第三章 - 終末

第001話 生誕

—— それが生まれた場所は、酷く狭い場所だった。


 身動きを取るような場所もなく、小さな割れ目の向こう側も薄暗い。

 もっとも、身動きするような身体も、明かりを必要とする目も持ち合わせていなかったが。


—— それはスライムだった。


 洞窟の何処かで踏み潰されたスライムが居た。

 そして幾何いくばくかの時間が経ち、代わりに再出現し生まれただけの、何の変哲もないただのスライム。


 洞窟の中を彷徨い、次に調査依頼を受けた冒険者が来るまで生きていれば上出来。

 本来ならその程度の存在だったは、彷徨うことすら許されなかった。


 少年の振るった剣が地面を砕き、人の目から隠されたその破片の下に再出現し生まれてしまった。

 そして、そこから這い出る前にダンジョンが修復され閉じ込められた。

 修復の際に挟まっていた液体からだのお陰で、辛うじて小さな割れ目が出来たが、コアが引っ掛かり出ることは到底叶いそうにない。


—— 運が悪かった。


 それを理解する知能を持ち合わせていなかったことは幸せだったのかもしれない。

 勿論、そう思うことも、理解することもない出来ないのだが。


 誰に気付かれることもなく、ただそこにある。


—— その日からは、そういうモノになった。


——————————

Tips:魔素の許容量

 一度に取り込める量、濃度には個々人による差がある。魔素が馴染んでいない新人が上級ダンジョンに入ったとしても、その濃い魔素が身体に吸収されることはない。過信した冒険者が試そうと上位のダンジョンに向かい、そのまま姿を消すのは酒場では鉄板のネタ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る