第51話 噂のパーティー (三人称視点)

十代の子供たちが集められた王都のパーティー。


王宮の一室で行われたためか、子供のパーティーとは思えない豪華な部屋に集められていた。


親たちはここで少しでもどこかしらの家と繋がるチャンスだとソワソワし、子供たちは自分と同じ年齢の人に会えるのかとソワソワしていた。


そんなパーティーの中心的な人物、濃い青髪のキリッとした顔立ちの美少年が女子たちに囲まれていた。


「アレックス様、ぜひわたくしとおどってくれませんか!」

「いいえ、私と」

「わたくしはおどりが得意ですわ」


親に言われたのか、必死に第三皇子のアレックスにすり寄る令嬢たち。


それを煩わしく思いながらも彼は丁寧に対応していた。




「はぁ〜〜〜」


女子たちの輪から抜け出したアレックスは端の方で一人、息を吐いた。


彼にとって擦り寄られるのは当たり前、だが嫌悪を覚えることだった。


水の入ったコップを持って片隅で一人でいた彼だが、そこに一人の男の子が歩み寄ってきた。


子供は生意気そうな顔立ちで、金髪の髪をしっかり整えていた。彼もまたこのパーティーの中心人物であり、下手をしたらアレックスよりも女子に囲まれていた人物。


「アレックス第三皇子殿下。お初にお目にかかります、ブルボン公爵家・・・嫡男、ルイ・デ・ブルボンです。以後お見知りおきを」


自分の身分を自慢するようにいやみったらしく言うルイ。彼の言葉からは皇子への敬意を感じられない。


「ご丁寧にありがとうございます。ルイ殿は大変な人気のようで」

「ええ、まあ。これでも公爵家の嫡男なので」


最初っから喧嘩腰。謙遜などしない、当然とばかりの発言にアレックスは苦笑いする。


「貴方は何でも持っているんですね」


少し嫌味を言うが、ルイは意に介さない。


「そりゃあそうですよ。選ばれた人間なのですから!誰かさんのように今の地位に不満なんてありません」

「・・・その誰かさんは俺のことか?」

「さあ、どうでしょう?まあ、強いて言うなら殿下の印象は『可哀想な人』ですかね」


肩をすくめながら飄々というルイ。

アレックスは思わず腰にある剣を抜こうとするが、既のところで我慢した。


「あれ?図星でしたか?不敬に当たりますかね?・・・まあ、僕を罰するのは貴方には無理でしょうけどね」


耳元でルイはニヤリと笑う。


アレックスは黙ることしか出来なかった。全てが図星だから。


今の身分が嫌いで、誰にも愛されない可哀想な人で、歴史ある公爵家の令息をを罰するほど権力も第三皇子ごときが持っていない。


「それではお仲間同士、傷の舐め合いでもしてください」


そう言い残して、偉そうな公爵令息は立ち去っていった。




その後少しして、二人の男の子がアレックスに近づいてきた。


「殿下もあの方に酷いことを言われたようですね」


アレックスに最初に話しかけたのは、薄い緑髪のメガネを掛けた少年。


「おれらもあいつに『可哀想な人』って言われたぜ」


南部訛りの言葉で言うのは、ガタイの良い赤髪の少年。


「君らは?」


急にでてきた二人にアレックスは戸惑う。


「申し遅れました、ぼくはカッセル伯爵家三男、ハンネス・デ・カッセルです」

「地方の騎士爵ルース家の長男、フレッド・ダ・ルースだ」


二人は名乗る。


「さっき言ったことって本当なのか?」

「ええ、ルイ公爵令息に可哀想な人だの言われましたよ」

「ああ、本当にうざくて偉そうな野郎だぜ」


二人は口々に文句を言う。


「色んな人に言っているのか?」

「いいや、今のところおれらだけみたいだぜ」


「「ぷっ、ははは」」


アレックスの質問に答えたフレッドの一人称に思わず笑う二人。


「お、おい、おれの発音を笑うな!」


「「ははは」」


またしても笑ってしまう。


「いやいや、すまん。ついおかしくて」


王宮では聞かない語尾を上げる発音にアレックスは久しぶりに笑ってしまった。


「殿下も人が悪いぜ」

「ごめんごめん。それで、ルイ公爵令息のことだっけ?」


笑い終えたところで話を戻す。


「ええ。あの方は何なんでしょうか?心からの嫌悪がしてきます」

「俺も仲良くは慣れない気がする」

「おなじくだぜ」


三人はルイへの敵意がだんだん芽生え始めた。


そんな同じ気持ちを共有し合った彼らはだんだんと仲良くなっていった。




彼らがリリスと出会うのは二年後。



ルイと戦うことになるのは・・・・そう遠くない未来だろう。

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