第54話 妹


「にいさま、おかえりなさいませ」


僕の帰宅を待っていたように出迎えてくれたのは、同じ金髪の髪を耳の上でツインテールした少女。可愛い白いワンピースは胸元とに小さなリボン、頭の横には大きな赤いリボンを飾り付けている。子供の幼い高い声で僕を呼ぶ。


「アンナ、ただいま!」


少女の名は、アンナ・デ・ブルボン。ブルボン家の長女で僕の四歳下の妹だ。


「うん!アルスにいさまもレーナねえもおかえりです!」


後から来た二人にも可愛らしく挨拶する。


「アンナ、ただいま」

「アンナ様、出迎えありがとうございます」


二人も微笑みながら返す。


アンナは嬉しそうにニッコリと笑い、僕の所によってきた言う。


「ルイにいさま!きょうね、たくさんおべんきょうしたんだ!」


褒めてほしそうな顔をしたので撫でてあげると「えへへ」と嬉しそうな表情を浮かべた。


「「「可愛い!」」」


僕ら三人の声がハモる。


今、僕は妹に今はゾッコンだ!



前世にも妹はいた。僕と違って優秀で両親にも愛されていた。

兄弟仲は悪くなかったが、僕の大学卒業と同時に疎遠になっていた。


あれはちゃんと受け取ったかな・・・いや、そんなことよりもだ。


前世で妹に嫉妬していた僕だが、今世では逆に妹への愛が止まらない!

可愛らしくて、守って上げたくなる。



そして今日、誕生日である彼女のためにお小遣いを全額プレゼントに注ぎ込んだんだ!


「に、にいさま!こんなにもらってよろしいんですか!」


山盛りのプレゼントを前に、驚きと困惑をした表情を浮かべる。そこも可愛い!


「ああ、もちろん。アンナは立派なブルボン公爵家の長女だ。好きなものは何だって手に入れられるのだ!」

「?」

「いいか、アンナ。欲しい物があれば何だって言えよ。この世界は家柄が全て!どんなものだろうと、可愛くて利発で尊いアンナの為ならどんな手を使っても探して上げる!」

「よくわからないけど、うん!わかった!ありがとう、ルイにいさま!」


よしよし。順調に僕と同じ思想にしていこうではないか!


「ルイ兄様。アンナに変な思想を刷り込もうとするのは止めてください」

「うるさい!お前は僕の妹を呼び捨てにするな!」

「腹違いとは言え、一応自分の妹でもありますよ」


うるせえ、僕とアンナは同腹だ!


「あ、そうだ!アンナ、誕生日おめでとう」


僕の怒りを他所に、思い出したようにアルスが出したのは小さなぬいぐるみ。兎に角を生やさせた魔物、アルミラージのぬいぐるみだ。


「ふっ、馬鹿だな。女の子に魔物のぬいぐるみなんて―」

「わっ!アルスにいさまありがとうございます!!!」


僕の時とは違い、上ずった声で喜ぶアンナ。


「前から欲しいって言ってたからね」

「うん!!!アルスにいさまだいすきです!」


アルスから受け取ったぬいぐみを大事そうに抱えてはしゃぐアンナを見て、僕は唖然とするしか無かった。


「ルイ兄様。多いだけじゃ駄目なのです」


ドヤっとした表情を浮かべる。


こ、こいつ、殺す!


「アンナ様。私からも」


今度はレーナがアンナへと寄る。


「あまり高価ではありませんが―」


そう言って色とりどりの髪飾りを取り出した。作られた小さな花がいくつも載せられたきれいなものだが、豪華さが足りない。


「ふっ、そんなのがアンナに似合うわけ―」


ない、と僕は馬鹿にしようとした。

だが、アンナが貰った髪飾りを付けた瞬間、僕は口をあんぐりと開けて叫んだ。


「「「可愛いいいいい!!!」」」


否、僕以外の三人の叫びが重なった。


「えへへ、レーナねえありがとう!」


褒められて嬉しいのか、気に入ったのか満面の笑みを浮かべた。そのせいで余計可愛くなる。


「ルイ様。女の子が気に入るのは何も豪華さだけではありません」


レーナもドヤっとした表情を浮かべる。


こいつら!殺すーーー!!!


そんなことを思いながら凹んでいると、アンナが駆け寄ってくる。


「ルイにいさまもありがとうございます」


・・・・・・よし、来年もこの倍は買ってやる。


金なんて心配ない!


何せ僕は公爵家なのだから金ならいくらでもある!


「「ルイ(兄)様、やめてください」」


僕の心を読んだようにツッコむ二人。


「いいや!絶対―」


「これは何事だ!!!!」


僕の言葉を遮る大きな叫び。

玄関から二階に上がる階段に全員の目が行く。


上から驚愕の表情を浮かべて叫んだのは父だった。


「ル、ルイ!どういう事だ!!!」



その後しっかりと両親に買い過ぎたことを怒られた。

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