第200話 主人公➄(リリス視点)
遂に200話到達!
―――
「ねえ、アレックス君。どうして私なんかを庇うの?」
アレックス君が一人になるの見計らって、問いかける。
小さな部屋に連れ込んでいるため、周囲には誰もいない。
「・・・・・・。リリス、お願いだから俺と関わらないでくれ!でないと、君が危ない」
その口から出たのは拒否の言葉だった。
でも、ここで引いては駄目。
「私のせいでマリーアと付き合ったの?私のせいで苦しい思いをしているの?」
私の問いに無言を貫くアレックス君。
それは肯定と同じなのだろう。
「私の秘密がバラされるから?私が酷いいじめに合うから?」
どうしてそれを?といった感じで彼は目を見開く。
「ハンネス君とフレッド君に教えてもらったの」
「あいつら、いらぬお節介を!」
「友達だから、私に話してくれたんだよ」
最近は常に暗い表情をするアレックス君。
そんなのアレックス君じゃない。
彼はもっと明るく、そして少し悲しそうで、でも正義感が強い人よ。
[これは相当心にダメージを負っているな。何かあったのだろう]
クロがボソリと呟く。
私には皇子様の悩みなんてわからない。
でも、目の前の悩みなら振り払ってあげられる。
一人の友人として。
「アレックス君、何で私に相談してくれなかったの?私達、友達でしょ?」
「そう、だけど」
歯切れの悪い返しをする。
「私は元貴族の平民で、魔法も使えない精霊術士かもしれない。でも、友達を助けるぐらいの力と心はあるわよ!」
俯くアレックス君は、ポツポツ言葉を繋ぐ。
「俺にとって、君は新鮮だったんだよ。皇族だからといって媚びず、第三皇子だからと下に見ない。不思議な人だったんだ」
私は気まずさを感じながらも耳を傾ける。
「僕は陛下から見放され、母からは過度な期待を受け、周りからは蔑まれて生きてきた。だから、君という存在は嬉しかったのだ」
ニッコリと笑うアレックス君。
「初めての友達だったと思う。だからこそ、この関係が続けけばいいと持っていた。でも、俺は皇子だ。どう足掻いても皇子だ」
今度は苦々しい顔に変わる。
「だから、君と仲良くすることに躊躇もあった。もし、俺のせいで君に兄上たちの手が伸びたらどうなってしまうのか」
私は皇族の苦しみを理解することはできない。
彼と私では生きてきた世界が違いすぎるのだから。
「迷惑をかけたくない。その一心だった。だから、君が隠していることがバレるのが怖かったんだ。バレてしまえば、兄上たちの手が伸びてくるのだから」
[まあ、確かにこの時代では精霊術士は稀有な存在。切り札として持とうとする輩がいるかもしれないな]
クロの言葉に私も納得する。
でも、それでも私を庇う理由にはならない。
「だから、守るために必死で!」
「ねえ、アレックス君。食いしばって」
「え!?」
バチッン
乾いた音が部屋に響く。
私の手がアレックス君の頬を叩いたのだ。
「私達は友達でしょ!だったら、遠慮しないでよ!」
確かに私とアレックス君には身分という大きな壁があるかもしれない。
でも、そんなの関係ない。
「アレックス君が私を友達って思ってくれているなら、私達は同格だよ。身分の違いなんて関係ないよ!私のためにわざわざ苦しまなくていい」
私は顔を真っ赤にしながら、言葉を続ける。
「そもそも、私の秘密は私の問題!他人に心配される筋合いはありません!」
[めちゃくちゃ言うわね。相手は一応皇子よ]
今はそんなの関係ない!
「アレックス君はマリーアと付き合いたいの?これからも誰かに支配されたいの?苦しんで生きていきたいの?」
「それは・・・嫌だ」
強い眼差しでこちらを見てくる。
少し、いつもの彼に戻った。
「私の問題は私が解決する。だから、これ以上私のために苦しまないで!」
これ以上大事なものを失いたくない。
これ以上周りに迷惑をかけたくない。
だからこそ、この問題を自分で解決する。
私はアレックス君の手を引きながら部屋を出る。
そして談笑しているマリーアのところへと行き、正面から妹を見つめる。
「あら、私の彼氏と何をしていた―――」
「マリーア。元姉としてこれ以上好き勝手させないわ」
そう言って私はポケットからハンカチを出して投げつける。
こちらを睨みながら不思議そうにハンカチを取るマリーアは、途中で自分のしたことに気付いた。
「そのハンカチを取ったわね。それじゃあ決闘よ、マリーア」
―――
4章終
次が留学編最終章です!
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