第85話 リーダー?
さて、陣形を組みながら歩くこと約二十分。
「ま、魔物を確認!下下級のスライム三体と下級のラージスライム一体です!」
斥候係の生徒が戻って来て報告をする。
よく見れば、斥候係は取り巻きBだった。
「下下級と下級だな。よし、それなら五人一組を組めば対処できる。アルスとレーナの組はラージスライムに当たれ!」
「「はい!」」
「他はスライムに当たれ!」
そう僕が指示すると、少し不満そうな顔をしながらもそれぞれ組を作る。
組は、人数は決められているわけではないが、組の中の配置はある程度決まっている。
前衛が剣使い、中衛は前衛が疲れた時にスイッチをする剣使い、後衛がサポートの魔法使い、という具合に。
冒険者となるともっと細かく分かれているが、今は生徒でしか構成できないため簡単な振り分けとなっている。
「おい、右の組!もう少しスイッチを早く!」
「は、はい!」
「左の組!サポートを早くしろ!」
「わ、わかってるけど・・・」
「返事は『はい』のみだ!」
「・・・はい」
全く、どいつもこいつもド素人だ。
戦い方がなっていない。
そのくせ僕が指示すると不満そうな顔をする。
「や、やった倒したぞ!」
「こっちもやったぞ!」
そうこうしているうちに、続々と魔物を倒したという報告が来る。
ふん、たかだか下下級を倒したぐらいで何喜んでいるのだか。
「浮かれている暇は無いぞ!早く配置につけ。斥候は、また見てこい!」
「「「・・・はい」」」
しばらくしてまた数体の魔物に出会ったが、少し慣れたのか倒すスピードが早くなる。
その後も数十分に一度、魔物が出てきてはそれを倒す、という時間が続いた。
「それではお昼休みとする!」
ダンジョンに入ったため時間感覚が分からなかったが、どうやらもう昼らしい。
ラオスが全員に告げた。
食事は持参してきた簡単なサンドイッチ。
と言っても僕のサンドウィッチは全てが高級食材で作られていたため、何人かが羨ましそうにこちらをチラチラと見てくる。
その視線に答えるように、美味しそうに僕は食う。
「チッ、偉そうに」
ふと、誰かが妬む声が僕の耳に入る。
それを聞いても僕は特別何も思わない。
そうやって妬む奴は、ただただ僕が羨ましいだけ。ひがみ根性の貧乏人にすぎないのだから。
その声を聞いてか分からないが、ナータリが僕に尋ねる。
「ずっと思っていたんだけど、何で貴方は戦わないの?ただ後方で、指示を出しているだけじゃない」
そう、僕は戦闘に全く介入せずに後ろで指示を飛ばしていたのだ。でも、
「別に普通だろ。リーダーなんだから」
その僕の返答に、急にラオスがどかっと隣に座って真剣な表情で言う。
「ルイ、俺はずっと口出ししなかったが、ここで言わせてもらう。リーダーというのは前に出てこそ皆から頼られるもの。お前がやっているのは、ただのボスでしか無い」
何言っているんだこいつ?
ボスもリーダーもあまり変わらないぞ?
「理解しないのか?とりあえず、俺が言いたいのは、次からは戦闘に参加するように。お前がどんなに強くても、どんなに偉くてもここでの経験はきっと役に立つんだ。一生徒でしか無いのだから、しっかり授業に取り組むように」
そのラオスの説教(?)に、ほとんどの生徒が同意するような目で僕を見た。
はぁ〜〜〜これだから愚民は。
「嫌ですよ。魔物が僕の相手にならないんですから」
「地方貴族の子供は魔物殺しの儀式をすると聞くが、それで有頂天になっていて」は駄目だ!お前のような地方貴族でも戦闘には参加している。特別扱いはできない」
はっ、僕は十歳でコカトリス・・・ってそれについては知られていないのか。
「嫌なものは嫌です」
迫力のあるラオスの威圧を前にしても、僕は動じない。
「何でだよ・・・おい、アルスとレーナ。ルイを説得してくれないか?」
呆れた目でこちらを見て、僕の従者に話しかける。
どうせまたグチグチ言われると思ったが、二人の返答は違った。
「ラオス先生、それには及びませんよ」
「ええ、そうですね。いる方が邪魔です」
僕についてくれるのは嬉しいが・・・おいレーナ!お前、今なんて言った!?
「駄目だな。だが、特別扱いはできないから無理矢理にでも戦わせるぞ」
そう言って立ち上がるラオス。
その高圧的な態度に、僕はイラッときてあの事を告げた。
「先生、僕が出ても一瞬で終わりますよ。なにせ十歳でコカトリスを倒したのですから」
「「「なにぃーーー!!!」」」
一拍おいて、全員の声がハモリ、洞窟にこだまする。
「そ、それは本気か、ルイ? コカトリスって―」
「ええ、上上級ですよ。少し苦戦しましたが、まぁ、今だったら楽に倒せますよ」
「それは本当か? アルス、レーナ!」
話を振られた二人は頷く。
「ちなみに八歳でルイ兄様はオーガを倒しています」
「「「オーガ!!!」」」
またも声がこだまする。
まあ、あれはほとんど、たまたまだが・・・いや、選ばれた人間だから勝ったのだ!
「先生、それで僕が参加するメリットありますか?まあ、一瞬で倒していいならそうしますけど」
「・・・分かった、今のままでいい」
僕の凄さを聞いてか、誰も何も言わない。
どうだ、これが僕の凄さなのだよ!ハハハ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます