第69話 ざまぁ?
「すいませ〜ん。ちょっと急いでいて前を見ていなかったんです。すいません!」
ぶつかった後、すぐに立ち上がり何度も謝ってくる。
僕はそれを尻もちをついたまま見上げていた。
「あ、あの〜大丈夫ですか?」
僕が黙ったままだったからか、心配そうに覗き込んでくる。
「ルイ様」
横にいたレーナも心配そうに声を掛けてくる。
固まっていた僕は、ハッとして直ぐに立ち上がった。
「大丈夫だ。これからは気をつけるように!」
僕は尻をはたきながら、リリスを一瞥して、歩き出した。
「あ、あの〜〜?」
リリスの呼びかけを無視して、僕は足早にその場を後にした。
「ルイ兄様、どうされたのですか?」
アルスの質問を僕は無視しながら歩き続ける。
あの時、リリスとぶつかった時。
僕は尻もちをつかされた。
だが、リリスは何とも無かったのだ。
仮にも向こうは走っていて、こちらは歩いていた。ぶつかったらお互いが倒れるはずだ。
つまり、リリスはそれだけ身体が鍛えられていることになる。
急にぶつかっても倒れないぐらいに体幹もしっかりしているし、頑丈。
ますます厄介だ。
「あ、ルイ様。ここですね」
色々と考えていたら、自分の教室に着いた。
前世と変わりのない普通の教室。
前には黒板と教壇。イスと机は高そうな木材で作られていて、綺麗に並べられている。一年生のため場所は校舎の一階だ。
既に何人かのクラスメートが教室にいた。
その中の一人が凄い形相でこちらに向かってくる。
茶髪の縦髪ロールで、気の強そうな顔の少女は僕を睨んで言う。
「約束は約束よ!貴方の配下になってあげる!」
・・・ん?急に何だ?
「誰だ、お前?」
名前も知らぬヤツからいきなり声をかけられた。
「だ、誰って、私が誰だかわからないの!」
「あぁ、だから聞いている」
僕の知り合いリストにこいつはいない。
「アルス、お前分かるか?」
「・・・・あっ!思い出しました。確か試験の時に自分と戦った、え〜っと」
「ナータリ。ナータリ・デ・フットナよ!忘れてるんじゃないわよ!」
ああ、そうだった。魔法の名門、フットナ家の長女だっけ?
「で、何で急に配下になるとか言ったんだ?」
「え!ちょっと、こいつに説明していないの?」
驚いたように声を上げてアルスの方を見る。
「あぁ、あれですね。ルイ兄様、試験の時に勝ったほうが相手へ一つ要求ができるという約束をしたと話しましたよね」
「・・・確かにそう言ってたな」
「その自分の要求が、負けたらルイ兄様の配下になる、というものでした。これも話したと思います」
そう言えばそんな話もあったな。
「というわけで、彼女の発言です」
そういうことですか。
「やっと思い出したわね!」
「あぁ。だが、それを僕に言って何になる?」
「えっ!」
いや、普通に考えてそうだろ。
ただの口約束を鵜呑みにして、こんな場所で堂々と配下宣言をする。
普通に考えて、馬鹿だろ。
「たかだか従者との口約束を本気に思ってわざわざ僕に言いに来たのか?」
「え、うん、まあ、はい」
「そんなの突っぱねればいいだろ!貴族なんだから」
「でも、後々その話題を貴方から言われるんじゃないかと・・・」
「ふっ、そんな小さな事。僕が言うわけ無いだろ」
従者の言葉より貴族の言葉のほうが重い。
そんなのこの世界の常識だろ。
「あなた達の主人って、私よりも酷いのね」
「ええ、あの時の自分への発言も可愛いもんですよ」
「これが貴族主義の先頭を走る俺方です」
おい、お前ら。いつの間に僕をダシにして仲良くなっているんだよ。
「とりあえず、お前が馬鹿ということは分かった。ナータリ」
「取り消しは―」
「ない。こんな大勢の人間がいる前で言ったんだ。もう無理だ」
数人の生徒たちが僕たちをチラチラと見ている。何やら話しているが恐らく先程の件だろう。
「そんな、」
「自分で墓穴を掘ったんだ。黙ってればいいものを、君は自分から勝手に僕の仲間になったんだ」
「うわーーーん」
その場に泣き崩れる。
その姿を見て、思わずニヤリと笑う。
こういう時、前世では何て言うんだったっけ?
そうだ!
「ざまぁ!」
(※ルイはライトノベルをあまり読んだことがありません)
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