第4話

 私と美智子の間には息子が2人できた。

 その後も美智子の予知的なエピソードは絶えることがなかった。


 例えばかくれんぼをすれば、子供たちがどこに隠れていようと全く迷うことなく一直線に隠れている場所に行っては子どもを不思議がらせていた。


 そして小学校に通う頃になると、私に対して息子までもが鋭い言い返しや先を読んだような言動をとることがあった。


 後から聞けば、息子たちは決まって「だって母さんが教えてくれた」と白状してくれた。

 どうやら美智子が「きっとお父さんはこう言うだろうから、その時はこう言いなさいね。お父さんも今は渋ってるけど行ってみたらきっと後で『楽しかった』って言うわよ」というようなことを入れ知恵していたようだった。


 まるで台本が書いてある演劇の中に入れられてしまったような感覚だ。

 美智子の手のひらの上で転がされているのはわかっていたが、出不精だった私は幾度となく家族で釣りに出かけたり遊園地に行ったり、キャンプをしたこともあった。


 今になって昔の写真なんかを見返してみれば、それはどれをとっても我々にとって何事にも替えがたい貴重な思い出になったように思う。


 あまりにも物事が美智子の言う通りになってしまって悔しいので、当の本人に理由を尋ねたこともある。

「だって、なんとなくわかるんですもの。それにあなたって、わかりやすすぎなんですもの」

 と言われてしまった。


「たまにお前が、もしかして未来が見えてるんじゃないのかって、怖くなることがあるよ」

「あらやだ人を占い師みたいに。なんでもは分からないわ。私のよく見知ってる人のこととか、身の回りのことだけよ」

 と、そう教えてくれた。


 少しだけでもわかるのは、それは十分に占い師めいていることだと思ったけれど言わないでおいた。

 きっとコイツのことだから、私がそう言おうとしていることも、そしてやめたこともわかっているに違いないからだ。


 しかしたまに私はこの美智子の力を少し嬉しくも感じることがあった。


 なぜなのか。


 長年そのことを自問自答を繰り返した末、最近思いついたことが1つだけある。

 それは、こんなにも自分のことをわかってくれている人が、この地球上に、しかもこんなに身近に存在するということが、単純に嬉しかったのだ。

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