第27話トップアイドル誕生 3

コンサートのリハーサルで

サニーミュージックの

本社ビルに着いた絵色女神は、


すぐにマネージャーに

呼ばれて別室へと連れていかれた。


スト-カ-事件の時に

来た部屋とは別の部屋に

通されると

権太坂36のプロデュ-サ-の

山田恵一が既に座って待っている。


『おはようございます』

山田に一礼をした絵色女神に


『挨拶は良いから、早く座って』と

彼は打ち合わせを

すぐに始めようとしていた。


会議室のような部屋に

折り畳み式の机と、

椅子がある場所で


プロデュ-サ-が上手で、

下手に絵色女神と

マネージャーが座り、

向かい合う形で

打ち合わせが始まる。


『早速だけど、

女神に上場企業の

オリファルコン株式会社から

オファーが入った』


『オリファルコンの

専属イメージガ-ルと、

全国放映のCMの依頼』


『それとオリファルコンが

発行している雑誌の専属モデルの

年間契約だ』


矢継ぎ早にプロデュ-サ-が

説明をしたが、

絵色女神は事態を飲み込めていない。


『女神ちゃん、すごいじゃない』

『超大型契約よ』


マネージャーさんは

立ち上がって

大喜びをしているが、

彼女は状況が

全く理解出来ておらず


『はぁ?』と答えて、

まるで他人事だ。


『金曜日の番組を見て、

女神にオファーを

してくれたそうだ』


『あと、権太坂ランニング中の

番組スポンサーにも

なってくれて

先方さんからの指名で』


『番組内で女神が

ゲ-ムを紹介するコ-ナ-も

始まる事になった』と

続けざまに説明を続ける。


『女神ちゃん、良かったわね』

マネージャーさんが

彼女の手を握って

飛び跳ねているが


彼女の反応は驚くほど薄い。


『オリファルコンを

知らないのか?』


プロデュ-サ-に

聞かれた彼女は


『すいません、わかりません』と、

素直に答える。


そこで山田プロデュ-サ-が

説明を始めた。


日本の会社で有名な会社は

東京証券取引所に登録している

企業が多い。


登録している会社は

資本金や財務力や

売り上げ額で3段階に

区別されているが


オリファルコン株式会社は

最高位ランクの企業であった。


『何で、オリファルコンさんが

アタシにオファーを

してきたんですか?』


まだ理解していない絵色女神が

質問すると


『お前が番組の中で対戦した、

何とかハンターの

会社じゃないか?』と


オリファルコンが

エクシブハンターの開発元だと

説明をしてくれる。


『広告代理店からの話だと、

番組を見た

オリファルコンの会長が、

女神を気に入って採用を

決めたらしいぞ』と

笑いながら説明をした。


オリファルコンが自分に

オファーをした理由を聞いて、

やっと喜びが沸いてきたようで


『本当にCM出演ですか?』と

プロデュ-サ-に確認すると


『それだけじゃないよ』

『イメージガ-ルと

雑誌の1年間契約』


『番組のレギュラーコ-ナ-』

『その契約を全部、

お前指名で来たんだよ』

そう説明されて


『ヤッタ〜』

『嬉し過ぎ〜』と

歓喜の声で大喜びをする。


『CMも関東ローカルじゃなく、

全国放送を1年間の契約だぞ』


『滅多に来ない、大型案件だよ』

プロデュ-サ-が

彼女の喜びを増やすように、

囃し立てると


『全国って事は、北海道でも

放送されるんですよね?』と

絵色女神が確認すると


『当たり前だろ、

北海道から沖縄まで』


『テレビから、

お前のCMが流れるんだよ』と

ドヤ顔で説明をしてくる。


自分が音楽番組に出演する時に

親に報告をしてきていたが、

そんな出演連絡をしなくても


テレビをつけたら

自分のCMが流れる日を

想像すら、してこなかった。


権太坂でCM出演している

メンバーがいなかったので、

自分に話が来るのは


夢のまた夢だと

思いこんでいたのだ。


『今日、印鑑は持って来たよな?』

山田プロデュ-サ-に聞かれた

彼女は


『はい』と答え、

持参した印鑑を机の上に出した。


マネージャーさんに言われるまま、

印鑑を持参したが

理由は聞いていない


『印鑑は何に使うんですか?』

山田プロデュ-サ-に、

そう質問すると


『契約書に決まっているだろ』と

笑いながら何枚もの紙を

机に並べる。


『初めてのCM出演だから、

分からないか?』


プロデュ-サ-が、

そう言って説明をしてくれた。


オリファルコン社と

契約している期間は同業他社と

契約行為は出来ず、

ゲ-ムに関しては

その会社以外のCMには

出演出来ない。


それ以外も会社の

イメージダウンになる行為や

活動は厳禁で、

違反した場合は違約金が発生する。


広告代理店が準備した

出演契約書に自署で

名前を書いて印鑑を押す事で

契約が成立する。


CMに出演するタレントは、

みんな契約を交わしているので

特別な事ではない。


絵色女神は、その話を聞いて

立花との関係がバレた時に

イメージダウンとなって

違約金の対象になる事を危惧した。


大丈夫かな?


そんな不安から、

考える時間が欲しくなり


『いつまでに

決めれは良いんですか?』と

プロデュ-サ-に質問すると


『何を言っているんだ?』


『今すぐサインするに

決まっているだろ』と、

一蹴されてしまう。


『タレントでCM出演の話がきて

断る奴なんて聞いた事ないよ』


『権太坂の先輩連中は

何年も活動しているけど、

CMに出たくても出れないんだぞ』


『それを、今すぐ決めないで、

どうするんだ』


そう凄まれて

何も喋れなくなってしまった。


その雰囲気を

感じたマネージャーが


『山田さん、言葉が強すぎです』


『初めての事で、女神ちゃんは

戸惑っているだけじゃないですか』

と注意をしてくる。


実際に話の規模が

大き過ぎていて

キャパオーバーを

起こしていたのも事実であった。


『最後の紙には

出演料も書いてあるけど、

数ケ月後には女神の銀行口座に

1000万円が入る』


『ウチの会社も取り分を貰って、

女神の分として

その金額が取り分だ』と説明を受ける。


1000万円?


毎月貰っている金額の何倍だろ?


実家に仕送りをしたら、

どれだけ喜ばれるだろう。


何より、今回のキッカケを

作ってくれた立花に

何かを買ってあげられる。


何も出来ない自分を温かい目で

見守っていてくれた立花に、

これで恩返しが出来る。


違約金の発生の事が

頭から消えてしまうほどの

大金の話を聞いて


『お願いします』


そう言って彼女は、

サインを書く場所の説明を

受け始めたのであった。


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