第33話潜入、千歳烏山大作戦 3

延長戦を勝ち取った彼女は、

今日が、いかに


目まぐるしい一日だったかを、

身振り手振りを交えて立花に

説明しだした。


人生で初めての大金を

獲得した契約書


財布の中身が、

いつもピンチな彼女に


1000万円は桁が違い過ぎて

想像が出来ないそうだ。


振り込まれるのは

2ケ月後なので


その時には立花の欲しい物を

何でも買ってくれる、と

宣言したが


立花に確定申告の必要があって

半分以上は税金で

持っていかれる事を聞き

泣きそうな顔になってしまった。


立花に好きな物を

買ってあげた後は


実家に残りを

送ってあげたかったそうだ。


だが立花に残った額でも、

彼女が毎月


貰っている額の30回分が

一気に手元に入る説明を聞いて


たちまち元気になって

立花に何が欲しいか?を

改めて確認する。


CM出演などの大型契約に

驚いていた。


そこに突然の佐山サトシが

権太坂36に楽曲提供を

するだけじゃなく


センターに彼女を起用するのが

楽曲提供の条件だと

言っていると聞き


朝からのCM出演を含めて

全部ドッキリじゃないか?と

思っていた。


だが佐山サトシ本人が登場して

これはドッキリじゃないんだ、


何が起きているんだろう?と

思っていたが


佐山がGODの

名前を出してきた時に

『全部、分かったんです』


『これは立花さんが

してくれた事だって』


そう話している彼女は、

立花と二人ベッドに

寄りかかった状態で床に

座っており

彼の肩に頭を持たれかけている。


彼女の話を黙って聞いていた

立花が

『女神ちゃんの為に

何かをしてあげたい

そう考えた時に』


『知り合いに頼んでみよう、って

思い』


『会長とフランキーに頼んだら

こんなに大騒ぎになりました』と

テヘペロ顔で

立花が説明をしていたが


彼女が突然

『女神ちゃんって呼ぶのを

変えて貰えませんか?』と

言ってきたのであった。


『女神ちゃんって

呼ばれるのイヤだった?』

立花に、そう聞かれた彼女は


『なんか他人行儀な気がします』

『女神って呼び捨てで

呼んで下さい』と

立花に頼んできたのである。


『アタシはもう、

あなたのモノです』


『立花さんが、

アタシをいらない』


『そう思うまで、

一緒にいたいんです』


そう言われた立花は

『わかりました』


『これからは女神と呼びます』

そう、彼女に告げると、


絵色女神は笑顔を見せて

立花に抱きついてきたのであった。


『何の取り柄もないアタシに』

『シンデレラみたいな夢を

見させてくれた事を、

本当に感謝しています』


『いつも何か御礼や、

お返しをしないと、

いけないと思っているのですが』


『何も出来ていなくて、

すいません』

そう言ってきた彼女に


『女神、覚えておいて』


『好きな人に何かを

してあげたい』


『その行為に対価や御礼を

求めない事が、愛情なんだよ』


『だから俺は女神に何かを求めない』

立花は諭すように彼女に

語りかけてきた。


抱きしめられたまま、

そう言われた彼女が


『ベッドに上がりたいです』と

立花にお願いをする。


一緒に立ち上がり、

立花のベッドより

一回り大きなセミダブルベッドに

2人は寝て互いに見つめ合う形で

向き合う。


『立花さんに聞きたい事があります』

向き合ったまま立花の首の後ろに

両手を回した彼女が


『なんでキスはしてくれるのに』

『エッチは、お誕生日まで

ダメなんですか?』と

質問をしてくる。


それを聞いた立花は、

誕生日まで考える時間を

くれ、と頼んでいたのであり


彼女の誕生日にエッチをすると

宣言したつもりはなかった。


だが、この雰囲気で、

そこを説明するのも

変だと考えて、そこには触れず


『キスは外国じゃ

挨拶みたいなもんだろ?』と、

彼女が以前言っていた


ロシア人が北海道で

ハグしている発言を

引き合いに出して説明すると


むくれた顔になり

『恋人同士のキスが

したいです』と言って


目を閉じて、突然立花に

キスをしてきたのである。


中学生のキスが

軽く唇が触れ合うモノなら


彼女がしたのは唇を押し付け、

こすり付けるような

大人のモノだった。


ゆっくりと立花から離れる彼女を

見つめている立花が


『恋人同士のキスは出来た?』と

聞くと


『出来ました』と

彼女が答える。


延長タイムは、

とっくに終了しているが、

今はそれを

言い出す雰囲気ではない。


『いつもアタシがお願いしたり』

『何かをしてもらうばかりなので』


『立花さんがアタシに何かを、

お願いしてください』と

言ってきたが


言われても

特段何かを頼みたいという

欲求が立花には無かったので


『さっきも言ったけど、

何かを期待して

女神にしている訳じゃないから』


『大丈夫だよ、

お願いは無いから』と立花が

答えると


絵色女神はムクれて

ご機嫌が斜めになっていった。


『ドラマやアニメだと

ひざ枕をしたいとか』


『男の子が色っぽい

リクエストを女の子に

してくるじゃないですか?』


『アタシが相手じゃ、

そういう気持ちに

ならないんですか?』


そう言って、すねたようになる。


ベッドの上で横になり、

彼女と向き合っていた立花は

笑みを浮かべて


『今は女神が横に

いてくれるだけで幸せなんだよ』


『だから、怒らないで』と

頭を撫でて、彼女をたしなめた。


『立花さんは今だって、

アタシの変化に

全然気付いていません』と言って

彼女は機嫌を直そうとはしない。


そう言われた立花は

絵色女神の頭の先から

足元まで見渡すが、

変化を見つけられない。


赤いチェック柄のパジャマ上下で

風呂上がりの濡れた髪を後ろで

一本に縛っている髪型なので


『髪形かな?』と

自信なさげに立花が質問すると


『ほら、やっぱり分かっていない』と

おかんむりとなった。


女の子の変化に気付かないのは、

流石にマズいと思ったのか?


立花は彼女のご機嫌を取るように

『答えをおしえて?』と

彼女に聞くと


『手を貸してください』と言って

立花の手を取って、

自分の胸を触らせたのである。


『ムニュ』


条件反射で立花も

軽く揉んでしまったが

すぐに変化がわかった。


『女神ちゃん、ブラは?』

立花が、そう質問すると


『着けていません』と言って

立花の手を持って


自分の胸に

押し付けたままにしている。


『すぐに分かってくれるかな?と

思っていたのに』と

彼女は言ってきたが


外見では、

まず分からないだろう?


抱きつかれた時に、

彼女が密着した時の


柔らかさで多少違和感を

立花は感じていた。


さっき抱きついてきた時の

感触がブラをしている時の

ピシッとした感じではなく

フワッとした感触だったのは


事実だが

まさかノ-ブラだとは思わなかった。


『何で、ブラを着けていないの?』

立花に、そう聞かれた彼女は


『今日は、立花さんが

その気になってくれるかな?と

思って』


『パンツも履いていません』と

彼女が更なるタネ明かしを

したのだ。


赤いチェック柄のパジャマの下は

何も着けていない

ノ-ブラノ-パンだと

告白をしてきたのだ。


『それはダメだろ?』と

立花が注意をするが


『何でダメなんですか?』と

彼女は食い下がる。


『この前、胸を触った時に

暴走しちゃったじゃないか』と

言って


前回の胸タッチで

スィッチが入ってしまった時を

思い出し


彼女の手を振り払い、

胸から手を離した。


すると

『何で、暴走しちゃ

ダメなんですか?』と

彼女は悲しそうな表情を

して聞いてきた。


『アタシの人生で、この先』

『立花さん以上に影響を与える人は

現れないと思っていて、

すごく不安なんです』と

語ってきた。


『何が不安なの?』


彼女の頭を撫でながら、

安心させるようにして

立花が質問すると


『アタシの前から

立花さんが居なくなったら、って

考えたら怖くなったんです』と

心境を話し始めたのである。


『新曲のセンターに

選ばれた話の時に』


『仲の良かった美桜ちゃんも』

『アタシに一瞬、

冷たくなったんです』


『先輩達も何で、あの子なの?って

声が聞こえてきたんです』


『急に大きな仕事が、

沢山決まって』


『ビックリしたけど嬉しかった』


『立花さんがアタシの為に

してくれた』


『でも、そこで気付いたんです』


『番組のコ-ナ-で活躍出来たのも』

『ネットニュースに出れたのも』


『CMも新曲も、

立花さんがいなかったら?』


『アタシじゃなくても

良かったんじゃないかな?』


『立花さんが

アタシの恋人だから、

してくれた事なのかな?』


『でも何回もエッチ出来る

タイミングはあったのに

立花さんはしてくれなかった』


『誕生日まで待っても、

してくれないんじゃないか?』


『男の人はエッチな事の為に

犯罪までするのに、

立花さんはアタシに

見向きもしてくれない』


『立花さんは、

アタシから離れたいから

エッチをしたくないんじゃないか?』


『アタシは恋人じゃない』


そう言った後に

泣き出してしまったのである。


それは彼女が今日一日、

緊張の連続でプレッシャーに

押し潰されそうだった感情が

爆発してしまっての光景だった。


泣きじゃくっている彼女に

『女神は大きな勘違いをしてるよ』と

優しく語りかけた。


その声に反応した彼女は

泣き顔を上げ

立花の瞳を見つめる。


『俺は次に付き合う人は

結婚する相手にしたい、って

話をしたのは覚えている?』


立花にそう聞かれた彼女は、

小さく頷く。


『俺はオリファルコンの

猪木会長に』


『会社に入ったら10億円を

払うって言われた時も

断ってきたんだ』


初めて聞く立花の話と、

その金額に驚いて

彼女が泣き止んだ。


『他人と関わらずに、ひっそりと』

『自由に生きていきたいと

思っていたから』


『でも今回初めて

猪木会長にお願いをした』


『絵色女神を使ってください、って』


『猪木会長も俺と女神が

付き合っている事を知っているよ』

彼女は、その話も初めて聞いた。


『佐山さんも知っているよ

俺達の事』

そう言われて彼女も思い出した


『立花さんによろしく』と

言われた事を。


『ここまで知り合いに

オ-プンにして』


『絵色女神は俺の1番大事な人って』

『知り合いは全員知っているよ』


『もう一度思い出して』

『俺は次に付き合う人と

結婚したいって言った』


『悔いが残らないくらいな

アイドルになって、

俺の奥さんになるのと』


『全くアイドルで売れなくて、

俺と結婚するのとドッチが良い?』と


立花に質問をされているが、

どちらも

立花の奥さんになっている話に

彼女は感動しており

答える事が出来なかった。


『別れる女の為に終電車に乗って』

『千歳烏山まで、わざわざ来ないよ』


立花にそこまで説明をされて

彼女は、また暴走してしまった事を

自分で猛省をしている。


『心配しなくても俺は

メチャエッチだから』


立花にそう言われた彼女は

嬉しくなり

パジャマのボタンを外すそうとして

『じゃあ今』と言ったところで

立花に慌てて止められた。


時間は深夜3時、

ここから一戦を交えたら


2人とも寝不足で

次の日の仕事を迎える。


『CM撮影を寝不足で

不細工な顔で撮るか?』と

聞かれた彼女は

首を大きく振って否定をした。


『俺の奥さんになる気なら

トップアイドルに

なって貰わないと』

立花がそう笑いながら言うと


『頑張って

トップアイドルになります』と

力強く宣言してくる。


『俺も明日、仕事だから』

『そろそろ帰るよ』と

立花が告げると


彼女も安心をしたのか

『今日はアタシのワガママで

来てもらって』


『本当にすいませんでした』と

頭を下げて

立花を見送る事にした。


彼女のマンションを出て

タクシーに乗り込んだ立花は


家に帰ったら、

どのくらい寝られるか?より


裸パジャマを思い出して

興奮しており


彼女に断っておきながら

おかわりを頼もうか?

真剣に悩んでいた。

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