第83話 新たな・・・
さて、さらに色々とありながらも入学してはや二ヶ月半経った。
入学の翌日から色々と注目され、一ヶ月後には第二皇子派から誘いを受け、その二日後には第一皇子派からも誘いを受け、それを断り。
逆に、ブルボン派と呼ばれる勢力を拡大してきた今日この頃。
ブルボン派は言わば中立貴族、特に地方の大貴族達の子息を中心に構成されている。
もちろんトップはこの僕!
ブルボン派は着々と僕の預かり知らぬ所で数を増やしているらしい。どうやらアルスとレーナ、ナータリが裏で動いているようだ。
特にナータリの行動力は凄まじく、ブルボン派の中でもナータリに誘われた生徒たちの一団、いわゆるナータリ派が最近は勢いを増している。
その件について本人に問いただすと、彼女自身は自分の保身のため必死にやっているらしい。
自分の行動で実家に迷惑をかけてしまい、ナータリは肩身が狭い。それを挽回するためにも、どうにかして僕の派閥を大きくすることで、何か自分に有利な展望や貢献につながれば良いな、としか本人は考えていない。
まぁ今のところ、ナータリ派に離反などの大きな動きは見られないし、ナータリのお陰で僕らの派閥も少しは大きくなった。
だから、彼女に対する評価は少し改めるか。
とにもかくにも今の段階において、すでにブルボン派は、第一、第二皇子派が無視できる存在ではなくなりつつある。
今でもたまに、両派閥それぞれから勧誘の手紙を受け取るが、全て無視している。
では、ブルボン派とはどういうものか?実際のところ、僕もよくは知らない。
どうやらブルボン派というのも通称で、普通は中立派と呼ばれているらしい。
ここ最近で次期皇帝争いが激化する中で中立を表明しているのはとても危険。
脅されたりして無理やり派閥に入れられる。
だから今まで中立派はできなかったらしい。
そこで、アルスたちは僕とブルボン家の名のもとにそういう人たちを庇護者として勧誘をしていったらしい。
皇室でも手を出しにくいブルボン公爵家、その他大貴族の子息が加わり、より安全になった。
その安全地帯を求めて争いに巻き込まれたくない貴族たちが来る。
だから、今勢いがある。
と言っても、派閥を管理しているのはアルス、レーナ、ナータリの三人。
なんなら、僕は最近までそんな派閥があることすら知らなかった。
そのことをアルスに問い詰めたら、ひらりと誤魔化された。
「ルイ兄様は堂々としてればいいのです!」
そう言われたが・・・腑に落ちん。
もしかすると裏切られるのか?いや、無いな。
あのアルスの目は完全に、自分に任せればうまく行く!と言っている目のような
気がした。
ここ最近はそれぐらいの変化だ。
ところで、リリス対策のことだが・・・思っているたよりも苦戦している。
やはり隠蔽されている情報のため、なかなか資料が出てこない。
何より腹立たしいのが、調べていることを誰にも知られないために偽造工作をしなければいけないことだ。
精霊術のことを調べているとがもし知られたら、色々面倒なのだ。
あくまで僕が図書室に出入りする理由は、世界の歴史や文化を調べるため。
そのレポートを一ヶ月に一度提出して、上手い具合に誤魔化している。
また、図書室を管理する司書にも賄賂を渡し、借りた文献名を秘密にしてもらっている。
だが、それだけやっている割には成果は乏しい。
リリスの初めての契約相手である精霊の名前が、クロノスだったことは思い出したが、クロノスがどんな精霊なのかは、あまり文献に載っていなかったため手がかりは掴めずだ。
時を操るには何らかのものを
重力を操るには何らかのものを
そこまでは分かったが、それ以上の進展はない。
情報が載っていそうな文献も残りわずかだ。そうなると、他の観点や方法からのアプローチも検討しなければならない。
だから、途方もなく時間がかかる。
ああ、もう面倒くさい!!!
そんなこんなで、最近は、喜ばしいことがあったり、逆にストレスが溜まることもあったりと悲喜こもごもの日々だ。
ちなみにリリス達だが・・・あまり大きな変化は見られない。大抵は、教室の隅っこの方で四人仲良く談笑している。
たまに、リリスが貴族の女子生徒から水をかけられたり、私物を隠されたり、いじめを受けている現場を目撃することがある。
もちろん、僕は見て見ぬ振りだ。
どうせリリスは主人公なのだから、そんなもん乗り越えるだろうし。
まぁ、このまま潰れるのも面白いが―――いや、やはり潰すのはこの僕の役目だ。
さて、夏休みまでもう一ヶ月を切ったある日。
いつものように運動服を着た僕らは、ある場所へと連れていかれた。
ちなみに今日の時間割は全て実戦となっている。
校舎から歩いて数分の本校舎。
本校舎は職員室や研究室がある大きな建物で、学校の中心に立つ。
その中へと入った僕らSクラス。
更に入った後も、廊下や階段を曲がったり降りたりして、ようやく大きな部屋に到着した。
その広々とした、と言っても中に入れるのは百人程度のその場所は、実は本校舎の地下室であった。
部屋の入口を入ってすぐ真下の地面には、大きな白い魔法陣が描かれていた。
ラオスとイルナの指示により、そこを踏まないように気をつけて全員部屋に入る。
全員が入り終えると、ラオスが口を開く。
「それではこれより、特別授業を行っていく。この授業はこれからも定期的に行うが、きわめて危険であり、舐めてかかってはいけない!」
大きな、力強い声が地下室広場にこだまする。
「何の授業か、皆んな予想はできているだろう?」
うん。まあ、あれしか無いな。
「では、これより特別授業、ダンジョン探索を始める!」
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