第55話 いざ出発!
「・・・・・・本当に大丈夫だな」
「はい。しっかりと公爵家の権威を見せてまいります」
「・・・・・・お前、それは本気で言っているのか!」
「はい!」
僕が元気に返事をすると、父はブルブルと震え、アルスとレーナは呆れ、セバスはあからさまな溜息を吐く。
今日は僕らが帝都へと行く日。
学園に通う以上、あまり家に帰れなくなる。
そう、アンナに会えなくなるのだ!
「ルイにいさま、がんばってください!」
そんなアンナは僕を励ましてくれる。
「ああ、公爵家の力を奴らに見せつけてやる!」
「?」
意味がわからないのか首を傾げる。するとアルスが呆れて言う。
「ルイ兄様。冗談はそこまでにして」
「?何を勘違いしている。冗談で言ってないぞ」
学園に入学して主人公共全員を潰すために今日まで生きてきたのだ。
それが生きがいであり、前世で出来なかったこと。
「僕の夢は唯一つ!この世界は家柄が全てだと――イテッ」
せっかく宣言しようとしたのに、上から拳で父に殴られた。
「いい加減その考えを捨てろ、ルイ。いいか、これからは身分なんて関係なく能力で人を判断しろ。良い奴とはどんな身分だろうとちゃんと接しろ。上から目線だと敵を作るだけだ」
「・・・・・・」
僕が不満を露わにさせた態度を取ると、父が溜息を吐く。
「分からないのか?一昔前までは貴族絶対主義だったかも知れない。だが、近年では能力がある者が中心となった国造りが行われてきている」
確かにこの国は変化している。
昔は伯爵以上しかなることが出来なかった大臣職も、今では男爵など低い身分の貴族で優秀な人が担うようになった。
官僚などもそうで、平民出身者が少しずつ増えてきた。
「今年もそうだが、年々平民の学園入学者が増えてきた。それは平民が貴族よりも優秀になりつつあるということだ」
帝国にいくつもある学校の中で最高峰と呼ばれている帝立学園。学園長が変わった数年前から平民の受験資格を認め始めてきている。
「そういう人たちを味方に付けてこそ未来の当主だ。若い世代は段々と考え方が変わってきている。そういうのを踏まえて、誰にも平等に接しろ」
・・・すいません、父上。僕はその平民&皇子&その他男子に喧嘩を売りに行くのです。
「わかったか」
「はい、分かりました!」
全力で潰してまいります!
ルイの満面の笑顔を見て、周囲の人々の不安は増すのだった。
荷物を全て入れ終わると遂に出発の時間がやってきた。
玄関で家族や使用人たちが見送りをしてくれる。
僕へのお別れが終わった父はアルスとレーナの方に歩み寄り告げた。
「ルイの監視を頼んだ」
・・・は!本人がいる前で堂々と言うのか!というか―
「父上、どういうことですか!アルスとレーナは学園には通わないんですよね?」
「?何を言っている。入学試験に合格したら入っていいんだぞ」
聞いてないぞ!
「ああ、そうだったな。一部の貴族しか知らないんだったな。特例ではあるが、従者は二人まで入学させていいことになっているんだよ。もちろん試験に合格したらだが」
え!小説の中でそんなの・・・・・・・ルイってまず、家の中で信頼得られず従者いなかったわ。
「て、ことは」
「ルイ兄様。学園でもよろしくお願いします」
「ルイ様、勉学頑張りましょうね」
試験をまだ受けていないというのに既に入学前提何だけど!・・・まあスピンオフ主人公ヒロインなら入るだろうけど。
ただ、ただ、この二人は味方ではない。
僕へのお目付け役であり、僕の行動を父に告げ口する敵。
やはり殺しておくべきか?
「はぁ〜〜、僕の計画が」
出発前だと言うのに、気分がだだ下がりの僕だった。
馬車で三日。
遂に帝都に着いた。
帝都の中心である王城は小高い丘の上に位置し、そこを囲うように街が形成されている。
公都と、いやそれ以上の人で溢れかえっている。
建物は中世風のレンガと石でできた作り。道も舗装されており、通る人々の服も色とりどり。
「凄い、ですね!」
アルスが珍しく子供のようにはしゃぐ。
「そうか、お前は帝都が初めてか」
「はい!」
僕もレーナも何回かパーティーなどで来たことがあるため、驚きはしない。だが、ウキウキしてしまう。
所謂、地方都市から来た若者の様な気持ち。
自分の街も好きだが、少し憧れてしまう気持ちになる。
「ん?美味しそうな匂いがするな」
焼かれた肉とハーブのいい感じの匂いが馬車に入ってくる。
「ルイ兄様、ぜひ行きましょう!」
「ああ、そうだな。入学試験までは時間があるし」
まだ後数日はある。だからゆっくり旅行でも―
更に二日後
「何故だ、何故ここ数日間、僕の思い通りに行かない!」
ルイの叫びが屋敷にこだまするのだった。
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