第24話ガ-ルズト-ク

絵色女神は時間より

早めに集合場所に到着したが

既に越中美桜は到着していた。


本来なら昨夜の看板番組の

出演の件を話すのが

権太坂36のメンバーの

正しい行動なのだろうが


絵色女神が昨夜に

ベッドに潜り込んで

アタックを仕掛ける作戦を

知っていた美桜は


絵色女神の姿を見つけると

『女神ちゃんコッチ、コッチ』と

言って、

控室の端っこに彼女を誘導する。


美桜の声に気付いた彼女も

急いで、

端っこのイスに腰をかけた。


『どうだった?』

美桜に、そう聞かれた彼女は


本当だったら

立花との事を黙っていないと、

いけないところだが


喋ってはダメと言う

ジレンマが返って、


誰かに喋りたいと言う

反動となって

『美桜ちゃん聞いてよ』と

自ら発表する気満々の

態度となっていく。


周りをキョロキョロと

見渡して2人しかいない事を

確認した後


美桜の耳元で

『いっぱいキスしちゃった』と

嬉しそうにキャッキャッと

はしゃぎながら

報告し始めたのである。


ついに来たか、そう感じた美桜は

『ほんで、ほんで?』と、

話の続きを催促する。


『順番は逆だけど、

胸を両手で触って貰って』と

言った時から、

その瞬間を思い出して

恥ずかしそうになってしまった。


『そこから先は?』

勿体ぶるような彼女に

督促する美桜に


『今も家を出る時も

2回キスしてきちゃった』と


両方のほっぺたを手で押さえて、

顔を真っ赤にさせて告白する彼女に


『そういうの、いいから』

『結局は何回したの?』と

美桜が聞くと


絵色女神が

自分の指を折りながら、

数え始めて折り返した時に


『おおくねぇ?』と

彼女に突っ込みを入れた。


そう言われた彼女は

更に恥ずかしくなり

モジモジしているが


『7回』と、しっかりと

報告をする律儀な彼女である。


美桜が

『7回も、やって寝れたの?』と

呆れたように彼女に聞くと


『寝る前に5回で、

起きてから2回だから』


『いっぱい寝れたよ』と

正しいカウントを報告してくる。


『でも女神ちゃん、初めてって

言ってなかったっけ?』


『初めてで、7回もしたら

ヒリヒリして痛いでしょう?』と

美桜が心配してきたが


今朝のキスを思い出した彼女は、

あれで何故

痛くなるのかが分からず


『全然痛くなかったよ』と

美桜に答えたところで、

話が噛み合っていない事に

美桜が気付いた。


一部始終を聞いた美桜は


『まだ、やってないの?』と

呆れているが


『来月のアタシの

誕生日の日には、ねぇ?』と

絵色女神は嬉しそうに笑っている。


『女神ちゃん、

本当はあ-して、こ-して』

『彼氏さんがピ-して』と


絵色女神の両方の耳が

真っ赤になる事を

手振りをつけて説明して


『誕生日には、

全部クリアしないと』と

はっぱをかけた。


『出来るかな?』と

絵色女神は自信なさげに呟くと


美桜が

『女神ちゃん』

『女の子は好きな人に抱かれると

キレイになるんだよ』

そう告げる。


それを聞いた彼女は

更に顔を赤らめて困っている。


所詮、他人の恋路


『自分らのペ-スで、どうぞ』と

考えた美桜は、

話題を変えるように


『そう言えば

昨日の放送って何?』と、

やっと看板番組の話をし始めた。


『ほとんど女神ちゃんで番組が

終わっちゃったじゃん?』と、

やっかみ半分で絵色女神に絡む。


『アタシも見て

ビックリしたんだよ』


『毎度の事だけど

編集の結果を知るのは

OAだからね』と

彼女も感想を述べた。


『でも女神ちゃんも

yahooニュースに載ったの

初めてじゃないの?』


美桜に、そう言われたが

彼女は意味が分からず、

不思議そうな顔をしていると


『マジで?』と

呆れながら美桜は

自分のスマホで、


『権太坂36の絵色女神、

GODに弟子入り』の

ニュースを見せた。


『ウソ?イヤだ?マジで?』と

動揺と驚きで

変な動きをしてしまう彼女。


どうしよう?


立花さんに今すぐ電話したい。


人生初のyahooニュースに

載れた件で、御礼を言いたい。


驚きと喜びで

右往左往している絵色女神に

美桜が


『女神ちゃん、

このままゲ-ム枠で一気に

ブレイクするんじゃない?』


美桜が悪い笑顔で

絵色女神に問いかけると


『そうなると嬉しいんだけど』と

動揺しつつ返事をした。


アイドル戦国時代、

可愛いだけじゃ

テレビ出演は厳しいので


大食いアイドル、

アニメ大好きアイドル、

鉄道アイドル、心霊アイドルと


多種多様なジャンルで

自分をアピールして、

マスコミ媒体で


少しでも多く紹介されて

名前と顔を一般の方に

覚えて貰う事に

彼女達は必死だった。


だからこそ絵色女神は

GODを見つけ出して、

自分を売り出す

キッカケとしたかったので

作戦としては

大成功だったと言えるだろう。


それを踏まえての

美桜の発言である。


『結構、女神ちゃんの

昨晩の相手って

ゲ-ムの人なんじゃない?』と

核心を突く美桜に


『ち、ち、違うよ』と

声を震わせて否定する絵色女神


権太坂のメンバーには

番組出演のために

一夜漬けでゲ-ムを習ったとは

思われたくなかった。


彼女の中では売れるために、

なりふり構わず頼んだのではなく


元々していたゲ-ムで、

縁があってGODと知り合って


弟子となったと言う説明で

番組でも放送されたので、

その部分は否定したかったのだ。


『まぁ、いいけど』


大人しく美桜が引き下がった時に、

先輩達もゾロゾロと控室に入ってくる。


すると絵色女神を見つけた

先輩達が


『女神、

昨日の放送良かったよ』とか


『yahooに載っているね』と

次々に優しい声をかけてくれる。


先日の雑誌の取材の時に

イジワルだった先輩すらも


『マジで今度ゲ-ム教えて?』と

言ってきたのだ。


確実に景色が変わってきた。


昨夜の放送で自分の事を、

みんなが認め始めてくれたんだ。


それは彼女の中で自信に

繋がっている。


そこに

マネージャーさんが現れて


『女神ちゃん、いたいた』と言って、

慌てて彼女の隣に座り


『単独での表紙撮影と

ゲ-ム雑誌3誌からの

取材が入っているから』


『リハーサルが終わったら、

打ち合わせをするわよ』と

新たな仕事の話を説明してきた。


周りで聞いていた先輩達から

『スゲ-な、

なんとかハンターってゲ-ム』とか

『単独の表紙って早くない』と


感嘆とも、やっかみとも取れる

言葉が漏れてきたが


雑誌の表紙を

自分が飾れると知った彼女は、

嬉しさのあまり


5秒ほど、その場で

固まっていたのである。

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