第002話 洞窟
「しっかし、聞いてはいたけど不思議だよな」
「本当に、松明も無いのにちゃんと見えるんだもの。どういう仕組みなのかしら」
「その辺は王都の偉い学者様が研究しても分からないって話だし、僕らが考えて仕方ないって。それより天井にスライムが張りついてないか、ちゃんと気を付けてよ」
四人は洞窟型ダンジョンを、ガキ大将を先頭に進んでいた。
「まぁ初級ダンジョンだし、ここはスライム滅多に出ないって話だから大丈夫だろ」
「もう、そういう油断が怖いんだってば…って言うか、君は後ろの警戒を忘れないでよ。確かに分かれ道とかは無かったけどさ」
「なぁに、スライムくらい俺様とこの斧に掛かれば(パシャン) ——— あん?」
何の音かと足元に目をやると、水たまりのようなものが広がっていくところだった。それを見たガキ大将は良い笑顔を浮かべ...
「 ―― な、余裕だったろ?」
「はぁ…気付かずに踏み潰しただけじゃない」
「あーっ!夢にまで見た初戦闘が!俺の活躍の場が!!」
「いや、これ戦闘って言わないでしょ...。それにしても、滅多にいないって聞いてたのにね。この先はもっと注意して進もうか」
そうして洞窟を進み、ゴブリン一匹と遭遇。まずはガキ大将が。次の遭遇では剣士の少年が危なげなく討伐した。
「おぉ、こいつ魔石落としたぞ。これが日頃の行いってやつか!」
「魔石があるってことは、今のやつ結構魔素を吸収してたんだね。その分強いわけで、どっちかと言うと運が悪いんじゃ」
「倒した本人が喜んでるんだし、そっとしといてあげたら?」
さらに進み、次の遭遇では魔法使いの少女の ――
「燃えろ!!」
…その一言と共にゴブリンは炎と舞い踊り、そして倒れた。
「何回聞いてもそれ、慣れねぇな。もっと良い感じの詠唱考えねぇ?」
「うっさい!ずっとこれで練習してたから一番やり易いのよ!」
「ずーっと手に持った木の枝に向かって燃えろ、燃えろ…って言ってたもんな」
「火の玉を飛ばすより、直接燃やす方が難しそうなんだけどね。それより、大声で魔物が寄ってくるかもしれない、もう少し小さくね」
そこからも分かれ道は無く、遭遇するゴブリンも一~二匹ずつだったため、ガキ大将と剣士の二人が対処。追加で魔石を一個拾いながら進んで行くと、少しだけ広がった場所に出た。
「ここで少し休憩しよう。二人の連携も良い感じだけど、どう?今のうちに何か気になることとかない?」
「んー、連携は問題ない。でもなんか、斧が軽くなった…ような気がする」
「もう最適化が始まったの!?凄いじゃない!」
「最適化って、実際どんな感じなんだ?俺はまだっぽいし、爺ちゃんに話は聞いてるけどイマイチよく分かんねーんだよ」
「そうだね、僕もまだだから調べたことになるけど...」
—— 最適化
体内に取り込んだ魔素が身体を強化する作用。重い武器や盾を使うなら腕力が。魔法を使うなら魔力の操作量や貯蔵量と言うように、個々人に応じた最適化がされる。そして人だけでなく、魔物にも作用する。
「…こんな感じだね。それと、最適化に使われなかった魔素が集まったのが魔石なんじゃないかって言われてる」
「つまり、ずっと斧を使ってたから腕力が上がったってことで良いのか?」
「ちくしょー、俺もあとちょっとだと思うんだけどなぁ」
「言っても仕方ないでしょ、それに帰りもあるんだから」
「それもそっか。んじゃ、十分休んだしそろそろ行こうぜ!」
—— そう言って四人は立ち上がり、洞窟の奥へと歩みを進めた。
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Tips:魔石
魔物は討伐された際に身体を構成する魔素の何割かを放出し、その魔素は近くにいるモノに吸収される。魔石はその際に過剰な魔素が結晶化した物で、勘違いされることが多いが体内に存在しているわけではない。主にエネルギー資源として活用されている。
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