第31話潜入、千歳烏山大作戦 1
芸能界を辞めたい?
トップアイドルを目指していた
彼女からの驚くべきメッセージに
『今電話しても大丈夫?』と
即レスをする立花
すると
『今マネージャーさんと
一緒だから、後で連絡します』と
返信が彼女からくる。
何か大事件でも起きたのか?
とりあえずゲ-ムを
している場合じゃないな。
そう判断して
エクシブハンターの仲間たちには
ログアウトする連絡を入れた。
時間は22時30分を過ぎている。
彼女はこの時間まで
仕事をしていたのか?
トラブルを含めた色々な考えが
頭の中で錯綜する。
だが、いまだ彼女からの
連絡は来ない。
待つ事が、こんなに
長いと感じた事は
立花の人生で初だろう。
23時過ぎになり
『家に着きました』と
絵色女神から、
やっとLINEが入った。
『電話しても大丈夫?』
立花が、
そうメッセージを入れると
すぐに彼女からの電話が入った。
開口一番
『立花さん、助けてください』
『アタシにはもう無理です』と
彼女が泣き事を言ってくる。
『芸能界を辞めるって何?』
心配していた立花が彼女に、
そう聞くと
『本当にごめんなさい』
『木曜日のオフが
消えちゃいました』と
半泣きの声で伝えてきた。
木曜日のオフが無くなったから
芸能界を辞めたいの?
『分かるように
順序だって説明して』
立花にそう言われた彼女は
今日自分に起きた事を順番に
発表していく。
・イメージガ-ル就任
・CM出演
・雑誌の年間表紙
・記者会見デビュー
・佐山サトシの曲でセンター起用
土曜日・日曜日に
立花が頼んでいた事が
まさか全部決まるとは
彼も思っていなかった。
『こんなに沢山のお仕事、
新人のアタシじゃ無理です』
『ビッグな内容ばっかりで、
アタシに務まらなかったら、
どうしよう?って』
『考えたら
逃げ出したい気分なんです』
まくし立てるように
彼女は気持ちを吐露した後に
『立花さんにも
聞きたい事があったんです』と
彼女が切り出す。
『今日の事って、全部
立花さんが
準備してくれたんですか?』と
質問をしてきたのだ。
そう聞かれた立花は
困ってしまった。
今回の騒動の首謀者は
間違いなく立花である。
彼女が発表していった仕事は、
先週まで
深夜番組の1コ-ナ-を
担当するだけでも
人生をかけてきた少女には
あまりにも重荷になる
仕事ばかりであった。
それを本人の承諾も無しに、
勝手に進めてしまった事に
罪の意識を感じ始めていたのだ。
まずは謝ろう
そう思い
『すいません、
今回の騒動は俺の責任です』と
頭を下げて謝った。
電話越しなので、
彼女にその姿は見えていないが、
申し訳ない気持ちで
無意識に出た行動であった。
『何で、
立花さんが謝るんですか?』と
彼女は不思議そうに
立花に聞き返す。
『女神ちゃんに承諾無しに
勝手に色々頼んじゃって』
『結果、大騒ぎになっちゃって』
『えらい迷惑をかけたでしょ?』と
申し訳なさそうに言うと
『ビックリはしましたけど
嬉しかったです』
『立花さんが
アタシの為にしてくれた、って』
『すぐに分かりました』と
嬉しそうな声で答えてきたが
『でもデメリットが
二つあります』
『木曜日のお休みが
無くなっちゃったんで、
デ-トが
出来なくなっちゃいました』と
不満そうに説明してくる。
その表情が想像出来た
立花は笑いながら
『もう一つは?』と
質問すると
『アタシ専属で
マネージャーさんと送迎車が
出来ちゃったんで
立花さんのアパートに
行きヅラくなりました』と
怒り口調で報告してきた。
確かに、それは痛い
『帰りも毎日、
今と同じくらいの
時間みたいなんです』
『ですから
水曜日にご飯を作りにも、
行けなくなりそうです』
そう愚痴る彼女に
『仕事なんだから、
しょうがないんじゃない?』
『また次回に期待するから
俺は平気だよ』
そう立花が慰めるように言う。
だが彼女は
『でもアタシがイヤなんです』
『次に会えるのが水曜日でも
長いと思っていたのに、
それがムリになって』
『早くても
金曜日にならないと
立花さんに会えないんですよ』
『こんなにお仕事で
ストレス溜まるのに、
1週間も会えないなんて
ムリです』と
一方的に喋った後
『そうだ、今から
立花さん家に行っても
良いですか?』と
言いだしたのだ。
時間は23時30分、
2人共 明日は仕事
今から会って話をしていたら、
寝るのは何時だ?
『来るのは良いけど、
どうやってココまで
来るつもりなの?』
そう立花が聞くと
『電車で行きますよ』と
当たり前じゃないか?的に
言ってくるが
更に立花が
『明日の朝は何時から?』と
聞くと
少し間が空いた後に
『マネージャーさんが8時に
家に迎えに来ます』と、
不満げに答えてきた。
女の子の身支度の時間を
考えたら、朝6時過ぎには
起きないと間に合わない。
自分のアパートから
彼女のマンションまでの
電車の移動時間を考えると
始発でアパートを出発して
マンションに戻らないと
間に合わない。
これからウチに泊まっていたら、
彼女の寝る時間が無くなる。
せっかくの撮影で
寝不足のクマありの
情けない顔で
撮影させる訳には行かない。
そもそも真夜中に
電車に乗ってココまで、
17才の女の子を
来させる訳には行かない。
立花の無言の時間が
長かった事で、
色々と考えている事を
察した彼女が
『こんな時間だし
明日も仕事ですもんね?』
『冗談ですから、忘れて下さい』と
彼女が言ってきた。
さっきまで
芸能界を辞めたい、って
言ってたくせに強がりやがって
『マンションって、
千歳烏山だったよな?』
そう聞かれた絵色女神は
『そうですけど』と答えると
『俺に会えたら、
明日も仕事を頑張れる?』
そう聞かれた彼女も
言葉の意味が分かり
『はい、頑張れます』と
元気に答えてくる。
タクシーより電車の方が
早いだろ?
『今から俺がソッチに行くよ』
睡眠不足を覚悟した立花が
彼女に家庭訪問を宣言する。
しばらく会えないと
思っていた彼女にとっては、
1番嬉しかった言葉を聞けた。
『今から準備して出かけるから
1時間後に着くと思うから』
その報告を聞いた彼女は
『じゃあシャワーを浴びて
待っています』と、
言ってきたのだ。
一日中働いてきて、
汗をかいた自分が
イヤなだけで出た
彼女の言葉だったが
『すごくエッチなんです』と
言った
武藤慶子の言葉が思い出されて
立花は変に意識をしてしまう。
『ワガママ言って、ごめんなさい』
いざ立花が来てくれると思った
彼女は嬉しい反面、
申し訳ない気持ちも出てきた。
だが立花から出た言葉は
『いいよ、
俺も会いたかったから』と
言うものだった。
その言葉を聞いた彼女は
キュンキュンしてしまい
『立花さん大好きです』と
電話越しに告白をしてくる。
不意打ちの愛の告白に、
立花も照れてしまい
『あ、ありがとう』と、
しどろもどろで答えるのが
精一杯だ。
アイドルが住むマンションへ
深夜に潜入する作戦が、
今始動したのである。
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