第52話 親の悩み (ラノルド視点)
公都の中心に位置する公爵邸。
その中でも中心的位置にある大きな書斎に、金髪の髪をオールバックして、ちょび髭を生やした男が頭を抱えていた。
男の名はラノルド・デ・ブルボン。
今代のブルボン家当主だ。
彼は七年前、ルイが四歳になる頃に当主となった若当主である。先代で彼の父、つまりルイの祖父は、早々に息子に当主の座を明け渡し、自分は隠居して帝都で優雅な暮らしを送っている。
根が真面目なラノルドは、若いながらも領地を発展繁栄させてきた。
多くの問題を抱えながらも父から受け継いだ領地を、これまで頑張って守ってきた。
だが、そんな彼に新たな問題が出来てしまった。
「どうしてあんな子に育ってしまったんだ・・・」
息子のブルボン家嫡男、ルイのことで頭を抱えていた。
幼い頃は利発で将来を期待できる子どもだった。
もちろん、今も同年代よりは明らかに大人びている。だが、
「思想が強すぎる」
椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見つめる。
貴族絶対!家柄一番!
そんなことを常日頃から言っている息子。
仮にも弟であるアルスに対しても、元貴族であるレーナに対しても、あくまで主人と主従としての関係を維持している。
奴隷だって一人で買ってきたり、貴族を潰すまで痛めつけたり、さらには、あろうことかその貴族の屋敷まで焼き払ってしまった。
極めつけは数ヶ月前の十歳の子弟が集められたパーティー。
何でも、複数の貴族の子息やあの第三皇子に対してまでルイは喧嘩を売ったとか。
だが、本人に問い詰めても知らん顔。
「もっと優しい子に育ってほしかった」
その権力を弱い人々のために使う、慈愛を備えた優しい子に育てたかった。
だが、そんな自分の期待に反して、息子はどんどん家柄第一主義の思想が強くなっていた。
セバスの報告だと、下の人間からすでに賄賂まで貰っているとか・・・
俺は流石に、その考え方を正そうと呼び出したのだ。
つい先程、孤児院の件も合わせて叱ろうと思った。
だが、だが、逆に脅された!
あいつは、あろうことか親を脅したのだ!
アルスの実母について自分に隠し事があり、その事で俺がヨーハナに頭が上がらないことをいいことに!
本当はガツンと叱ってやりたい。
親の威厳を見せたい。
ただ、少し冷静になって考えると実は叱る理由が見つからない。
ルイがこれまでやってきたのは、別に悪いこととは言えないからだ。
困っている奴隷を悪から救い、領地経営で新たな改革をして、孤児たちの教育も行い、魔物から子供を助ける。
むしろ、感謝されるかもしれない。
だが、やはりその思想や言動には問題がある。してきた行動は、あまり責めることは出来ないが。
「どうすれば良いんだよ?」
当主になって、今が最も悩んでいるかもしれない。
それぐらい困っている。
ヨーハナかアルス、セバスに何とか言ってもらいたいが・・・
でも、ヨーハナは親馬鹿だし、アルスは忠誠心が強いし、セバスは当主としては問題ないと言うし。
「俺の味方が誰もいない!」
ルイも来年は学園に入学するが、今から不安でしかない。
何か問題を起こすだろう、やらかすかだろう、と自分の子どもながら確信してしまう。
「もし何かをやらかしたら、あれをするか〜」
親としては普通に学園で過ごして欲しい。
だが、あの子なら必ず何かしでかす。親でも信じてあげることはできない。
だから、もし何かやらかせば苦肉の策を出すしかない。
「あれは本当に我々貴族にはキツイものだ。ルイは耐えれるだろうか?」
自分も若い時に経験した
自分の子供にはしたくなかった。
だが、当主としてやらなければいけない。
「親と当主を両立するのはキツイわ!」
そう、ラノルドは一人叫ぶのだった。
―――
時系列がぐちゃぐちゃですいません。
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