第75話 実戦授業
初座学授業が終わり、次に初実戦授業が行われることになった。
生徒は自前の、あるいは学園が貸し出している運動服に着替えて運動場へと出る。
運動場と言ってもコロシアムのような円形闘技場で、下は硬い土。
今回はクラスごとで授業が行われる。
「実戦授業の教師のラオスだ。よろしく!」
運動場に入った途端、大きな声で挨拶をする赤髪の短髪大男。
見るからに武闘派で、馬鹿そうな教師だ。
「副教師兼監視兼治療兼結界兼・・・・とまあ、その他色々担当するイルナよぉ〜。よろしくぅね〜」
ラオスの隣に立つ、身長が少し高めの紫髪の女性も挨拶をする。
胸を強調するような胸元が開いた服を着ている彼女は、大人の女性の色気を全開にし、男子生徒たちの視線を釘付けにする。
まぁ、それはいいとして。
この実戦授業もまたこの異世界学園ならではの授業だ。
実戦授業では、この世界に存在する魔物や隣国との戦争を想定した訓練が行われる。
戦い方の基礎を学び、実際に魔物を倒してみたり、一対一の対人戦を行ったり。
軍隊の軍事訓練のようなことを行っていくのだ。
「まずこの授業を受ける上で大切なことが三つある」
生徒を整列させ、ラオスが話し始める。
「一つ目は、怪我に気をつけること。二つ目は、仲間を信じること。三つ目は、勝手な行動をしないこと」
は?何だそれ?
まるで僕の行動を否定するようなことばかりじゃないか!
周囲の忠告も聞かずに、一人で魔物と戦ったり、気絶したり・・・
自覚はある。
だが、真っ向から自分の行動原則を否定されたくはない。
「この三つは、この学園で学ぶ上で大切になってくる。以後、忘れないように!」
「「「はい!!!」」」
みんな大きな声で返事をする。
僕は絶対守らないからな!
「それじゃあ、早速授業に入ろうか。今回はたっぷり時間はあるから、それぞれの実力を実戦形式で測ろうか」
ラオスは手元のボードを持って読み上げ始める。
「今から呼ばれた二人がそれぞれ対戦するように。みんな大きな円を作れ。そこにイルナ先生が結界を張るから」
指示通り、生徒全員が大きな円になるように広がる。
真ん中に立っていたイルナが、そこで何やらぶつぶつと詠唱をし始める。
すると、そこから広がるように一気に青い何かがドーム状に僕たちの手前までを覆う。
恐る恐る叩いてみると。
コンコン
氷の壁を叩いたような乾いた音がする。
「ほぉ〜〜これは凄い!」
入学試験のときは遠目でしか見えなかったが、間近で見るとその凄さが分かる。
破れる気がしなくなるほど頑丈に、美しく作られている青味を帯びた結界。
「くそ、さっきの詠唱聞けなかった」
遠くだったため聞き取ることができなかった。
「じゃあ、早速呼ばれた人は中に入って」
そう言ってラオスが生徒の名前を呼ぶ。
呼ばれた生徒は恐る恐る、ぶつからないか心配しながら中へと体を入れる。
「そんなに怖がらなくていい。結界は、発動者が許可した者だけを中に入れることができるんだ。だから、サッと入れ!」
ラオスの言葉に意を決して入った生徒は、簡単にすり抜けてホッとした表情をする。
「それでは位置につけ!立ち位置は入学試験のときと変わらない。見ていない奴はしっかりと前の者を見ておけ」
試験を受けた生徒同士なのか、二人はすぐに位置につく。
そして、それと同時にラオスは合図の声を上げた。
それから三組の対戦が行われた。
「よし、良かったぞ」
「ええ。優秀よね」
ラオスとイルナがそれぞれ声を掛けて労う。
「よし、では次!ルイとカマセ、中に入れ」
!僕か。
呼ばれた僕は結界内に入る。
なるほど、中と外では特に差は無いんだな。
そんな事を考えながら位置につく。
僕の対戦相手は茶髪の大柄の男子。体格のいい体に、腰には大きな剣を差している。
しかしどうしてか、大きな顔についている大きな目でこちらを睨んでくる。
しばし睨んでいたカマセが口を開いた。
「お前、貴族か?」
年齢にふさわしくない低く野太い声。不良という言葉がぴったりな輩だ。
「おおそうだが、お前は平民か?」
服装、身のこなし、言葉遣い。どれを見ても何となく分かる。
「だとしたら何だ?戦いたくないとでも言うのか!?」
「まあ、そうだね。穢れてしまう」
「けっ!これだから貴族はくだらねー。だが、その顔を潰すのも悪くねーな!」
不良らしい汚い言葉を吐きやがる。
そしてラオスの合図。
カマセがそれと同時に大きな剣を腰から抜いた。
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