第8話女神様再び

生まれ変わったように

丁寧な仕事をしている立花は

昼メシもそこそこで

作業に集中しており


その日は自分のスマホを

確認していなかった。


そもそも友人が少ない

立花なので、

メ-ルの類はほとんど来ない。


ゲ-ムをするか、

電車の移動中に

YahooNEWSを見るくらいだ。


自分の担当先で、

しっかりと保守点検を

こなして更にヘルプ対応を

しているので


疲労が重なり、

寝不足の影響もあって、

午後になると

後頭部が重くなってきた。


絵色女神の事を

忘れた訳ではなかったが、

疲労と睡眠不足の中で

考える余裕がなかったのである。


だが、そんな事とはつゆ知らず


スマホを握りしめたままの

彼女はLINEの返信が

来ない事にイライラしていた。


テレビ収録が終わった後の

新曲のレッスン場では

休憩になる度に確認するが

既読にならず


次のボイストレ-ニングに

向かう頃には

『完全に嫌われた』と

思い始めていた。


図々しかったかな?

だらしないと思われたかな?

めんどくさかったのかな?


午前中に打ったLINEがダメだった?


19時過ぎに

ボイストレ-ニングが、

終わった後もLINEは

既読になっていなかった。


それを確認した時に

彼女の足は自由が丘の

アパートに向かっていた。


直接会って、謝る。

嫌われていても、

お礼だけは言いたい。


その一心だけで

新宿から電車に乗りこむ。


立花は同じ頃に会社に

戻って来ていた。


通常の自分の担当先の他に

ヘルプ案件が結局2件も追加され


寝不足もたたり

疲労困憊となっている。


そんな状態だが女性上司の

藤波係長はえらくご機嫌で


『立花、オメガ商事さんも

ライガー産業さんも』


『すごい喜んで、

くださっていたよ』と

立花にねぎらいの言葉を

かけるのだが


彼にとっては、

どうでも良くなっていた。


もう寝たい、その一心だったので

『良かったです』


そう答えて自分のデスクに

崩れるように座った。


『今日のお礼に、奢らせて欲しい』と

言う藤波係長の、お誘いを


『ありがたいのですが』

『すいません、今日はムリです』と

丁重に断り


『帰って寝ます』と

帰り支度を始めていた。


『係長すいません、

家でナンシーが待っているんで』と

言う棚橋の


架空の外国人妻がいる設定の

ボケに突っ込む事もなく

会社を出て行く。


『ありゃ本当に弱っているな』と

言う棚橋の声は彼には

聞こえていなかっただろう。


通い慣れた通勤経路


帰巣本能だけで

自由が丘のアパートを

目指す立花であった。


フラフラとなりながらも

駅に到着して徒歩20分かけて、

ようやくアパートに着く。


家の前でポケットの中の

鍵を探すが、見つからない。


そこで絵色女神に

鍵を託していた事を思い出し、

集合ポストへ向かおうとした時に

自分の部屋に電気が

点いている事に気付いた。


吸い寄せられるように

自分の部屋に向かい

ドアに手をかけると

鍵はかかっておらず

抵抗無くドアは開いた。


『ガチャ』


ドアを開けて玄関に入ると


『立花さん』

部屋の中には先客がおり、

彼を呼んだのである。


誰あろう、絵色女神である。


彼に謝りたい一心で、

自由が丘のアパートに来た彼女は


部屋の電気が消えている事で

彼が、まだ帰っていない事を

認識して


朝出かける時に集合ポストに

入れた鍵を取り出して

家主の帰りを待っていたのである。


そんな事を知らない立花は

『女神ちゃん、

収録には行かなかったの?』と

彼女に質問すると


うつむきながら

『収録には行きました』と

ポツリと呟き返答する。


その小さな声を聞いて

『収録失敗しちゃった?』と

不安げに彼女に聞くと


『大成功したんです』

『だから、その事を

立花さんに1番早く

報告したかったのに』


『LINEに返信もくれないし』

『既読にもならなくて』と

彼女が説明している時に


立花は背広からスマホを

取り出して、

ようやく彼女からの

LINEに気付いた。


『ごめんねLINEに気付かなくて』

彼女のメッセージを読んで、

素直に謝っている立花を見て


『アタシ嫌われた訳じゃ

ないんですね?』と

涙を溜めながら聞くと


『え?誰に?』

『何で嫌われるの?』と

立花が不思議そうに

聞き返してきた。


『アタシ図々しく

押しかけちゃったし』


『迷惑ばっかり、

かけちゃったから』


『避けられているかも?って』

『一日、

そればっかり考えていて』と

不安に押し潰されそうだった

今日を説明すると


『本当にごめんね』と謝り

深々と頭を下げた。


その姿を見た彼女は

『もう、良いんです』


『アタシが勝手に

暴走してただけなんで』と

立花に走って近づき、

頭を上げるように促した。


それを受けて

『女神ちゃんを嫌うなんて、

有り得ないよ』


『お礼を言わなきゃ、

いけないのは俺の方だから』と

立花が言うと


『え?アタシに感謝?』と

彼女が不思議そうな顔をしてきた。


そう聞かれた立花は

今日の会社での出来事を

説明し始めた。


見えていたのに

見えないフリをして、

余計な仕事から

逃げていた自分が


芸能界で何とか

頑張ろうとしている

年下のアイドルの熱心さと、

真面目さに影響を受けて


自分に与えられた仕事に

真正面から頑張って

行こうとする

キッカケを与えてくれた。


『嫌な事から逃げない人間に

ならなくちゃと

女神ちゃんが教えてくれたんだ』


『だから俺の方こそ、

女神ちゃんにお礼が

言いたかったんだ』


『でも、女神ちゃんとは

昨日レクチャーしただけで』


『俺からはもう連絡しちゃ、

いけないと思っていたんだ』と

自分の考えていた事を伝えると


それを聞いていた彼女の頬に

涙が流れて

『そんな事を言って貰えて

嬉しいです』

『人に感謝された事も初めてで』


『それが立花さんだなんて

光栄です』と

涙声で答えた。


お互いにインスパイアされ、

成長した事が嬉しくなった

立花は一瞬で眠気が飛んで


『俺も部屋に入って良いかな?』と

自分の家なのに、

彼女にお伺いを立てると


『アタシこそ、

勝手に上がっちゃっていて、

すいません』と謝り


それを聞いた立花が笑う、

和気あいあいの雰囲気と

なっていった。


『女神ちゃん晩御飯は?』

いつも食事が、

まだのイメージがあるのか?


彼女に、そんな質問をすると

恥ずかしそうに

『まだです』と答えたのを聞いて


『デリバリーを頼もうか?』と

提案する。


ガストにデリバリーを頼み、

商品が届くまでの時間に立花は


『収録が大成功だったって

言ってたけど、

教えてくれる?』と聞くと


彼女は嬉しそうに、

ネットゲ-ムを

紹介するコ-ナ-が

凄く盛り上がったし


対戦でも勝てた事を報告した。


しかし彼女は、

この時に大事な事をはしょった。


それが後に大騒動になる事を

2人はまだ知らない。


『ディレクターさんが、

盛り上がったし』


『好評だったら

次回もあるかもよ?って

言ってくれたので』


『これからも色々と

教えてくださいね?』と

可愛く頼み


『も、もちろんです』と

立花が焦りながら答える。


ヤッタ〜、

まだ切られてないから連絡が出来る

声に出せない立花の喜びの声だ。


立花に今後も教えて貰える

了解を貰った彼女が


『アタシも聞きたかった事が

あるんです』と言い始めた。


『俺に?何?』

そう立花が答えると


『立花さんって、昨日って

寝てないですよね?』と

確認をしてくる。


『よく知ってるね』

『もう40時間くらい起きているね』と

答えた後に


まわらない頭でも

気づいた事があった。


彼女は自分が

出勤して行く時には

熟睡していたはずだ。


何故、俺が寝てない事を

知っている?


『40時間も寝てないなんて凄い』と

ビックリしている彼女に


『何で俺が寝てないって

知っているの?』と

素朴な質問をすると


『携帯で録画をしていました』と

真顔で答えてくる。


『録画していたんだ』

『録画?』

声が裏返って聞いてしまう。


『はい、初めて会う

男の人の家なんで』


『念の為にベッドに入った時から、

録画をしていました』と

何の罪悪感もなく説明をしてきた。


それを聞いて立花が背筋を伸ばす。


『今は録画してませんから

安心して下さい』


『立花さんが素敵な人だ、って

分かりましたから』


『もう録画はしないです』と

笑顔で彼女は説明を

してきたが立花は

素直に喜べない。


可愛い寝顔を至近距離で見て、

何度もキスをしたい衝動に

かられていた。


結果、キスはしていないが

寝顔を盗み見した事は

バレている筈だ。


『アタシ無防備でした?』


そう聞かれた時、立花は爆死した。


やっぱり聞かれていたじゃん!

この場で殺してくれ!


声に出せない叫びを

出したかった時に彼女が


『今日、立花さんと

連絡が取れなかった時』

『その動画を何回も見ていました』


『収録の直前の1

番緊張していた時も』


『立花さんに

褒めて貰えるように、

動画を見てから

本番に望んだんです』


『この動画はアタシの

お守りになりました』と

嬉しそうに報告する姿を見て


ドン引かれてない?

気持ち悪がられていない?


むしろ好感触では?とも

思い始めた立花がいる。


だが人生の汚点なので

何とか動画の消去を彼女に頼んだが、

『永久保存にします』と言って


頑なに消す事を拒否されて、

彼女のスマホに動画は

残ってしまった。


立花が意気消沈していた時に

ガストのデリバリーが届いた。


20時過ぎの2人のディナー、

食事と会話の楽しい、ひととき


彼女が新曲の踊りを

一発で覚えた自慢を

していた時に

立花がある事を思い出した。


『そう言えば、女神ちゃん』


『マンションの件、

どうなった?』と聞くと


彼女の食べている箸が止まり

『マネージャーさんに言うの

忘れていた』と

茫然自失で呟く。


スト-カ-に住んでいる

マンションをつきとめられた

彼女は絶賛家出中だったので

昨晩はこのアパートに

泊まったのだが、


マネージャーさんに

報告していないって事は

今も家出状態な訳だった。


『女神ちゃん、

今日の泊まる場所は

決まっているの?』

恐る恐る立花が聞くと


『ここを出たら

渋谷のネットカフェに

行くつもりです』


『危ない人や

強そうな人ばかりで

怖いけど、

行く所がないから』と


幸薄そうな少女が

身の上話をするように呟く。


これじゃ半分、脅迫だろ?

そう思った立花だが


『今日は泊まっていいから』

『明日はマネージャーさんに、

言ってね?』と

宿泊を承諾すると


『ヤッタ〜、

立花さん優しいから大好き』と

満面の笑みで喜び、

さっきまでの話が

ポ-ズだとバレバレになる。


そんな彼女の姿を見ていた立花は


その内、自分のコップとか

置いていくんじゃないか?と

冗談半分に考えていたが、

それは後に真実になる。


宿泊予約が取れた彼女は

ご機嫌となり、

食べ終わった後の

デリバリー弁当を片付け始めた。


現役アイドルが家事をする姿


絵色女神が奥さんになったら、

こんな光景を毎日見られるのか、

そんな妄想しながら


床に座っていた立花は

ベッドを背もたれにする形で

もたれ掛かった。


その、すぐ横に

片付けを終えた彼女が

ちょこんと並んで座る。


『一日お疲れ様でした』

立花が彼女に一日の働きを労うと


『立花さんこそ、

疲れたんじゃないですか』と

聞き返すが、

立花が返事をしてこない。


『立花さん?』


彼女が再度聞き返すが

返事が返ってこない。


おかしいと思った彼女が

身体の向きを変えて

真正面から立花を見ると

座ったまま寝ていたのだった。


極度の睡眠不足の状態で

ガストの唐揚げ弁当を

食べて満腹となり


気絶に近い状態で

落ちてしまったのである。


その寝顔を見て微笑んだ彼女は

『無防備過ぎですよ』と言って

スマホで寝顔を撮影していた。


『ゆっくり休んでください』


彼女の声など聞こえない彼は

いびきをかいて

爆睡している状態だ。



それから2時間が過ぎた頃

『パシャ、パシャ』と言う

水が流れる音で立花が目覚めた。


寝起きで朦朧としていたが

今までの状況は覚えている。


アパートに帰って来て

絵色女神とご飯を食べて、

だが、そこから先が思い出せない。


『ジャバ、ジャバ』

『ピチャ、ピチャ』


さっきから誰かが

シャワーを浴びている音が

聞こえてくる。


あれ?


女神ちゃんは?


もしかしてシャワーを浴びている?


この部屋は一般な家庭にある

浴室前にある洗面脱衣所が無い。


立花の3mほど前の

キッチンスペースが

洗面脱衣スペースだ。


現役アイドルの全裸を

見てしまう。


部屋から出るか?


いや、見たい。


でも見たら、

一発で軽蔑をされて

2度と、あの笑顔は

見れないだろう?


やはり自分が

アパートから出るべきだ。


そう決心した時に

シャワーの音が止まり


『ガチャ』っと

ユニットバスが開く音がした。


そして、すぐに

『ピタッ、ピタッ』と

濡れた足で歩く音が聞こえる。


『まだ、寝ている』

彼女の声が聞こえた時、

立花は目を閉じて

寝たフリをしていた。


濡れた全身をバスタオルで

拭く音だけが狭いアパートで

聞こえている。


見て〜


男の本能が叫び声を上げるが、

バレたら全てが終わってしまう。


彼女の信頼を裏切っちゃいけない。


心の中の天使と悪魔の戦いが

再び勃発していたが

天使がなんとか勝ち

欲望を抑え込むことに成功した。


それから下着を

着けるような音が聞こえ、

部屋が静かになった。


着替えが終わって、

コッチに来るのかな?


目隠しの状態は、

時間経過が分かりづらい


後は、どのタイミングで

起きた事にするか、

それを考えていたが

彼女は近づいて来ない。


薄目を開けて、様子を伺おう


そう考えて薄目を開けると

肌色が目に飛び込んで来た。


一瞬で目を閉じたが

ピンクのブラジャーと

パンツはしっかりと

目に焼き付いた。


着替えは途中の状態で

風呂上がりのク-ルダウンの

最中だったのだ。


心臓の鼓動が早くなり

彼女に聞かれてしまうのでは?と

錯覚してしまう。


やがて彼女Tシャツに

ホットパンツを履いて、

こちらに近付いてきた。


『立花さん、風邪ひきますよ』

彼女が優しく声を掛けてきたので


起きるなら、ここがチャンスだと

『う〜ん?』と、

わざとらしい声を出して


『俺って寝てた?』と

彼女に聞くと


『大きないびきをかいて

2時間くらい寝ていましたよ』と

微笑みながら言ってきた。


『そんなに寝ていたんだ』

『女神ちゃんを

ほっといて寝てゴメンね』と

立花が言うと


『アタシこそ勝手に

シャワーを浴びさせて

貰ってました』と


ミニスカートと同じくらい

生足が見えるホットパンツと

Tシャツ姿の彼女が答える。


『俺もシャワーを浴びるかな』


目の前の美少女の下着姿を

見てしまった心臓の

バコバコ音を

聞かれたくない一心で、

この場から逃げたい。


『そうして下さい』

『アタシ待っていますから』


彼女が優しく

送りだしてくれたので


急いで着替えを

引っ張り出し

浴室へ向かう事にするが


フロ-リングの床に

座っている彼女を見て


『直に床に座っていると、

お尻が痛くなるから』


『良かったらベッドで

楽にしてたら?』と

提案すると


『ありがとうございます、

そうさせて貰います』と

彼女は返事をした。


逃げ込むように

ユニットバスに入った立花は

一心不乱に水シャワーを浴びる。


それは山奥の大きな滝で

滝行をしている修験道のようだ。


荒ぶる神を沈めて身体を

洗い始める立花だったが、

下着姿の彼女を見てしまった後で


今晩、どうやって寝るか?を

考えていた。


昨晩のように

小さい前ならえ状態で

寝ていたら、

絶対に抱きしめてしまう。


一晩中、寝ないのは

翌日の仕事に支障をきたす。


自分が外に行く?

かえって彼女に気を使わせる。


床に洋服を敷き詰めて

寝るのがベストだろ?


少ない選択肢の悩みが

解消して、浴室を出る。


立花はキッチン前で着替えると

丸出しチャンピオン姿を

17才の女の子に見せてしまうので


着替えをユニットバス内に

持ち込んでいた。


上下スエットに着替えた立花が

部屋に戻ると、


スマホを見たままチカラ尽きたように

ほふく前進のような姿で

絵色女神は寝ていた。


少し濡れた髪を一本に縛り、

小さな寝息を立てている。


『慣れない環境だから

疲れるよな?』


そう言って彼女に

タオルケットをかけた。


時間は12時、

さっき少し寝たので

寝不足の頭の痛みは消えている。


床で寝る事を決めていた立花は

彼女を起こさない為に

音を立てないように注意して、

自分の服を床に敷き詰めた。


そして冷蔵庫に向かい

冷やしておいた発泡酒の缶を

持って、

洋服を敷き詰めた床に

うつ伏せ状態で寝て、

スマホを眺め始める。


毎日エクシブハンターに

顔を出すのが日課と

なっていたので、

ログインしないとスッキリしない。


この時間だとチ-ムの

メンバーは誰も参加していないが、

とりあえずワンミッションは

クリアしておこう。


そう考えながら1時間が過ぎて

発泡酒の500ml缶を2本を

開けた頃には

酔いがまわり始めてきた。


酔いと眠気に負けた彼は

エクシブハンターを終了して

寝る事にする。


立花は部屋の電気を消して、

床で眠り始めた。


静かな自由が丘のボロアパートに

異変が起きたのは、

それから2時間後の午前3時だった。


強烈な睡魔で熟睡していた

立花だが、

発泡酒を1Lも飲んだので

オシッコがしたくなり

トイレへと向かう。


寝ぼけていた立花は

人間の習性でトイレが終わった後、

いつものようにベッドに

戻ってしまったのである。


狭いベッドに違和感を覚えたが

睡魔が勝って、

特に気にする事もなく

寝てしまう彼だった。


そこから2時間経った

明け方5時頃


『立花さん、立花さん』

『起きてください』

遠くで自分を呼ぶ声が聞こえた。


心地良い睡魔の沼の中、

手の中の柔らかい感触が

気持ち良くて、

まだ起きれない


『立花さん、ごめんなさい』

今度は身体の下が

モゾモゾと動く感触


だが柔らかい感触からは

手が離せない。


『立花さん、お願いです』

『本当に困ります』


絵色女神の声だ、


すごく柔らかい感触は何だ?


ここで立花は目覚めた。


モミモミ


絵色女神の太もも辺りを

抱き枕のように自分の足で挟み込み、


後ろから鷲づかみで

彼女の胸を揉んでいたのである。


『立花さん、困ります』


関節技を決められて

身動きが取れない状態の彼女が

逃げ出そうとしていた。


立花がビックリして

ベッドから飛び出す


やばい、アイドルのオッパイを

触ってしまった。


その犯罪行為はベッドの上で

崩れた正座姿だが、

目線を立花と合わせない

彼女の姿で一目瞭然だ。


何故、自分はベッドに寝ている?


一緒のベッドで寝たら、

抱きしめたくなると困るから、

わざわざ床に寝たハズなのに、


気がつくと同じベッドで寝ており

しかもオッパイを揉みしだいていた?


状況が理解出来ないが、まずは謝ろう

『女神ちゃんゴメン』


『謝って済む問題じゃないよね』

そう言って彼女に土下座をした。


『こんな事にならないように、

昨日は床に寝たんです』


『こんな言い訳、聞きたくないよね』

『本当にごめんなさい』

改めて土下座をする立花に


『もう大丈夫です』

『ちょっと

ビックリしちゃっただけです』と

立花の方を見て喋り始めた。


犯罪者の3文字が重く、

のし掛かる立花に


『わざとじゃないのは

分かっているんで大丈夫です』と

優しく語りだす彼女


その態度に驚いている立花に

『アタシが、もっと早く声を

掛ければ良かったんです』と

説明をしだした。


彼女は立花が夜中にトイレに

起きた後にベッドに

戻って来てからの

一部始終を知っていたのだ。


立花さんトイレかな?


夜中3時だ


戻って来た


え?ベッドに入ってきた


でも、昨日もそうしていたし


あれ?もう寝ちゃった?


『そしてアタシも、

そのまま眠ったんですけど』


『立花さんが寝ぼけて

アタシに抱きついてきて

20分くらい前にアタシも

目が覚めたんです』


『立花さん、いびきを

かいていて可愛いから』


『アタシがほっぺを

プニプニして遊んでいたら』


『アタシの身体を立花さんが

股の間に挟み出したと

思ったら、胸を...』と

言いかけて黙ってしまった。


『寝ぼけていても

好きでもない男に胸を

触られてイヤだったでしょ?』


『気が済むまで叩いて』


事情を聞いたが、

自分のした事に

納得出来ない立花が、

そう申し出ると


『アタシも本当に

イヤな人が触ってきたら、

すぐに叩きます』


『立花さんが寝ぼけて

抱き締めてきた時に、

アタシ喜んじゃっていました』


『ほっぺプニプニも、

しちゃいましたし』


『おあいこです』

そう言って立花の悪行を

不問にしてくれたのである。


『本当に許してくれるの?』

恐る恐る立花がきくと


『女に二言はありません』と

胸を張って答え、

その件は一件落着となった。


彼女に許してもらった途端に

心の中で安堵感が大きくなると


『揉んでいた時の

記憶が残っていねぇ〜』と

歯ぎしりをしそうに悔しがる立花


『どうしよう』

『ファ-ストキスの前に、

胸を触られちゃった』と

ドキドキしている絵色女神


ハプニング続きの2回目の

お泊まりは

意図しない方向で

2人の距離を縮めたのであった。

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