第105話 主人公⑦ (リリス視点)


[リリスって本当に友達少ないな]


ある日突然クロに言われた。


「な、何で急にそういうこと言うのよ!」


暮らしている宿屋のベッドの上。私はクロへと目線を向ける。


[いや〜、何かいっつもあの三人の男たちとばっか話しているから。もう少し他の女子と話したらどうだ?]

「でも、」

[別に貴族の娘じゃなくて良いんだぞ。平民の子もいるだろうし]


私は押し黙る。


確かに最近同性と話してこなかった。何しろ、


「しょうがないじゃん!私嫌われているし!それを知ってみんな話しかけてくれないし!」


私は涙目になって言う。


[わ、分かっているよ!だが、そういうのは必要だと思うぞ]

「・・・精霊のくせに生意気ね」

[あ”あ”、黙れボッチ!]


それに言い返すことが出来ない。


「い、良いもん!私には精霊たちが友達だもん」


私はそう反論して、心の中で周囲に呼びかける。


すると数体の浮遊していた精霊たちが寄って来る。


「ほら!」


それを呆れた目で見るクロ。


[言っていて悲しくならないか?精霊が友達って、周囲から見たら痛い奴に見られるぞ]


私は再度押し黙る。


[言うことは?]

「友達を作れば良いんでしょ!友達を!」


私はヤケクソに叫ぶ。


どうしよう、友達の作り方が分からない。




次の日、とりあえず当たって砕けろ作戦をすることにした。


クラスの何人かの生徒に話しかける。


「私は平民とは付き合えません」

「毎月金をくれるんだったら、なってやらなくもないぜ」

「冗談は顔だけにしとけ」

「・・・目障り」

「嫌ですわ」


全戦全敗。


私は見事に玉砕した。


[ほ、他のクラスに当たったらどうだ?]


クロのアドバイスを聞いて、私は他のクラスへ行くことにした。だが、


「ごめんなさい、Sクラスの人はちょっと」

「何か生意気だから、嫌だ」

「礼儀がなってないね」

「・・・・・・無理」


これまた全戦全敗。


結局最初の人以外、みんな貴族か騎士爵の出。


最初に話しかけた子も私がSクラスだと知ると、何故か断られた。


[リリス。何か、ごめんな]


私をけしかけた張本人が慰めてくる。


[ま、まあ、人生は友達がいなくても生きていけるし。どっかのお偉いさんも友達は人生で一人いればいいとか言ってたし]

「・・・・・・本気で慰めている、クロ?」


私は銀色の球体を睨む。


[ごめん]


一言、謝られる。


私は余計悲しくなり、うずくまる。すると、


「貴方も大変だね」


私に話しかける人が現れた。


「?誰?」


私が顔を上げると、金髪の日焼けした少しちゃらそうな女子生徒が立っていた。


制服は乱れており、口調も少し乱暴だ。


「あ!ミナスちゃん!?」

「あーしのこと覚えているのか!」


そうだ。入学初日、真っ先にアレックスくんをリーダーに推薦した子だ。


「どうしたの?」

「どうした、っつうか、私達なんか似た者同士だな、って思って話しかけただけ」

「似た者同士?」


どこが、だろう?


「あーしも、あのリーダーの一件から何故かみんなから目を付けられちゃってさ。なんて言うか、友達がいないんだよね」


最後の方を早口でまくし立てる。


「!!!友達になってくれるの!!!」


私は勢いよく立ち上がり、ミナスちゃんに聞く。


「う、ま、うん、なってあげるよ」

「本当に!やったぁ!!!」


初めての学園での女友達。


「そ、そんなに嬉しいの?」

「うん!だって、初めての女友達だし」

「あーしなんかで良いの?こんな見た目だし、みんなにも嫌われているし」


私はそれを否定する。


「だったら私も嫌われているし、平民だよ?私なんかでいいの?」


それに黙るミナスちゃん。


「見た目とか身分じゃなくて、その人の人柄や内面で友達は選ぶべきだよ!だから私は、貴方と友達になりたい!駄目?」

「ああ、いいよ。あーしの事は気軽にミナスって呼んで!」

「分かった、ミナス!私のこともリリスでいいよ」

「ああ、リリス」


こうして私達は友達になった。


少しずつ、学園が楽しくなっていく予感!

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