第109話 主人公⑩ (リリス視点)
[さて、それでは早速、
目の前に二体も精霊王がいるという現実に頭が追いつけない私。
そんな私の気持ちはお構いなしに話を進めるフィーン。
[妾は水の精霊王。基本的に水を操ることができる。難しそうに見えて実はシンプル!それが妾の精霊術さ]
話は続く。
[水の精霊術は、イメージとかは必要ない。ただシンプルに唱えればいいだけなのだ。どうだ、魅力的だろ?]
私はそれを聞いて質問する。
「イメージとか必要ないなら、じゃあ、どうやって発動するんですか?」
精霊術と魔法との共通点に、”イメージ”というものがある。
一般的には魔法は詠唱が大切とか、展開される魔法陣が大切とか言われたりする。だが、恐らくそれは違う。
現に、ルイくんはイメージを大切にしている。
イメージできるからこそ、頭の中から門まですぐさま変換が伝わり魔力が魔法になる。
だから、無詠唱を成功させたのだろう。
精霊術も同じ。イメージを重視する。
例えば私が使える【ストップ】
これは精霊術では難しい部類に入る。
“時間を止める”ということは”時間の流れ”を想像しなければならない。
想像やイメージができないもの、例えば、私には全世界の時の流れを止めることも出来ないし、学園でさえ全てを止めるなんて不可能だ。
だから私が戦う時は、対戦相手も含む周囲の時間の流れと私の時間との間に差をつけている。
私の方では周囲から認識されないほど早い時間が、他方、外では私がいるにも関わらず認識されないほど相対的に遅い時間が流れる。
そもそも時間の流れは一つではなく多層的であり、種や生物によってもそれは異なる。ゾウの時間とネズミの時間が異なるように、複数の時間の流れをイメージし、相互の時間の流れを変化させる。
だから周囲からは私があたかも消えた、かのように見える。
【グラビティー】も似た感じ。
特定の場所の重力を変えることで使える。
重力という世界の中へと引き込まれる力を変えるのだからより大きなイメージが必要。
時間の流れと同様に重力に関しても、宇宙空間や惑星によってそれが多様であることは、みんな知っている。だけど、無重力状態や逆に何倍もの重力負荷をイメージすることは案外難しい。
だから私は特定の場所を何かの物と捉えて、それを軽くするか重くするか、というイメージをしている。
結構簡単なイメージ方法に思えるけれど、慣れるのに時間がかかる。
最後に【ライツ】
これは比較的簡単であった。
風魔法のようなものだから、風(実際は空気)が出るイメージをする。
イメージはそのモノによって色々と変わってくるが、精霊術にイメージが必要ないものは、私の知る限りほとんど無い。
[リリスの言うことはもっともだけど、水の精霊術にはイメージはほとんど必要ない。何でだと思う?]
フィーンに質問され、私は考える。
火、土、風、雷・・・
全てと異なる点、はいくつもある。
・・・・・・駄目だ、分からない。
[リリスは人間の体に水分がどれだけあるか知っている?]
私は首を振る。
[少なくとも半分以上は水分で占めているのよ]
え、そんなに!!!でも、それがどう繋がるの?
[イメージをするにあたって、”感じる”という要素も重要だよね?]
!あ、確かにそうだ。
時間、空気、重力。
全て、感じることができるからこそ、イメージもできる。
[水って一番身近にあるものじゃない?この時代の文明は妾はほとんど知らないけれど、みんな水は飲むでしょ?体も水で洗うでしょ?それよ!]
言われて納得する。
精霊の五属性、その他の属性。
水以外はそれほど身近に感じることは、実はあんまりないかも。
空気だって普段は感じることは無いし、火なんて触ったこともない。
土だって気にしたことは無いし、風だって肌には感じるけど身近と言えるものではない。
それに比べて水は身近に感じる。
体を洗う、料理をする、飲む・・・
生活において必ず感じる身近なモノ。
更に水は体の中の半分を占めている。
ということは、体の内側でも当たり前のように感じることができるモノ。
「身近に感じている。だからイメージしなくても自然と放てるのね!?」
私の答えに満足そうに、フィーンは球体をプルプルさせた。
[そういうこと!もちろん最初はイメージしないと出来ないと思うけど、慣れれば他の精霊術と違って唱えずに打てる]
つまり唱える時間(一秒)が無くなる。
それはもの凄く画期的。
短縮された分、早く発動できる。
[どれだけ凄いか分かったでしょ?]
「はい!」
[じゃ、次は実戦に行こうか!]
[お宅の姉さんはどうしてあんなに元気なの?]
[姉さんは水こそ世界一と考えているのです。だ、だからいつも以上に張り切っているんです]
[そうか、リリスも大変だなぁ]
[ウチの姉がご迷惑をおかけして、すいません!]
遠目からリリスとフィーンを見守るクロとタルルだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます