第22話テレビ放送その後 1

コンビニで買った遅めの

朝食を食べる2人の話題は、

絵色女神の次回の

休みの日の件であった。


『今月の休みの日って

決まっているの?』


立花にそう聞かれた彼女が

スマホを開いてスケジュールを

確認すると


『立花さんの家に来た

次の日はオフです』と、

答えてきた。


『その日の予定って、

もう決まっている?』


立花に聞かれた彼女は即答で

『何も決まっていません』


『おウチの片付けを

しようかな?、と思っています』と

言ってきたので


『良かったら、

その日にデ-トでもする?』と、

立花がデ-トに誘った。


『え?だって、その日』

『木曜日の平日だから、

会社がありますよね?』と

彼女が不思議そうに聞くので


『サラリーマンには

有給休暇と言って、

平日に休める必殺技が

あるんだよ』と

ドヤ顔で答える。


『ヤッタ〜』


『だったら絶対に行きたいです』と、

満面の笑みで喜びを表現してきた。


『ディズニーランドとか、

ありですか?』と、

彼女が前のめりに

聞いてきたのでネットで調べるが


その日の分は予約終了で、

ムリだと分かった。


『次はランドかシ-にしましょう』

『アタシ、彼氏が出来たら』


『ディズニーに一緒に行くのが

夢だったんです』と、

絵色女神は大興奮しているが


誕生日まで待って欲しいと

言った立花は、

多少引っかかっている。


だが数時間前の

キスを思い出して、

あれだけ何回もしておいて


何かを言うのも変だし、

喜んでいる彼女に水をさすのも

悪いと考えて黙っていた。


『だったら、

何処に行きましましょうか?』


目を輝かせて聞いてきた彼女に


『ニトリに家具を

見に行くのなんて、どうかな?と

思ってまして』と

デ-トの本来の予定を話し始める。


今まではコンビニ弁当などで

済ませていたが、

彼女が来るようになり


箸に茶碗、皿にコップと

2人分を収納出来る、

食器棚が欲しいのと


ベッドもシングルでは

2人で寝るのはキツイので、

セミダブルを買いたいと

思っている事を彼女に話すと


『ニトリに行きたいです』

『木曜日に行きましょう』と

彼女も大賛成をした。


だが突然、表情を曇らせて

『なんか、すいません』と

彼女が謝りだしたのだ。


大喜びからの、曇天に驚いた立花が

『何を謝っているの?』と聞くと


『アタシが来てから、

立花さんにお金を

たくさん使わせて

しまってますよね?』と


経済的に負担をかけている事を

気にしている。


『アタシ、図々しいから

当たり前にご飯を、

ご馳走して貰ってますけど』


『アタシも働いているんだから、

本来は半分は

出すべきなんですよ』と

反省をしだした。


それを聞いた立花は

『女神ちゃんの事を

図々しいなんて思った事もないし』


『経済的にも

負担になっていないよ』と

笑いながら説明をする。


立花は平日も休日も、

友達と遊ぶ事なく趣味も

特別無かった。


車やバイクも持たずに

服に関しても、

ワンシ-ズンに一着買えば

良い方だ。


なので毎月の給料で携帯代、

光熱費を払っても

給料が結構残っていたのだ。


ボ-ナスに関して言えば、

会社に入った5年間で

一度も使っていない。


『だから女神ちゃんが

心配する必要がないんだよ』と

説明すると


『お金のかかる女って、

嫌われるって』


『昔、読んだ事があって

心配してしまいました』と

心境を吐露してくる。


『初めて

立花さん家に泊まった日』


『アタシに、交通費を

カンパしてくださった

じゃないですか』


『あの時、凄い感謝したんです』


『その時の気持ちを忘れないように、

あの時のお手紙も取ってあります』


そう言われた立花は

手紙を書いた事を

忘れており

急に恥ずかしくなった。


『あの手紙は、

寝ている女神ちゃんを

起こしちゃ悪いと思って

書いたもんだから』


『出来れば、

捨てて貰いたいんだけど』と

彼女にお願いをしたのだが


『捨てるなんて絶対イヤです』

『今だって持ってますし』


『アタシ、

あの日から立花さんに

夢中になりました』と

目を閉じて、

その日を思い出すような

彼女は拒否をしたのだ。


そこまで言われると立花も、

それ以上は強く言えない。


話を変える意味で

『そう言えば、あれから

一週間くらい経ったけど、

お金って残っている?』


一般的な給料日までは、

まだ日にちがあり


彼女の経済的な事情を

知っていた立花は、

少し気になっていた。


そう聞かれた彼女は

『まだ大丈夫ですよ』と

答えたが、

その時の少し慌てている

彼女の態度を見た立花は


『財布にいくら残っている?』と

彼女に問いただした。


そう言われた彼女は

財布を引っ張り出して、

中身を確認して


『2000円ちょっとです』と

恥ずかしそうに伝えてくる。


すると立花は立ち上がり、

自分の財布を持ってきて

中から3万円を出し


『これ財布に入れといて』と

彼女に差し出した。


『こんなにダメです』と

言って


お金を返そうとするが、

立花に突き返され


『使わなくても良いから

財布に入れておいて』と、

強く言われる。


『でも』

困ったようにしている

絵色女神に


『給料日まで

2000円で持つ訳がないし』


『何か急なトラブルがあった時に、

お金がないと動けない』


『女神ちゃんが

無駄使いをしない子だって

言うのも知っている』


『常に俺が

側にいれないだろう?』


『大事な子に、

何かあった時に心配しなくて

済むと思うから』


『俺が持っていて

欲しいんだよ』と

立花が自分の思いを語った。


『立花さん』


そう言った彼女は

立花の目を見つめて、

ゆっくりと礼をした後


『この、お金は

ちゃんとお返しをしますから』と

立花に返却意思を伝えたが


『交通費のカンパと同じで、

返さなくても良いよ』と

言われてしまう。


『実家に仕送りしている分を、

今月は俺が少し手伝った』


『それで良いじゃん?』


立花にそう言われた彼女は


『あなたに会えて

本当に良かったです』と

言って

再び頭を下げてきたのである。


『そんな事、しなくて良いから』


立花は小っ恥ずかしくて、

彼女の再敬礼をやめさせようと

アタフタしていた。


やがて、彼女が

仕事に向かう時間となり

駅まで、向かう事となり


玄関まで来た彼女が

『水曜日まで会えません』


『だから』


そう言って下を向いて

モジモジと、しだす。


立花も、そこは察しており

『ご褒美のおかわり?』と聞くと


『はい』と言って

彼女が嬉しそうに顔を上げた。


先程はベッドの中で

寝ていたので

横向きだったが、

今は立っており


お互いに向かい合っているので

一般的なカップルのような

姿勢となり


目と目を見つめ合い、

ゆっくりと顔を近づけて

唇を合わせた。


1秒ほどして立花が頭を離すと

『もう一回してください』と

彼女が、おかわりを求めてきて


再度、キスをする。


今度は長めにしたが、

唇を離して、

ゆっくりと閉じていた瞼を

開けた絵色女神は


それでも物足りなさそうな

表情をしている。


だが仕事に向かう時間は

近づいており、

名残り惜しそうな彼女は

仕方なく駅に向かう事となったが


『駅まで手を繋いでいこうか?』と

立花に手を差し伸べられて

彼女はご機嫌となった。


駅まで歩いている間、

彼女は嬉しそうに

木曜日のプランを話している。


せっかくの丸一日のオフ


ニトリの他に

自由が丘のスィーツ巡りと

映画を観に行く予定も加わった。


ハンバーグの次の献立も

立花にリクエストを聞いて、

肉じゃがに決定した。


だが木曜日に

彼女が楽しみにしていたデ-トは、

中止となってしまったのであった。

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