第35話立花さんの浮気 2

立花の家に行く事に

なってからの蝶野の

動きは早かった。


中居さんを呼んでカ-ドで

料金を支払い


併せてタクシーを

店に呼ぶように指示をして

店を出る準備を急ぐ。


酒で酔っている立花は

蝶野の肩を借りて


ようやく立てる状態だが

彼女は小さな体で支えて

立花と2人、外へと出て行く。


『立花さん、

しっかりしてくださいね』


そう言って到着したタクシーに

立花を先に乗せて、後から

自分が車に乗り込んだ。


『何処まで行きます?』

酔っ払ったカップルと

認識した運転手は


行き先を聞くと

『立花さん、

家の住所は言えます?』と

蝶野が聞くと


『目黒区◯◯◯』と答えて、

運転手はナビに入力して

車を走らせる。


スッポンを食べさせて、

酒を飲めば男はギンギンとなり

ケダモノになる。


蝶野が考えていた

作戦通りとなり

安心して、ひと息をついた。


立花を見ると

酔いが回っているようで

車の窓から

外の景色を見ている。


立花が1人暮らしを

している事は知っている。


後は家に着いて

肉体関係を持てば


蝶野の作戦の第一段階は

終了だ。


なし崩し的に

一晩を過ごして朝を迎える。


裸で同じ布団で

目覚めてしまえば


立花は何も言い訳が出来ずに

蝶野正子と付き合う事になる。


既成事実が成立して大成功だ。


後は付き合って

1年後には結婚をする為の

第二作戦をスタートさせる。


結婚式では女同士の

水面下の戦いがある。


友人が人生を預けた男が、

どのレベルか?

査定をするそうだ。


顔が悪くても

資産家の息子なら、


裕福な生活が約束され

マイホームに海外旅行

女として、

妻としては安泰だろう。


逆に学歴もなく、

収入もそこそこ


見た目も冴えない男と

結婚したら


あの子って、女としては

あのレベルだったのね?と

レッテルを貼られてしまい、


その後の集まりには

来づらくなるらしい。


蝶野は自分が

一番輝いている時に結婚を

したかった。


年をとって妥協に妥協を重ねて

売れ残った男と結婚を

したくなかったからだ。


蝶野の狙いでは

立花を大手の会社に転職させ

年収を2000万円にしてから

結婚式を迎える計画だ。


20代で出産、仕事に復帰して

ダブルインカムで

ゆとりある生活を送る。


共働きで3000万円を稼げば

1年に1回海外旅行にも行けて

マイホームも持て


裕福な生活で

家族4人は暮らせる。


そこまでの人生設計を

考えていた。


立花の持つ取得困難な

国家資格を聞いてから


今日の計画を

練り上げていたのである。


それにしても

立花さんが静かだ。


『立花さん、

道って合っていますか?』


蝶野が聞くが

立花は答えてこない。


もしや?


そう思って立花を見ると

爆睡していた。


睡眠2時間で酒を飲んだら

寝落ちするのも


ムリはないが

蝶野は睡眠不足を知らない。


まぁ、家は聞いているから

問題はない。


寝てしまったら

興奮は治まってしまうの?


同じくスッポンを食べて

カラダが熱くなり


ほてっていたのは

蝶野も一緒で


早く立花の家に着き

ベッドでしたかった。


『くぅ〜、くぅ〜』

立花は熟睡中のままだ。


運転手は前を向いて、

運転に集中している。


蝶野正子は自分の血液が

逆流してきて

心臓の鼓動が

早くなってきたのを感じていた。


彼女はすごく悪いことを

思いついた。


立花は後部座席に

もたれかかる状態で


寝ているので下半身は

ガラ空きだ。


ドライバ-は

運転に集中している。


店にいた時と変わらず

カチンカチンの立花を


確認した彼女は

音を立てないように

ズボンのチャックを下げた。


そして手探りで

パンツのボタンを見つけ

指を上手く使って外す事に

成功した。


ドライバ-は運転に

集中していた。



車は立花のアパートの前に着く。


彼女は立花に

『家に着きましたよ』と言って

起こすが

中々、彼は起きない。


『もう、早く降りますよ』

そう言って

引きずり下ろす感じで


車から立花を出した後に

運転手に代金を支払った。


一部始終をル-ムミラーで

見ていた運転手は


『時代は変わったな』と

呟いて

夜の街へ消えて行く。


『立花さん、

部屋は何処ですか?』


立花に肩を貸す形で歩く

蝶野が聞くと

部屋の前を指差した。


『鍵はありますか?』

蝶野に聞かれた立花は

自分のズボンのポケットに

手を入れて探すが


酔っているのか?

寝ぼけているのか?

中々、鍵は出てこない。


彼に何も聞かずに

蝶野は立花のズボンの

ポケットに手を入れて、

鍵を探す。


探している時に

立花の立花に

指が何度か触れたが

躊躇はなかった。


すぐに鍵を見つけて

アパートの部屋に入る。


入ってすぐに

キッチンを見る彼女。


綺麗にしていると

感じたのと同時に


食器類がペアで

揃っているのを確認した。


玄関に靴は男物しか無いが

殺風景な部屋に


他に人が居ない事は

すぐに分かる。


時間は平日の23時過ぎ、

彼女はこれから

来る可能性は低いと推測した。


酔っ払った立花を

ベッドに仰向けで寝かせて

自分はトイレへと向かった。


立花のアパートはトイレと

風呂と洗面所が一緒な

タイプだったので


洗面所に絵色女神の

ピンクの歯ブラシと立花の

青い歯ブラシが置いてあった。


ピンクの歯ブラシを

指で軽くはじき


『ゴメンね』と言って

笑みを浮かべる。


戻ると立花は

いびきをかいて寝ている。


蝶野は寝ていても

出来るのを過去の経験で

知っていたので気にしていない。


結婚するパ-トナ-は

カラダの相性も

大事だと彼女は思っていた。


その点、彼女は

立花を採点して合格を

出していた。


『立花さん襲っちゃいますよ?』

いびきをかいて仰向けで

寝ている彼に話しかけたが

当然返事はない。


それを確認した彼女は

立花のズボンのベルトに

手をかけて素早くズボンと

パンツを下ろす。


店を出るまでは

カチンカチンだったが

今はコチンコチン程度だ。


彼女は自分の技に

自信があったので


すぐにカチンカチンに

なるだろうと思い

立花の立花を握った瞬間


『ピンポ-ン』

『ピンポ-ン』と

立花の部屋のチャイムが

鳴ったのである。


蝶野は心臓が

止まりそうなくらいに

ビックリしている。


『ナンシ-が帰って来たのか?』


『ガチャガチャ』


今度はドアを開ける音がした。


心臓の鼓動が早くなり

爆発しそうだ。


ドアの鍵は閉めた。


アパート内を見渡すが

隠れる場所は無い。


隠れても玄関には

彼女のヒ-ルがあるので


隠れても、

すぐにバレてしまう。


急いで立花のパンツと

ズボンを無理やり

履かせて息を殺して待つ。


チャイムも止んだし、

ドアも開く様子はない。


今なら玄関から帰れるか?


出た瞬間にナンシ-と

鉢合わせになって

言い訳が出来ない事を

考えると


ここがアパートの1階だから

窓から脱出して

外に逃げるのが安全と考えて


玄関からヒ-ルを持って

窓から外へ脱出したのだった。


蝶野は過去に2回ほど

別の女と鉢合わせを

経験しているが


過去は両方とも

男が悪かったのだが


相手の女性は

狂ったように取り乱して


その場は

修羅場となった事があった。


今回は言い訳が

出来ないくらいに


蝶野が原因なので

逃げるしかない。


アパートの狭い庭を通って、

道路に逃げてきた彼女は

周りを見渡し


誰も居ない事を確認すると

アパートから離れていった。


やがて安全だと思ったくらいで

『クソっ』と小さく呟き、

駅を目指す。


翌朝、立花は

快適な朝を迎え起床した。


睡眠時間も確保出来て

腰も軽く感じる。


昨夜の事を思い出そうとするが、


和食料理店で

食べている途中から

記憶が無くなっている。


酔ったまま、

どうやって帰ったか?


覚えていないが

朝には家で寝ていた経験が


何度かあった立花は、

今回もそれだと思って、

特に気にしていない。


女神からの連絡を見ると

沢山入っている。


『今日の事、

たくさん話したかった』と

メッセージが入った後に

怒った顔のスタンプがあった。


とりあえず

『おはよう』と

メッセージを返すと、


すぐに

『電話しても良いですか?』と

即レスが返ってきて、


少し彼女と話をして

会社へと向かった。


会社に出社すると

蝶野を見つけ


立花の方から

彼女の元に近づいて


『昨日はありがとうね』

『代金半分払うから、

金額を教えて?』と

彼女に聞くが


戸惑っている感じの彼女は

『お金はいいです』


『私が誘ったんですから』と

言って

割り勘を却下されてしまう。


『ゴメン、

昨日の事を覚えてなくて』


『何か失礼な事をしなかった?』


立花に、そう聞かれて


昨夜に自分が逃げ帰った後に

問題が何も

起こらなかった事を感じた

彼女が


『何もありませんでした』と

頬を少し赤くして答えていたが


彼女の肌ツヤが今日、

ものすごく良い事を

誰も知らなかった。



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