第21話夜明けの女神様
明日の事を考えて
早々に寝る事にした2人
絵色女神はベッドで寝て、
立花は床に服を敷いて
寝る事となった。
だがテレビ放映の直後で
興奮冷めやらない彼女は
『もう少し先輩達みたいに、
上手くリアクションを
取らないとダメかな?』と
自己反省をしている。
『上手に立ち振る舞って
いたんじゃない?』
立花が、そう言うが
『先輩達は、どの角度から
話が来ても上手に、
話を盛り上げているんですよ』と
今日の放送で、
自分の活躍だけじゃなく
先輩達がテレビで
映されていた時に
注意していたようだった。
『今日は、たまたまアタシが
メインでしたけど』
『次回、別の日の撮影の時に、
たくさん映れるように
考えてみます』と
決意を伝えてくる。
実際、テレビ放映中の
彼女の真剣な眼差しを
横で見ていた立花は
彼女が今後の
パフォーマンスの事を
考えていると感じていた。
『もう、今日のOAの話は
これで終わりです』
ベッドに寝ていた彼女は、
そう言って話を終わらせる。
下に寝ていた立花は、
彼女の表情が
見えていなかったので
それ以降を突っ込む事なく
寝る体制に入ろうとした。
上のベッドで寝ていた彼女は、
それを察知して、
『立花さん、
もう寝ようとしてません?』と、
絡んでくる。
『明日も仕事でしょ、
早く寝ないと』と
身体の事を考えて
睡眠を優先させるように促すが
『まだ寝れません』と、
彼女はゴネだした。
『なら、もう少し話す?』
立花が、そう聞くと
『ソッチに行っても良いですか?』と
明るい声で聞いてきたのである。
『話すだけなら、
このままで良いんじゃない?』
さっきも
暴走してしまった事があり、
立花がそう提案するが
『上と下だと表情が分かりません』
『どんな顔で喋っているか、
それを見るのもお喋りです』と
彼女が反論する。
確かに一理ある、と
納得した立花が
『どうぞ』と言って、
自分が寝ていた床で
モゾモゾと動いて
スペースを作った。
『お邪魔します』
絵色女神がそう言って
ベッドから降りてきて
床に寝転んだ。
立花が彼女に
背中を向けて寝ている姿に
『ちゃんと
コッチを向いてください』と
絵色女神が方向転換を求める。
至近距離だとマズいだろ?
そう思いながら、
身体を動かして彼女と
向かい合わせになる
姿勢になると
目の前の絵色女神が笑顔で
『ヨシヨシ』と頭を撫で始めた。
『俺は犬か?』
されるがままに
頭を撫でられている立花が
言うと
『本当に今日まで、
ありがとうございました』と
真剣な口調で礼を言ってきた。
『何を改まって言ってるの』
絵色女神の言葉に
ビックリした立花が聞くと
『今日の放送が成功したのは
立花さんのおかげだし』
『立花さんが
アタシにしてくれた、
沢山の嬉しい事を
数えていたんですよ』
『そうしたら、
14個もあったんですよ』
『まず見ず知らずのアタシに
LINEのIDを教えてくれて』と
彼女が言ったところで
全部聞いていたら
朝になってしまうと思った
立花が
『そんなの気にしなくて良いよ』
『俺こそ女神ちゃんから
元気を、いっぱい貰ったから、
おあいこだよ』と
言葉を挟んでストップをかける。
すると絵色女神が
黙りこんでしまった。
話を遮った事に怒ったのかな?
何か言うのかな?と思い
立花も黙っていると
『やっぱりベッドで話しましょう』
『お洋服を敷いても床は硬いです』
『立花さんを、こんな所に
寝かせる訳にはいきません』と
言って
立ち上がり、
自らベッドに寝転んで
『ポン、ポン』と布団を軽く叩き
ここに来なさい、と
無言のアピールをする。
言い出したら聞かないよな
しょうがなく
立花も立ち上がると
『今日は寝袋持参って
言わなかったっけ?』と
文句を言うと
『着替えの一式を
忘れてしまいました』と
舌をペロっと出して笑った。
彼女に促されるまま、
ベッドで向かい合う形で寝る2人
『また俺が暴走しても知らないぞ?』
脅し文句のつもりで
立花が言うと
『アタシは良いですよ』
『立花さんの気持ちの整理が
ついたなら』と
笑顔で答えてくる。
『ダメだろ、
女の子がそんな事言っちゃ』
立花がそう注意をするが
『立花さんが、
アタシにしたい事を全部して下さい』
『アタシは何も文句を言わないです』
彼女は立花の目を見つめて、
真剣だという事を伝えてきた。
立花の気持ちの整理まで考えて、
17才の少女は立花に全てを
委ねてきたのである。
『10才上のおじさんも
恋愛対象にしてくれるの?』
そんな立花の言葉に
『アタシは10才上でも
恋愛対象ですし』
『立花さんは、
おじさんじゃありません』と
向かい合っている立花の首に
自分の両手を絡めて伝えてきた。
『今の俺の心境は』
『ダイエット中の絶食3日目で、
目の前にラ-メンを
出されている気分だよ』と
ボヤくと
『アタシはラ-メンほど
美味しくないですよ』と
彼女が笑顔で返してくる。
『正直、今すぐ
飛びつきたい気持ちなんだけど、
我慢するよ』と立花が告げた。
『心の整理って話をしてくれて、
めちゃくちゃ嬉しかった』
『女神ちゃんのおかげで
俺も、人を好きになる事を
思い出してきたんだけど』
『でも次に好きになった人が、
また俺の目の前から消えたら、
もう立ち直れないと思うんだ』
立花がそう言った時に
『アタシは
絶対にいなくなりません』と、
彼女は言った。
だが立花は
『この前のLINEの
ID紛失事件の時みたいに、
連絡が取れなくなって
しまった時があったでしょ』
『女神ちゃんはアイドルだから、
恋人は厳禁じゃない?』
『芸能事務所が本気で
別れさせようとしたら、
どのくらい凄いか、
俺にも分かるよ』
『この前は電気屋から泣いて
帰ったけど』
『次、絵色女神と
連絡が取れなくなったら』
『権太坂の事務所と
ケンカするつもりくらいに
腹を決めないといけないよね?』
『女神ちゃんの誕生日までの
1ケ月、
俺に時間をくれないかな?』
とお願いをして
『1ケ月後に、
俺から告白をさせて下さい』
彼女の瞳を見つめ
頼んできたのである。
事の流れを黙って聞いていた
彼女は
『期待して良いんですか?』と
立花に尋ねた。
『さっき言ったみたいに、
今の俺には
絵色女神しか見えていない』
『事務所やファン、世間を敵にしても』
『君を守る覚悟をする時間が欲しい』
そう言われた彼女は
『クス』と笑い
『本当に不器用ですね』と
言ってきた。
男として誠心誠意を込めて、
宣言した立花は
彼女に思いが
届いていないと思い、
拍子抜けしていると
『ズルい男の人が世の中には、
いっぱい居るのは知っています』
『こんな小娘、ウソをつけば』
『いくらでも騙せるのに、』
『それを、しようともしない』
『本当に不器用だけど』
『アタシは、
そんな立花さんだから
好きになったんです』
そう言って彼女が
愛の告白をしてきた。
目の前で言われた立花は
照れながら
『女神ちゃんだから、
適当な事はしたくないんだよ』と
誤魔化すように言い訳をする。
立花にそう言われた彼女は
『最悪アイドルを
辞めるつもりはあります』と
不退転の決意を立花に宣言するが
『むしの良い話だけど』
『俺は女神ちゃんに
アイドルを続けて貰いたいし、
俺の側に居ても欲しい』
『バレないように、
このまま付き合いたいと
思っている』と
立花の思いを伝えた。
その話を聞いた彼女も
『出来るなら、アタシも
それが一番嬉しいんです』
『頑張ってバレないようにします』と
立花に誓ったのである。
『安心出来た?』
立花の問いかけに
『安心出来ました』と、
彼女が答えたので
『なら明日も、
仕事があるから寝ようか?』と
立花が就寝を促すが、
彼女からの返答はない。
『まだ何か?』
返事をしない彼女に立花が聞くと
『エッチは18才になってから、
しないと法律違反だって
言ってたじゃないですか?』
『キスも18才にならないと、
しちゃダメなんですか?』と
彼女が質問してきたのである。
『キスか?』
確かに、しても良い気もするし
ダメな気もする。
『そもそも、どうやって
警察は分かるんですか?』と、
更なる質問を被せてきて
立花を困らせた。
『ファンの人が嗅ぎつけて、
警察に通報するのかな?』と
立花が答えたが
『ここにはアタシと
立花さんしかいません』
彼女がそう言った後、
深夜のアパートに沈黙が流れた。
『今日の放送の出来が
100点だって、
褒めて貰いました』
『ご褒美が欲しいです』
絵色女神が、そう言って
おねだりをしてくる。
彼女が最初に
アパートに泊まった時も、
そうだった。
目の前には絵色女神の顔があり、
身体を動かせば唇に
触れそうな距離だ。
『チュッ』
立花が頭を浮かせて
彼女の唇を奪った。
すぐに立花は頭を戻したが、
突然の出来事に
彼女は目を見開いたままだ。
『俺が何をしても、
許されるんだろ?』
立花が、そう言ったが
彼女は何も言い返してこずに
固まったままである。
『女神ちゃん?』
立花に、再び
話しかけられて彼女が我に返り
『ファ-ストキスでした』と
呟いた。
『ゴメン、イヤだった?』
立花が、そう聞くと
『イヤじゃ、ありません』
『けど一瞬だったし、
急だったから覚えていません』と
感想を言ってきたので
『もう一回する?』と
立花が聞くと
『はい』と即答した。
改めて立花が頭を浮かせて
彼女の顔に自分の唇を近づけた。
その瞬間、
彼女が立花の後頭部を押さえて、
自分に押し付けるようにする。
唇と唇が接して、
お互いの体温を感じられるほど、
くっつけていた。
やがて立花が
頭にチカラを入れると、
彼女も後頭部を押さえていた
チカラを緩め、
2人は離れたのである。
ゆっくりと閉じていた目を
開いた彼女は
『ご褒美ですか?』と
立花に質問すると
『一回目は、ご褒美です』と
言った後、
ゴニョゴニョとクチごもったので
『2回目は?』と
彼女が聞くと
『2回目は、
俺がしたかったから』と
立花が照れながら答えた。
『3回目は
アタシがしたいです、と言った瞬間
彼女は自分の頭を浮かせて、
立花の唇を奪いに行く。
この日は結局、
5回目までキスは行われた。
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