが閉まった。


その瞬間、棚橋が慶子の唇に

むさぼりつく。



そのまま2時間が経ち

数えきれないほどの絶頂を

迎えていた慶子と


フルマラソンをした後のように

全身を使って息をしている。

疲れた棚橋は、

そのまま大の字になって

寝てしまった。


正に全裸


棚橋の棚橋も丸出しで、


いびきをかいて寝ている。


それを確認した慶子は

自分のカバンから

スマホを取りだし


無防備に全裸で

寝ている棚橋の撮影を

始めたのである。


何十枚も撮影したが棚橋は

快感の海に沈んだように

寝ていた。


寝ている棚橋をおいて、

風呂に入った慶子は

シャワーを浴びて


先ほどまでの行為を思い出して

大きく笑い出したのであった。


風呂から出ても棚橋は

大の字で寝たままだった。


『かえって面倒臭くなくて、

いいか』


そう言って棚橋をおいて、

一人でチェックアウトする

慶子であったのである。

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