学園編 1章

第68話 入学

遂に学園編に突入です。

相まみえたルイとリリスの話(リリス視点、少し多めです。)

気軽に読んでください!


―――




ルイ・デ・ブルボン。


ブルボン公爵家の長男。


それが僕だ。


前世で色々あったが、今世は元気に生きることが出来ている。



帝立学園に入学した僕の目標は一つ。


成り上がり共を潰すことだ。


とある小説世界のここ。


その主人公のリリスと愉快な男子のお仲間たちのことが僕は嫌いだ。


理由なんて一つだけ。


家柄第一主義の否定者たちだから。


僕とは相容れない存在。選ばれた人間なのにその地位を嫌っている奴もいる。


そんな奴らを正面から叩き潰す。


それこそが僕の理念、僕というイデオロギーなのだ!!!



「・・・様。ルイ兄様!」


目を瞑っている僕を起こす声。


「まだ、話は終わっていませんから。公爵家の嫡男としてしっかりしてください!」


小声で話しかけられるが、無視だ、無視。


「目を覚まさないのなら、奥様に報告をしますよ!」


ぐっ、こいつ!


僕が母に逆らえないのをいいことに。


父?秘密を色々握っているから怖くも痒くも無い。


「わかったよ」


渋々目を開け、イスにもたれ掛かっていた背中の伸びをする。


僕の正面には背の半分ぐらいの演壇がある。そこで一人の高齢男性がボソボソと喋っている。


その老人は先っぽの尖ったエナンと呼ばれる帽子を被り、いかにも年季の入った古そうな黒いローブを身にまとっている。


この老人、いや、この学園の学園長の話を周囲の新入生たちも退屈そうに聞いていた。


そう、今日はこの学園の入学式。


帝国中から、四百人もの生徒が集められた。


クラス分けはこの式後に行われるが、今は学園長の挨拶が行われている。


「…最後に言いたいことがある。この学園が始まって三百年。平民を受け入れ始めて五年が経とうとしている。いまだに、学園内に差別というものが残っていると思うが、皆さんはそんな古い価値観は捨てて、日々勉強に取り組んでくれ。では、最後だが―」


しわがれた低い声でまとめる・・・?


いや、さっきから何回も『最後になるが…』と繰り返し言っているのだが。


ていうか、誰が平民と仲良くなるか!


「自分はなれますよ」

「私も出来ます」


相変わらず僕の心を読むように言うのが、両隣の二人。お前らエスパーかよ?


そう。右側でさっき僕を起こしたのが異母弟で従者のアルス・デ・ブルボン。


そして、僕の左側に座るのは元伯爵令嬢で一応奴隷のレーナ。


彼らも僕の従者として入学するのだ。


「相変わらずお前らは・・・というか、あいつの話はまだ終わらないのかよ」


話し始めてすでに二十分。いまだに『最後に…』から、このおじいちゃんは抜け出せていない。誰か、この無限ループから救出してあげろよ!


「・・・流石にそうですね」


いつだってどの世界だって校長の話は長いらしい。



「え〜次に。新入生代表の言葉、」


教師たちが強引に学園長の話を終わらせ、式次第は次に移る。


「フランシーダ帝国第三皇子、アレックス・ド・フランシーダ」

「はい!」


司会の人に呼ばれて最前列から立ち上がった生徒は、濃い青髪の美少年。


壇上に上がるまでの歩き方はゆっくりと気品があり、背筋をビシッと伸ばして生徒たちの方に向き直る。


「新入生代表として―」


よし、寝よう。


こういうのって大して面白くないし、眠くなる。仮眠の時間だ。


だから、目を閉じた。


僕が起きたときには、女子たちがキャーキャー言っている声が聞こえ、隣のアルスは呆れた目で僕を見ていたのだった。



さて、その後も祝辞や来賓の話が続いたが、ようやく無事に入学式も終わった。


そのまま、自分たちの教室に行く流れとなった。


式後、集められていた大きな体育館の壁際にクラスの割り振りが書かれていて、自分たちで見つけ出さなければならない。


「あ、あった」

「三人とも同じクラスのようですね」


僕、アルス、レーナの名前が並んで書かれていた。


「S組ですか」

「チッ」

「ルイ様、何ですか、その舌打ちは?」


二人と一緒になったことへの苛立ちからした舌打ちが、漏れてしまった。


「何でもない。それより、アレックス殿下とも同じだな」


ここは小説通り。運命の力だな。


アレックスの他にもハンネス、フレッド、そして・・・リリスも同じクラスだ。


都合がいい・・・と思う。相手の実力を間近で見れるからな。



壁際に密集していた人だかりを抜け、僕らは教室へと向かう。


学園内は広大であり、教室まで体育館から十分かかるらしい。


雑談をしながら教室へと向かっていて、ちょうど曲がり角を曲がろうとした時。


それは急に起こった。


ドッ


人に当たったような衝撃で僕は後ろへ尻もちをついた。


「誰だ!この僕に―」


苛立ちをぶつけ、相手を威圧しようと言い放った。だが、相手の顔を間近・・で見て、顔を顰める。


「いたた。あっ、すみません!私が前を見ていないばっかりに」


すかさず謝ってくるその相手は、


リリス、その人だった。

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