第110話 主人公⑪ (リリス視点)
[では妾のスキルの説明ね!妾のスキルは初級は一つだけ]
「初級?それよりも上があるの?」
私が首を傾げると、驚いたようにフィーンが聞いてくる。
[え!そこから説明しないとダメ?貴方のスキルは全て初級でしょ]
その言葉で私は忘れていたことを思い出した。
初めてクロからスキルを聞いた時、確かに”初級”と言っていた。
後ろで、私たちを見守っていたクロに聞く。
「ねえ、クロ。初級以上って、何で私に教えてくれないの?」
私の疑問にクロは申し訳なさそうに答える。
[別に隠すつもりはないんだが、まだリリスには早いと思ってね]
「どうして?」
[使うのが難しいからだよ。まず、今の三つのスキルを完璧に習得して、他のスキルも更に扱えるようになったら教えるよ]
「絶対だよ!」
私は念押しする。
[二人の話は終わった?じゃあ、説明を始めるよ]
フィーンが説明をしだす。
フィーンのスキル、【ウォーバー】
技はシンプル。精霊術で水の刃を作り出す。
大きさ、形、速さを全て自分で調節できる。
所謂、普通の水魔法ね。・・・そう言うと絶対怒られるけど。
でも、もの凄く便利で、刃の硬さも変えられる。
[少し打ってみようか]
そう言われて私は周囲を見渡す。
ちょうど隅の方に魔法を放てる的を見つける。
私はそこに向かって全意識を向ける。
少し大きめの剣で、硬めの刃をイメージ。
私は一呼吸を入れて生成する。
「あれ?イメージより少し小さい」
[最初はそんなもんだよ]
私は思ったよりも小さかった刃を放つ。
ポシャッ
的に当たって水が弾ける音が出る。
「う〜〜ん。剣にしては、柔らかかったか」
もう少し乾いた音がすると思ったけど、無理だったか。
水だけに、この件(剣)水に流していいですか?
[[[面白くも上手くもない!!!]]]
私の心を聞ける三体は総ツッコミをする。
私は落ち込みながらも分析をする。
反省点は、やはりイメージの足りなさかな?
硬い水は中々想像しづらいし、水の刃自体も見たことがない。
これは練習がいる。
[あ、あの〜、ぼ、ぼくのスキルについても説明していたいですから]
「あ、タルルのスキルね」
[はい。ぼくのスキルは二つあるんだ]
次にタルルが説明をしだす。
タルルの雷スキルは【ライトニング】と【エレク】
【ライトニング】はかなり強力な術で、光を操るのだそうだ。なんでも空気中にある電気の素?みたいなのを調整することで光を遮断、またはより強く輝かせるらしい。
目くらましに使えるだけでなく、相手の視野も奪うことができる。
【エレク】は雷の術らしい、上空から稲妻を落とす。
魔法界において雷魔法は、治癒魔法と同じで稀有な存在。
ただ、ほとんどの人が扱えずに暴走するため、”死の魔法”とも呼ばれている。
「ねえ、タルル。稲妻が人に直撃したらどうなるの?」
私は恐る恐る聞く。
[死んでしまうと言いたいけど、実際はそうもいかないんだ]
???
[まず、そんなに高出力で扱うことが不可能なんだよ。説明しようと思ったけど、電気を作るにはさっき言った空気中にある電気を起こす物体を移動させる必要がある。ただ、その素は元々他のモノとくっついているから、無理やり移動させなければならない。それに大きな力を使ってしまうんだよ]
?????全く理解できない。
[簡単に言うと、作り出すのがまず難しいの。だから作り出せる電気の量も一回で人を気絶させるぐらいだと思う。リリスの場合は、妾の経験だと、今の段階で人を痺れさせる程度かな]
フィーンが代わりにまとめてくれる。
「つまり、作るのが難しい=イメージが難しいということ?」
[まぁ、そういうこと]
そうなんだ、でも、
「何でそれで五属性なの?」
私は率直な質問をする。
雷以外の他の四属性はイメージがしやすい気がする。何しろ身近ではあるから。
でも、雷だったり、とくに電気と呼ばれるモノは文字や話では知ってはいても、目にしたことも、触れたことも、感じたこともない。
(そもそも、この世界の基本的な動力源は魔力だから、電気というのはあくまで魔法の中にある)
[鋭い質問だね。でも、それは単純な答え。正解は、強いから]
「強いから?」
確かに強そうではあるが、高出力が出せなければあまり意味がないような・・・
[初級以上を知ったら実感すると思う。何より、光も操ることができるんだ!満天の星にウィンクさせることだって朝飯前なんだよ。とにかく、僕も姉さんに負けないぐらい強いから!]
そうか、光を操れるのは魔法にもない。それに、これから強くなるということか。
それまでは初級の練習だね。
―――
電気の素は電子のことです。
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