第25話トップアイドル誕生 1

猪木会長との電話を切った後、

立花は昨夜の内容が載っている

ネットの記事を見まくった。


エクシブハンター自体が

社会的に認知されてきており、


公式ガイドブックにも

掲載されていない新技を

アイドルが発表した


その事実が世間に受けたようで

4本ほど、記事として

yahooニュースにある。


1番気になった記事は

『女神ちゃんがGODに

伝授された新技を

更に発表するのでは?』と言う

記事だ。


確かに、

そう考えるのが普通だよな。


GODの弟子だからと、

世間の目は見るが

彼女は初心者に近い


昨夜は何も

レクチャーをしなかったが、

今度来た時には


基本技や技術、

それに新技を教えておかないと

彼女が恥をかく事になる


それは絶対に避けないと


彼女の始まったばかりの

アイドル生活に

ケチがついてしまうと

考えていた。


そんな時、

立花のスマホがまた鳴った。


週に一回鳴れば多い

立花の電話が1日に二回

鳴る事は異例な事だ。


『トニ-』


画面に出た名前を見て、

かけてきた相手が

エクシブハンターの中で

チ-ムを組んでいる

メンバーだと認識する。


『もしもし』

立花が受電すると


『えらい騒ぎに

なっているじゃないですか?』

少し大きな声でトニ-が喋りだす。


確か都内に住む20代の

フリ-タ-の男子だと

言っていたが

詳しい事は聞いていない。


トニ-は他のチ-ムメンバーと

プライベートで

会っているらしいが


立花は一切関わっていないので

詳しい素性は知らないのだ。


『いつの間に

アイドルとコンタクトを

取っていたんですか?』


やはり、その質問か。


『最近ログインが

少なかったから

心配していたんですけど』


『権太坂が

絡んでいたなら納得です』と

一人で自己完結してきた。


『そんなのじゃないよ』

『教えたのも一回だけだから』

立花がそう説明するが


『隠さなくても、いいですよ』

『俺もよく使う手です』


『コツを説明するのに、

目の前じゃないと

出来ないからって言って』


『自分のマンションに

入れてますから』と

笑いながら説明してくる。


こいつ、そんな奴だったのか?


立花は軽蔑したが、

自分が絵色女神にした事も

褒められた行動ではないと思い

笑って誤魔化す事にした。


『権太坂も

イマイチですからね?』と

トニ-が言った言葉が気になり


『権太坂って、

イマイチなの?』と質問すると


『ヒット曲が無い上に、

不動のセンターが

無期限活動停止を

発表しましたからね?』と言って、


ネットで

仕入れたと思われる

裏情報を色々と教えてくれた。


神楽坂や談合坂の

余った曲をリリースしており、

冷遇されている、

その話は興味深い。


確かに良い曲とは、

お世辞にも言えない

メロディだとは

立花も思っていた。


『そうなんだ』

『確かに、

ヒット曲が欲しいよな?』

立花がそう言った言葉に


『ウチのチ-ムの

フランキーに頼んだら、

どうですか?』と

トニ-が提案してくる。


フランキー?


ゲ-ム内で、

いつも逃げ回っていて、

俺が助けている奴だ。


『あのフランキーが、

どうしたの?』

そうトニ-に聞くと


『覚えてないですか?』

『フランキーを

チ-ムに入れる時に

説明しましたけど』


『あいつア-カムの

佐山 サトシですよ』と

力説してきた。


『ア-カム?佐山?』

『何だっけ、それ?』


初めて聞いたアフリカの国の

首都みたいな感じで立花が聞くと


『はぁ?ア-カムですよ?』

『マジで言ってんですか?』

そう言って怒り出したのだ。


『ア-カムね?知っているよ』

そう言って妖怪ウォッチの

ウィスパー張りに検索をする立花。


すると


『東京ドーム3daysチケット

5分で完売』の記事が出てくる。


『あ〜、朝のワイドショーで

やっていたね』と、


やっとア-カムの情報と

知識が追いついた。


『フランキー

売れているもんね?』と


立花がトニ-の

テンションに合わせるように

相槌を打つと


『売れているなんて

もんじゃないですよ』


そう言ってア-カムについて

語り出す。


千葉県出身の4人組の

ロックバンドで、

ボ-カル兼ギターの

佐山サトシを中心に

結成されたバンド。


バンドの全ての曲の

作詞作曲を佐山がしており、

現在まで発売したアルバムは

全てビルボード日本版で

1位となっていた。


オリンピック放送の

NHKでのメインテーマ曲は、

立花でも知っていた。


だが、近所のイオンで

佐山サトシと、すれ違っても

立花は気付かないだろう。


『でもフランキーは曲を

書いてくれないだろ?』


存在がビッグだった事に

気付いた立花が、そう呟くと


『GODさん、あなたが頼めば

OKしてくれるかもしれませんよ』

そうトニ-が告げる。


『何で?俺は親しくないし』

『そんなに絡んでないから』と

否定すると


『フランキーは

GODに会いたくて、

ウチのチ-ムに来たんですよ』

そうトニ-が説明した。


何か、照れクサイな。


自分目当てで加入してくるなんて


そう思っていた時に

『オフ会でも

何でGODさんは来ないんだ?って、

毎回怒っていて』


『最近はオフ会にも

来なくなりましたから』と、

交流がある事を

サラッと言ってきた。


『連絡先を知っているんだ?』

そうトニ-に聞くと


『知ってますよ』と

答えてくる。


『もしもだけど

俺が電話して頼んだら

権太坂の新曲を

書いてくれるかな?』と

立花が


あくまで例え話のように

言ってみたが


『無理じゃないっすかね?』


『佐山サトシって、他人に曲を

提供しないって事で有名ですから』と


頼む前から

シャットアウトのような事を

言ってくる。


『さっきと違うじゃんか?』


俺が頼めばOKみたいな事を

言ってたのは、お前だろう?


そんな気持ちで立花が言うと


『でもGODさんが会って、

直接頼んだら

分からないと思うけど』と

笑いながら言ってくる。


『あいつ、とにかく

GODさんに会いたがっていたから』


そのトニ-の言葉に


『悪いんだけど、

俺のLINEのIDを

フランキーに

伝えてくれないかな?』と

頼んできたのだ。


『マジですか?』


『あんなに他の奴に

IDを教えるな、って

言ってたじゃないですか?』


そうトニ-が騒ぐのも

無理はない。


トニ-にIDを教えた際に

他の誰かに漏らしたら、

チ-ムは解散すると言っておいた。


他人との関わり合いを

持ちたくなかった立花は、

エクシブハンターの中でも

交流は最低限にしたかったからだ。


『確かに無理な話をするのに

電話じゃ失礼だし、

会って直接頼んでみたい』


そう言った立花の言葉に


『相当、女神ちゃんに

入れ込んでますね?』と

からかわれたが否定もせずに


『とにかく頼むよ』と

言って電話を切った。


どうなるか?は分からない。


だが絵色女神の為に、

なんとかしてあげたい気持ちでの

行動だったのだが


その話は予想以上に早く

展開を迎えた。


トニ-との電話を切った後、

2時間後に佐山サトシから

電話が入ったのだ。


『はじめましてフランキーこと、

佐山です』と、丁寧な電話に


『こちらこそ、はじめまして』

『GODこと立花です』と

本名を名乗ってしまったのだ。


連絡が来るまでの間に

ウィキペディアで

佐山サトシの事も調べて、

年上だという事を

知っていたので敬語対応だ。


『本物のGODさんと

話せる日が来るなんて

思っていなかったから』


『スゲ-、緊張してます』と

低姿勢な佐山の態度に

立花も恐縮してしまい


『本物だって証拠に、

エクシブハンターの中で

少し会話してみますか?』と

提案すると


『マジっすか?』と

驚きつつも


『一旦切って、

すぐにログインします』と

佐山がすぐに行動に出た。


立花も、すぐにログインして

ゲ-ム内にある、


チ-ムのログハウスに入り

アバタ-同士で握手をして、

お互いに本人確認をする。


そして、すぐに電話に戻して

会話を復活させると


『急にトニ-さんから、

GODさんが俺と連絡を

取りたがっているって

電話がきて』


『ウソだろ?って

疑っちゃったんですけど』


『マジの話だったんですね?』と

興奮しながら話してきた。


『いや〜、俺もトニ-と

電話で話をしていたら

佐山さんの話が出て』


『オフ会の時に俺がいないって、

怒っていて』


『俺に会いたがってくれてるって

聞いて』


『ちょっとお願いしたい事も

あって』


『一度会って

話をしてみたかったんですよ』と

本題を隠して、

事の流れを話してみる。


すると

『マジっすか?』

『いつにします?』と興奮して、

立花に予定を

聞いてきたのであった。


今日は土曜日、

会社員の立花にとっては

平日は避けたいのだが


相手は売れっ子バンドだから、

スケジュールが厳しいだろうと

思っていた時に


『俺ならツアーが終わって、

しばらくオフですから、

いつでも大丈夫ですよ』と、

教えてくれた。


マジで?


『だったら明日の日曜日でも

大丈夫ですか?』と

立花が聞くと


『夜なら大丈夫です』と

答えてくる。


だが芸能人を

連れて行けるような、

オシャレな店を立花は知らない。


ガストじゃ、ダメだよな?


そう思っていた時に

『だったら店は

俺が押さえますんで』


『エリアとか、店の種類とか

リクエストがあったら

言って下さい』と

佐山が聞いてくる。


店を探さなくて

よくなった立花は安心して


『お店はお任せで大丈夫です』と

佐山に一任したのであった。


『なら店が確定したら、

連絡します』と言って

電話は切れた。


ふ〜、


芸能人と話をして緊張した。


絵色女神も芸能人だが

彼の中ではカウントはされて

いないようだ。


立花が安堵のため息をつくと、

絵色女神からのLINEが

入っていた事に気付く。


開けてみると


生まれて初めて

yahooニュースに載った喜びや、

雑誌の単独での表紙が

決まった事


ゲ-ム雑誌の取材が

決まった事が報告されていた。


最後にはスタンプで

『大好き』とある。


立花も猪木会長との話や

佐山と会う予定になった事を

書こうと迷ったが


ぬか喜びで

終わった時の事を考えて


『水曜日に来た時には

エクシブハンターの特訓だから、

覚悟をしとくように』と

返信をした。


当然だが

『おめでとう』のスタンプも、

その後に付けてある。


そして翌日


コインランドリーでの

一週間分の洗濯を終わらせた立花は


佐山から指定された店に

向かう為に新宿に来ていた。


場所は新宿の

高層ビルの最上階のレストラン


そこにSEGAソニックの

Tシャツにデニムという姿で

現れたのだ。


場違いだよな?


店の入口で

入店を迷っていると、

店員が現れて


『何名様でしょうか?』と

言いながら、

立花の服装をジロジロと

見ながら聞いてくる。


ドレスコードがあったら

一発でアウトの服装だったが


『佐山で予約が

入っていると思うのですが』と

告げると、

手のひらを返したように


『お待ちしておりました』と

言って

店内へと案内を始める。


やがて、新宿の夜景が

全て見える席に案内されると

革のジャケットを着た男性が

既に座って待っていた。


立花を見ると、すぐに席を立ち

『初めまして佐山です』と

挨拶をして立花に一礼をする。


それを見て立花も慌てながら


『どうも、はじめまして立花です』と

遅れて挨拶をし返す。


向かい合う形で、

お互いに席に着くと


『GODさんに会える日が

来るなんて、

本当に夢のようです』と

佐山は嬉しそうに喋りだした。


『エクシブハンターを

始めた時から、

ず-っと憧れていたんですよ』と


戦隊ヒ-ロ-に会えた

子供のように目を輝かせて

熱く語ってくる。


それを聞いて

『そんな対したモンじゃないから』と

恐縮する立花だが


佐山の熱量は変わらず


『会ったら聞きたい事が

沢山あったんだよな』と

目を細めて嬉しそうな表情を

浮かべていた。


そこからエクシブハンターで

2人の協力してプレ-した時の話や

イベントでの失敗で話が盛り上がり


ワインの酔いも手伝って、

2人は旧知の友人のように

仲良くなっていった。


メインディッシュを食べ終えた頃


『そうだ、GODさんが

エクシブハンターを

始めたキッカケって

何だったんですか?』と


佐山が、また

ファン目線で質問をしてくる。


かなり打ち解けていた事もあって

GODではなく、立花として


彼女と別れて

引きこもっていた時に

エクシブハンターに

出会った話を全てした。


すると話を聞いていた

佐山がボロボロと

大粒の涙を流している。


ビックリした立花が

『どうしたんですか?』と

聞くと


ポツリポツリと自分の事を

喋り始めた。



まだデビューする前の佐山は

バンドが軌道に乗らず

精神的に病んでいたそうだ。


部屋で引きこもっていた

佐山が偶然ダウンロ-ドしたのが

エクシブハンターだった。


最初は参加せずに

視聴モ-ドで他人のプレーを

眺めていたのだが


毎回、ものすごい勢いで

敵を倒してクリアをしていく

プレーヤ-を知った。


それからは、

そのプレーヤ-のゲ-ムを

観戦していき、

いつの日かは

一緒にプレーするのが

夢のようになっていった。


この人のように

自分も前向きに

生きて行かなきゃダメだ。


やがて、引きこもり生活も

脱却できて

バンドもデビュー出来た。


『GODさんも暗闇から

立ち上がったんですね?』


そんな憧れのGODが

自分と同じ

引きこもりだった事を

知れて嬉しかったそうだ。


『同じ元引きこもり同士、

これからも一緒に

頑張って行こう?』

そう握手をした時に


佐山が突然思い出したように

『そう言えば、

あの絵色女神ってのは

何ですか?』と

怒りだしたのだ。


あれ?


急に不機嫌になっちゃった?


これから権太坂の話を

しようと思っていたのに



困っている立花に

『GODさんの

弟子になるなんて図々しい』


『あの記事を読んで、

嫉妬しましたよ』と

違う角度で、

また熱く語りだす。


彼女の事も

話しておかないとダメかな?


そう考えて

猪木会長に話した時のように、

絵色女神が苦労人である事を

アピールしてみた。


すると

『そんなエライ子

だったんですね?』


『見直しました』と言って、

彼女の事を認めてはいるが、

何処か引っかかっているようで

あった。


それを察した立花が

『まだ何か、

引っかかっています?』と

聞くと


『本当は昔から、俺が

GODさんの弟子に

なりたかったんですよ』


『それなのに先を越されて、

俺は弟子に成れていないし』

そうクチを尖らせている。


別に弟子制度を

始めた訳じゃないが


『だったら佐山さんも、

弟子になりますか?』

そう立花の言った言葉を聞いて


ガタっとイスを引いて

立ち上がり


『マジっすか?』と

店内中の人が全員、

こちらに注目するような

大声で佐山が叫んだ。


小さな声で

『佐山サトシだ』


『本物かしら?』と言う声が

聞こえてくる。


『佐山さん、座って』

立花に言われて、

自分の暴挙に気付いた佐山が

自分のイスに座る。


『今後も師匠と弟子として、

色々とレクチャーしますから』と

立花に言われた佐山は


『ヤッタ〜』と

小さなガッツポーズを、

その場でしていた。


機嫌が良くなってくれたなら、

今こそ権太坂の話をする

チャンスか?


すると


『女神ちゃんのやっていた

ビ-ナスって技を

教えてくれませんか?』と

笑顔で聞いてくる。


立花が言われるまま

レクチャーすると


『スゲ-、スゲ-』と

興奮しながら技を出して

喜んでいる。


一通り技を堪能した佐山が

ゲ-ムを閉じて


『エクシブハンターの

課金して買える技やアイテムは

全て買ってきたつもりでした』


『でも、こんな裏技が

買わなくても有るなんて、

奥が深いですよね?』と、

しみじみと語っていたので


『佐山さんにも新しい技、

教えましょうか?』と

立花が言うと


『マジっすか?』


ガタっと、イスを引いて

その場で立ち上がっている。


『佐山さん』


立花の小さな声で、

すぐに椅子に座った。


立花が新技を

レクチャーし始めると


『スゲ-、スゲ-』と

大興奮して

佐山は新技を習得したのだった。


本当にエクシブハンターが

好きなんだろうな?


嬉しそうにプレーする

佐山を見て、

立花はそう思っている。


『GODさん、この技の名前は

何って言うんですか?』


佐山に聞かれた立花は

少し考えて


『まだ決めて

いなかったんだけど』


『フランキーなんて、

どうでしょうか?』と、

佐山に提案すると


『いいんですか?』と

目を輝かせて

立花に確認をしてくる。


『マジで今日は人生で

一番最高の日だ』


佐山サトシはそう言って

興奮して大喜びをしていた。


お願いするなら今かな?


『実は佐山さんに

お願いしたい事がありまして』と

立花が切り出すと


『そうでしたよね』


『すいません、俺、

自分の事ばっかり喋ってしまって』


『何でもするから言ってください』と

立花に熱く言ってきた。


『さっきから話が出てる

絵色女神がいる権太坂36に

曲を書いてくれませんか?』と

申し訳なさそうに言うと


『いいっすよ、書きます』と

即答してくれたのだ。


あれ?


『佐山さんって

他人に曲を提供しないって、

噂を聞いたんですけど』と

聞くと


『そうですね』

『楽曲提供もコラボも

全部断ってきましたけど』


『GODさんに頼まれたら

断れないないですよ』と

笑顔で快諾してくれたのである。


ヤッタ-


今日も、かなりムリしたが

頑張って良かった。


『事務所に

楽曲依頼を出して下さい』


『俺から

話をしておきますから』と

意味の分からない言葉を

佐山は発した。


『楽曲依頼?』


立花の不思議そうな顔を見て

佐山が説明をしてくれた。


作曲家に曲を書いてもらうには、

まずは所属事務所に

楽曲依頼を出して

作曲家の了承を得た後


音楽出版社や作曲家の

取り分を決めて、

依頼料が決まり

正式に依頼が成立するそうだ。


友達だから

『ちょっと書いてよ』は

通用しない。


場合によっては

億単位の金が動く大人の

ビジネスの世界で

素人の戯言は通用しない事が

立花にも分かった。


立花がレコード会社はおろか、

権太坂の事務所、

絵色女神すら


今回の佐山サトシへの

楽曲依頼の話を知らない事を

伝えると


『スゲ-や、聞いた事ないや』と

大笑いした後


突然、真顔になり

『それだけ絵色女神のチカラに

なりたい、って事ですよね?』と

言ってきたのであった。


佐山サトシには隠せないな。


『そうなんです』

『何とか彼女にヒット曲を

プレゼントしたいんです』


そう言って、その場で頭を下げた。


『わかりました』

『師匠の為に俺が何とかします』と

佐山が全面協力を

申し出でてくれたのだ。


権太坂36も佐山のバンドも

サニーミュージックで

同じレコード会社だと言う事で


『レ-ベルは違いますけど、

知り合いがいるんで

俺が話を通しておきます』とまで

言ってくれている。


『素人が

トップミュ-ジシャンに

失礼な、お願いをしてすいません』

立花が再び頭を下げると


『GODさんが

俺に会ってくれるって

話になった時から、

おかしいなと思ってたんですよ』


『エクシブハンターの

他のメンバーには

オフ会でも絶対に会わない』


『その鉄の掟を破るには

何かあると思っていたけど、

裏にアイドルが

絡んでいるとは

驚きましたけどね』と

笑って受け入れてくれた。


『でも今日はGODさんに

会えて本当に嬉しかったです』


佐山が差し出した手を

立花が握り返して強く握手をする。


『師匠、これからもよろしく』

佐山が、そう言った言葉に


『こちらこそ、

よろしくお願いします』と

立花が答えた。


その2人の光景を遠くから、

見ていた女性がいる事を

立花達は知らなかった。



宴もたけなわだがお開きとなり、

高級レストランの費用は

全て佐山が負担する事となった。


立花が半分出すと言ったが

聞き入れず、

次回飲みに行く時に

立花が持つ事となり落ち着く。


店で佐山と別れた立花は

1人となり、近くの公園で

タバコを吸って、

まどろんでいる。


絵色女神には、ご飯を

友人と食べに行くと

昨晩の電話の時に伝えておいた。


『女の子じゃないですよね?』と

疑われたが


相手がエクシブハンターの

仲間で男だと知ると


『いってらっしゃい』と

気持ち良く出かける事に

賛同してくれる。


おそらく食事に行く話を

する前に、

エクシブハンターの

ペアマッチの話をして


立花と彼女で

『GOD andビ-ナス』で

参加する事を誘われたからであろう。


絵色女神は大喜びで、

優勝賞金で家を買うと

参加する前から、

もう優勝した気でいる。


佐山と会った日曜日から

立花は大きな流れに

飲み込まれていくが

この時はまだ

知らずにいたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る