第50話 主人公⑧ (リリス視点)
クロと契約してから一週間後。
遂に能力を使う日が来た。
狼男と戦った時にはクロが私を通して使っていたらしいけど、今回は私が自分で使うのだ。
「さて、これから能力を使う前に、重要なことを教えよう」
師匠の家の裏庭。周囲の建物に隠れてじめじめした開けた場所。
私はランニング用のピンクの運動服を着て、師匠と相対する。
私の側を旋回するのはクロ、師匠の周りを旋回するのは青い精霊ポセイ。
[新参者には負けんで〜]
南部訛りの伸び伸びとした声でポセイが言う。
「ポセイ、煽らない。さて、これから教えるのは簡単、でも精霊術士にとって最も重要な事だ」
師匠は真面目な顔で話し出す。
「精霊術は精霊との協力が不可欠。だからこそ能力の把握、精霊の様子、精霊との共有が必要だ。特に共有が重要よ」
「共有?」
「ああ、教えてなかったね。魔法では魔力を集める場所、精霊術では
「門ですか・・・」
「難しいだろうが門は肺と肺の間にあると言われている。そこは心臓のすぐ横ということで古来から神聖な場所と言われている」
「聞いたことあります!」
「だろ?その起源こそ精霊術だ。精霊と繋がる大事な場所だからこそ昔から言われている」
私は言われたことに納得した。
でも、
「どうやればいいんですか?」
教えてもらってもやり方が私には分からない。だから師匠に聞いた。だけど、
「我は感覚派なんだ。というより精霊術士はほとんど全員が感覚で精霊術を使っている。呼吸をするみたいに」
「そう、なんですか」
「ああ、だから、地道に見つけるしか無い、と言うしか無いな」
[おい、話は終わったか?]
今まで黙っていたクロが精霊語で話しかけてくる。
「うん、一応」
「こっちは終わったぞ」
クロに答えるように師匠が言う。
[なら話そうか、僕のスキルを]
「クロのスキルって何?」
[おい、その前に意思疎通か始めないといけないぞ]
「意思疎通?」
[ああ、契約者と精霊同士でしか会話をしないことだ。このまま精霊語で話すとあそこの女たちに能力がバレる]
「師匠だけど?」
[だとしてもだ。意思疎通は精霊術の基本だ]
・・・覚えることが多すぎる!
[いいか、僕にだけ意識を向けろ。そうだな、この前の契約をした時の様な感覚で]
そう言われても・・・・・・
私は意識をとりあえずクロへと集中させる。
少しするとこの前と同じ様な時が止まった感覚に陥る。
真っ白い空間に光る物体と浮く私。
[ここは?]
「ここが門だよ」
[へぇ〜そうなんだ]
あっさりと出来たため少し呆けてしまう。
[さあ、スキルの説明をしよう。僕は時空の精霊。時や空間に干渉できるのだよ。多く持っているのだが、まずは初級を授けよう]
[初級だけ?全部は教えてくれないの?]
[僕のスキルは強力な分、使い方を間違えれば大きな事故に繋がるのだよ。だから慣れが重要。初級は僕のスキルの基礎の基礎。これさえ完璧にこなせれば中、上と使うことができる。だから、ここ数年間は初級を使ってもらうけどいい?]
私は素直に頷く。
[よろしい、では初級のスキルを教える。初級は主に三つ。【ストップ】、【グラビティー】、【ライツ】だよ]
[どんな効果なの?]
[簡単だよ。ストップは時間を数秒止める、グラビティーは重力操作、ライツは空気調整だよ]
[?]
[う〜ん詳しく説明か。ストップは時間というものを操るんだよ。これから練度を上げていけば止めれる秒数が増える。グラビティーは空間を重くすることができるんだ。まあ、結構難しいけど。最後のライツは空気、まあ、大気と行ったほうがいいかな。とりあえず大気をいじるのだよ]
詳しく説明されても私には分からない。
[どういうことかもう少し説明して!]
[まあ、そう慌てるな。僕がじっくりと教えていく。今日からよろしくな]
[う、うん!]
聞いている限り結構難しそうな能力ばかり。
時間、空間、大気。
これらを操らなければならない。
厳しい訓練かも知れない。
でも、これから楽しくなる気がする。
こうして私の特訓が始まった。
―――
スキルについての説明は後々書きます
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