第196話 作戦
「クソ、あの叔父は一体何がしたいんだ?僕の敵に回ってまですることか?」
謎の支援者(叔父)との話し合いが終わった僕。
何故か今は叔父から当主になるための試験を受けさせられている。
「オルド様はああいうお方ですよ。どこかおちゃらけていて、末っ子らしく自由人で、ラノルド様も昔はかなり手を焼いておられました。でも、まあ、今はだいぶオルド様も丸くなられましたが」
そう言われても可愛い甥っ子だろ、一応?
今の僕からしたら、ただのうざいオッサンにしか見えない。
と言うか、まさかあのアッセンバルド家に婿養子として入っていたのかよ!
そこも驚きだ。
ちなみにブルボン商会の管理を任せられているアッセンバルト家は、一応ブルボン家の分家。
四代ぐらい前に分かれたらしい。
ブルボン家の分家ってどれぐらいいるんだ?とセバスに聞いてみると、五十ぐらい、と返された。
公爵邸で働いている使用人はほとんど分家の出身者で、セバス自身もそうらしい。
あのオールドも四代前に分かれた、アッセンバルド家とはまた別の分家出身者らしい。
聞いた話だと、ブルボン家を支える御三家と呼ばれる分家が存在する。
お金を管理するアッセンバルド家、裏を守るセバスのサンソン家、表を守るオールドのテンプル家。
更にブルボン準十家と呼ばれる家もあるらしいが、まあそれは今はいい。
「ブルボン公爵家、僕ですら分かっていない繋がりがあったとはな」
「まあ、仕方がありません。執事の私ですらブルボン公爵家の全体像を理解するのに一年はかかりましたから」
「でも、次代の当主としては、やはり不甲斐ないと言わざるを得ない。反省するべきことだ」
「「「?!?!?!?!?!?!」」」
僕の言葉に何故か目を点にする、アルスとレーナ、セバス、そしてテラ。
「あのルイ兄様が反省を!」
「これは明日空から何か降ってくるかも」
「いや、悪魔が宿られたのかも!」
「世界、終わる?」
口々に人を馬鹿にするようなことを言い出す。
「おい!お前ら、殺すぞ」
本気で今回は殺るぞ!!!
「それより、ルイ兄様。どう対抗されるおつもりですか?」
聖級魔法を唱えようとした僕に、先手を打つように本題をぶっ込むアルス。
チッ。
「作戦についと言う前に、相手のことをまだよく知らないからな。セバス、教えてくれ」
僕はセバスに視線を向ける。
スッと背筋を伸ばすとセバスは答える。
「さほど有益な情報は持っていませんが、オルド様の性格はお伝えできます」
まあ、それだけでも大きな情報だ。
「オルド様は掴みにくいお方です」
「掴みにくい?」
「ええ、何をしでかすかわからない。怖い存在です」
なるほど、思考がよく読み取れない人物か。
「今回の件も急にあの方が始めたこと。私は何も知らされておりませんでした」
中々面倒くさい叔父だな。
「ただ、その実力は確かです」
「実力?何のだ?」
「策略です」
策略だったらこっちも負けてはいない。
「軍略は無い方なのですが、そういった日常的な策略は得意なのです」
そう言って例を出してくる。
一つ目が、喧嘩を売ってきた大商会を一銭も使わず二日で潰した。
二つ目が初陣のときに、出陣せずに相手の兵糧を金の力で尽きさせて撤退させたり。
「つまり、机の上だけで全てを終わらせられる方なのです」
「本当に軍略が無いのかよ?」
「ええ、学園でも最下位の成績でした。戦争を好まない方ですし」
人となりが全く掴めない。
「あの方はブルボン家の中でも少し浮いてる人です。と言うより、ラノルド様以外の兄弟方は変わり者揃いです」
まとも枠が父なのか。
「じゃあ、まあ分かった。どうせ他に有益なものは無いだろう?さて、この選挙どう勝つか・・・」
ターダス地区での選挙の投票は一週間後に迫っている。
中間発表では、五割向こう四割こちらと言ったところ。
まだ一割の差がある。
これを覆すために何とか策を練らなければならない。
ただ、話を聞く限り一筋縄ではいかない相手。
普通にやっても勝てるとは思えない。
おそらく叔父もそういうところを試しているのだろう。
票を買う?いや、叔父に証拠を掴まれる恐れがある。
妨害をする?だとしても意味はないと思う。
こちらの候補者にカリスマ性はない普通のやつだ。
まずもってどうやってあそこまで伸ばしたのかが分からない。
最初はマルク支持は一割程度だったのに。
知りたいが、今から調査しても間に合わない。
普通の考え方だったら勝てないのだろう。
だから・・・あれしかないな。
前世のあれならワンちゃんあるかもしれない。
僕は念の為にセバスを下がらせて、アルスたちに作戦を伝える。
「どのような作戦でしょうか?」
「ずばり、候補者交換作戦だよ」
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