第106話 主人公⑧ (リリス視点)
新しい友達が出来た私は、早速学校帰りに遊びに行くことになった。
アレックスくんの誘いを断り、近くの商店街へと行く。
「ねえ、ミナスはいつも放課後は何をしているの?」
歩きながら私が質問すると、頬を掻きながら答える。
「う〜ん、速攻で家に帰るかな?友達いないし、すること無いし。リリスは?」
私に返される。
「私は一人で魔法とかの練習をしている。たまにアレックスくんと帰るけど、こうやって誰かと買い物は初めてかな」
「凄いね、向上心があって」
魔法ではなく精霊術の練習をしているということは黙っておこう。
「今度ミナスもどう?確か剣使いだっけ」
「え!あーしは、その〜〜」
何か言い淀む。
「あーしは、実は魔法使いなんだよ」
「え、そうなの」
でもいつも授業では剣を使っているし、結構強いイメージがある。
「使えるのが治癒魔法で―」
「治癒魔法!凄いじゃん!」
治癒魔法と言えば一万人に一人しか使えないというレアな魔法。
普通に使える回復魔法とは違い、強力な回復をすることができる。
「それで、自分を治癒させながら戦っているから疲れないの」
「だから強いんだ!」
「うん」
「でも、私と何でやりたくないの?」
私は首を傾げる。
「え!いややりたくないとかじゃなくて、邪魔したら悪いかな〜って」
「どうしてよ!全然邪魔じゃないよ!」
「でもリリスって強いじゃん!ほとんど負け無しでしょ」
「そうだけど、私なんてあのルイくんに比べれば」
「・・・確かにあいつはそうだけど」
ルイ・デ・ブルボン。それは途方もない壁。でも超えなければいけない壁。
「一緒にやろうよ!きっと強くなれるよ!」
私はミナスを誘う。
ミナスはしばらく考え込んで、折れたように言う。
「分かったわ。毎日じゃないけど」
「ありがとう!」
そんな話をしていると目的の店に着く。
隣国で流行っているものを取り入れている人気の店で、お値段は少しお高め。
十分ほど並んで入店して、席についた。
他愛もない話をしながら、流行りの食べ物を味わう。
しばらく会話した頃。
一人の女子が近寄って来る。
服装から見るに、同じ学園の生徒だと分かる。
「あの〜、お二人って学園の生徒ですか?」
眼鏡を掛けた、おそらく私より背の高い女子生徒。
「ええ、そうですけど」
「あ、やはりそうでしたか!私の名前はナーレと申します。E組の者です」
顔に見覚えが無いと思ったけど、E組だったら校舎が違うから納得がいく。
「あーしはS組のミナス」
「私は同じくS組のリリスです」
「え!二人ともS組ですか!凄い!」
私達がS組だと言うと驚かれる。
「S組と言ってもハブられ組だけどな」
そう自虐的に言うミナスに、私は苦笑いを浮かべて同意する。
「そんなそんな、S組っていうだけで凄いですよ。アレックス殿下だったり、学校の有名人と同じクラスじゃ無いですか」
「確かにそうだが、あーしたちは嫌われ者ですよ」
「嫌われ者?」
ナーレちゃんが首を傾げる。
「ええ、そうです。私もミナスもクラスで色々とやらかしちゃって」
「それは、大変でしたね」
その言葉に私達は肩をすくめる。
自業自得とも言えるし、自分たちの道を進んだ結果、とも言える。
「実は私も少しクラスで浮いていまして」
いつの間にか椅子を持ってきて、傍に座るナーレ。
深刻そうな顔をして、話始める。
「私は平民なのです。先程のお二人の会話を近くの席から盗み聞きしていてすみませんが、リリスさんもそうなのですか?」
「ええ。でも、ここで会えるなんて!」
私は嬉しくなる。
「E組で平民の女子って私しかいなくて。クラスでは腫れ物扱いされているんです」
「それは、」
私と似ている。
「こうしていつも一人でカフェに入ったりして、一人の時間を過ごしているんです」
「なるほど。でしたら、私達と友達になりましょうよ!」
「そうだな。リリスの意見に賛成!」
私達の言葉に驚くナーレ。
「ここで会ったのも何かの御縁ですし。お互いはぐれ者同士ということで、カンパーイ!」
私の言葉に二人が笑う。
「はぐれ三銃士的な?いいじゃん、面白いじゃん!」
「本当にいいんですか?」
私とミナスは一斉に答える。
「「もちのろん!!」」
それぞれが握手をする。
「少しクラス同士が遠いけど、校舎の間にある中庭とかで集合しない?」
「いいね!」
そのままナーレを交えて話し始める。
それにしても、どうしてナーレは私達の所に来たんだっけ?
まあ、気にすることは無いか。
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