第34話立花さんの浮気 1

深夜にタクシーで帰った立花は

およそ2時間ほどの睡眠で

会社に行く事となった。


人によって違うだろうが

立花は中途半端に寝ると返って

睡魔が強くなるタイプだった。


満員の通勤電車の中で、

今日の予定を

頭の中で思い出しているが

脳が全く起きず可動しない。


そんな今日の予定の中に

蝶野正子との食事に行く事が

思い出された。


今日は体調が良くないから

別の日に変更をしてもらおう


そう考えていた立花の願いは

出社した蝶野正子の

服装を見て言い出せなく

なってしまったのである。


普段からOLさんが着る

ビジネスス-ツでは

過激な部類を着ていた

彼女だが


今日の服装はブラウスの

胸元が第三ボタンまで

開いており


豊満な彼女の胸の谷間が

普通の状態で見えるほどだ。


スカ-トに関して言えば

タイトスカートと言うより

ミニスカートで、

股下5cmほどになっており


ハロウィンの時期に

渋谷に出没する

露出狂と変わらない

レベルだろう。


オフィス内の男子は

未婚・既婚問わず

彼女の服装に刺激を

受けており


用もないのに蝶野の

机周辺をうろつく

男性社員が多かった事で分かる。


そんな彼女が

立花が出社したのを見つけ

『おはようございます

立花さん』と

朝の挨拶をしてきた。


おじぎした瞬間に

彼女の谷間が見えてしまい


視線を逸らす為に立花が

横を向きながら

『おはよう』と返すと


『今日の店、

20時から予約してます』と

彼女が大きな声で話し

男性社員がザワつく。


あの過激な服装は立花と

今夜デ-トする為の

衣装だと、周辺に

誇示しているようなもので


立花のやつ、

今夜は蝶野とホテルか?


やっかみや怨念のような

嫉みが会社内に

どんよりと、よどんでいるが


蝶野は関係なく

『今夜

楽しみにしていますからね』と

フロア中に聞こえるように

話す。


そんな彼女に

『体調があまり

良くないんだけど』と

立花がダメ元で蝶野に

泣き事を言ってみるが


『夜までには復活しますよ』と

言って

全く取り合ってくれない。


睡眠不足なので

一分でも早く帰って寝たい


そんな気持ちで

『開始時間を

早める事は出来ないか?』


20時の開始を少しでも

早めたくて

蝶野に頼んでみるが


『予約しているから

ムリですよ』と言って

蝶野が却下する。


確かに前もって

決まっていた約束だし

寝不足は自分の

責任だからしょうがない。


諦めた立花は

『よろしくお願いします』と

言って

自分のイスに腰掛けた。


この、わずかな時間の中にも

蝶野の考えられた策略が

散りばめられていた。


女子社員に対しては、

立花は自分が

狙っているから

手を出すなという牽制で


男子社員には

社内で彼女を誘ってくる

鬱陶しい連中を

諦めさせる効果があった。


社内恋愛は別れた後が

気まずいので付き合ったら

結婚するしかない。


それを分かっていながら

蝶野が立花を誘っていたので

周りの人間は


それを認識した時点で

蝶野は立花のモノに

なったとして

諦めないといけない。


立花は後輩と軽く晩御飯を

食べに行く程度と

軽く考えていたが、


蝶野のアピールを見ていた

会社の人間は

そう思っていなかったのだ。


それに飲み会のスタートを

19時にせずに

20時スタートにしたのも、

あえてであった。


19時スタートだと、

最初の店で2時間


次の店にハシゴして2時間で

23時終わりで

1番良いタイミングで

ギリギリの終電で

帰られてしまう。


それが1時間遅くなると

最後の店を出た時間が

24時なので終電が

間に合わない。


必然的に何処かに

お泊りになってしまう。


本来は男が狙った女の子を

落とす為に使う技だが

蝶野はそれを仕掛けてきた。


通常の火曜日なので、

立花も蝶野も自分の担当先を

回って仕事をこなし

やがて夕方になっていく。


20時に店の予約なので、

移動時間を考えると

会社を19時20分に

出れば間に合う。


立花は仕事を19時に

終えており早めに蝶野に

指示された店へと向かう。


日中に絵色女神とのLINEを

していたが


向こうは若さで睡眠不足を

吹き飛ばしていたようで


元気いっぱいのメッセージが

たくさん来ていた。


初めて着る可愛い服や

素敵な服に感動して

専属のメイクさんに

綺麗にして貰い


いつもと違うイメージになった

写真を何枚も送ってきていた。


『アナタの奥さんとして

恥ずかしくないアイドルに

なってきます』と


昨夜の言葉が

カラ回りしており少し不安だが


『がんばれよ』と

メッセージをする。


立花は寝落ちした時の事を

考えて


『これから後輩とご飯に

行ってきます』


『今の段階で眠くて

倒れそうなんで』


『もしかしたら、レスが

出来ないかもしれないけど』


『心配しないでください』と

送っておいた。


彼女の話では

今日はポスター撮影だった筈


カメラマンの気分次第では

撮影が延長され


終わる時間が未定と

言っていたので


このメッセージを見るのは

夜中かもしれない。


そんな事を考えてLINEを

打ち終えた。


蝶野が伝えていた店は

高級な日本料理店で


場違いでは?と思ったが、

のれんをくぐって


『蝶野の名前で

予約していると思うのですが』と

伝えると


名簿を確認されて

『お連れ様は

お見えになっています』と

中居さんが店舗奥へと案内して

個室へと立花を誘導する。


ふすまを開けると、

すでに蝶野が来ており


『お疲れ様です』と

挨拶をして向かいの席に

立花を座らせた。


『ずいぶん高級そうな店だな?』

室内の装飾をキョロキョロと

見渡しながら

あぐらをかいた立花が

話しかけると


『立花さんへの御礼だから、

頑張って奮発しちゃいました』と

笑顔で答えてくる。


高級な雰囲気で落ち着かない

立花に


『飲み物は何にします?』と

蝶野が聞いてきた。


『じゃあビ-ルで』と言うと

蝶野正子も同じモノを頼んで

乾杯をする。


次から次へと

出てくる料理は初めて見る

料理が多くて味は美味いが

素材が分からない。


蝶野に何料理なのか?と

質問するが


日本料理ですよと言って、

はぐらかす。


だがゼラチン質の素材は

美味くて料理も酒も

どんどん進んでいく。


『立花さんって

知識が多いですよね?』


向かいあった蝶野が

立花を見つめながら

ウットリした表情で

言ってきた。


『何の知識が多いの?』

特に気にする事もなく

彼女に聞き返すと


『昨日デジタルトランス

フォーメ-ションの事を

立花さんに

質問したじゃないですか?』


『あの質問を立花さんの前に、

何人かの社内の他の人にも

質問したんですよ』


『でも誰も

答えられなかったんですよね』


『答えられたのは

立花さんだけでした』


『やっぱり立花さんは

優秀ですね?』と


ろれつが回らなくなった

口調で立花に

語ってきたのである。


『たまたまだろ?』


立花はそう答えているが

視線は料理を食べて

下を向いている

蝶野の胸の谷間を見ていた。


カラダが熱くなってきて

心臓がドクドクし始めている。


寝不足で酒を飲んだから、

酔ってきたか?


見てはいけない

後輩社員の胸の谷間から

目が離せない。


それと少しエッチな気分で

ムラムラしてきて


立花の立花がムクムクと

硬くなってきたのだ。


あのオッパイ揉んだら

柔らかいんだろうな?


昨日の絵色女神の

胸を揉んだ感覚を脳が

覚えており思い出して

興奮してきたのである。


『立花さん聞いてます?』


蝶野に呼ばれて

立花はコッチの世界に

戻って来て


『うん、何だっけ?』と、

取り繕うが


蝶野は自分の胸を

立花が見ていた事に

気付いている。


『どの資格なら私にも

取れるか?』


『アドバイスして下さいよ』

そう言って資格取得本を

並べた。


策士、蝶野は考えていた。


今までイケメンを

落としてきた時は

相手の好きな事や趣味に

興味を持っているフリを

見せて距離を縮めていく

作戦だったが


立花が何に興味を

持っているか?

分からない。


先日の取引先で見せた

後輩を守る先輩の姿


入手困難な国家資格を

取りたい。


優しい先輩なら

後輩に教えてくれる筈


その部分に

勝負をかけたのだ。


『ソッチに行って良いですか?』


そう言って資格本を持って

立花の横に座り


料理をどかして

机の上に本を並べて

真横で密着するようにした。


『私も立花さんみたいに

資格を取って』


『知識武装して

仕事に活かしたいんです』


そう言って教えを請う

可愛い後輩を演じる

蝶野だが、


ブラウスの胸元を開いて

立花の横に座っているので

水色のブラの柄まで

認識出来るほどの至近距離だ。


当然、立花も

彼女が見せつけている事に

気付いていたが


彼女がつけている

香水の匂いも手伝い


豊満な胸元を

凝視してしまうのである。


『情報処理技術者は、

どうですか?』

蝶野が立花に

質問しているが、


立花は彼女の胸元を

見続けており


『あ、うん』と

カラ返事しかしてこない。


見てる、見てる。


蝶野の作戦が

始まりだしたのだ。


『立花さん、

私の胸が見たいんですか?』

蝶野が聞くと


『あ、ごめん違うんだ』と

慌てて視線を外すが、


その姿は何も違っておらず

覗き見がバレたようで滑稽だ。


『落ち着いてください』

そう言って蝶野が

差し出した飲み物を

一気に飲み干した

立花であったが


恥ずかしさが強くて、

立花は何を飲んだか


味すら分かっていなかったが

立花が飲んだのは

スッポンの生き血だった


今日、蝶野が

立花の為に準備したのは

スッポン料理の

フルコースだったのだ。


古来より日本では

精力復活に効果アリと

言われているスッポンは

調理の仕方で最高の食材となり


美味で興奮剤となり

おじいちゃんも

ギンギンとなる食材だった。


そんなモノを

20代の健康男子が食すれば

何もしなくても

ギンギンになるのに


すぐ横で露出度高めの服装で

蝶野が迫って来たら

カチンカチンになるのは

当然な事だろう。


蝶野は気にいった

イケメンに彼女がいても

必ず掠奪してきた経験がある。


一度、自分と肉体関係を持てば

トリコにする技術と自信を

持っていたからだ。


『立花さんは

情報処理技術者を取った時に

どんな参考書を

使ってたんですか?』


蝶野はあくまで先輩に、

資格を取る為の

アドバイスを

受けている姿勢で

可愛い後輩を演じているが


彼女の視線の先は

立花のズボンの一部だった。


ヨシ、

カチンカチンになっている。


心の中で

ガッツポーズをする蝶野。


『参考書?忘れちゃったな』

そう立花は答えているが、

またも蝶野の

胸元を凝視している。


胸を見ていてバレた、

さっきの恥ずかしさは


カラダ中を逆流するように

湧き上がってくる

激しい性欲には

勝てなくなっていたのだ。


『立花さんが使っていた参考書

私に貸してくれませんか?』


勉強熱心な後輩は

自分の胸を先輩の

腕の上に載せて頼んできた。


オッパイだ、

手のひらで触りたい


性欲に支配された立花が

『今度、貸してあげるよ』


ギリギリ

会話が成立させて答えると


『これから立花さんの家に

行って借りても良いですか?』と

胸を押し付けながら

頼んできたのだ。


後輩が家に来る


男の1人暮らしのアパート


ダメだろう


ギリギリの理性で

『明日、会社に持って行くよ』と

立花が答えると


蝶野は胸を更に押し付けて


「今日、貸してくれたら』

『オッパイ見せてあげる』と

立花の耳元で

囁いたのであった。


ズッキュン


血液が全て

アドレナリンになる


あの性欲マックスの

興奮状態が降りてきて


『じゃあ俺の家に行こうか?』と

彼女に言ってしまったのである。


全て蝶野正子の書いた

シナリオ通りとなり

完全勝利で高笑いする彼女


その頃、何も知らない絵色女神は

遠く離れた千葉県のスタジオで

ポスター撮影を続けていたのであった。




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