真相は胸の内に
リカルドは半刻もしない内にバタバタ帰ってきた。
「ほれ、兄貴の思ってた通りだったな」
執務室の机の上を転がる小さな瓶。
精巧な作りで平民が扱える代物では無い。
「確信はしていた。証拠が欲しかっただけさ。……この家紋は? 」
「兄貴の確信通り。ローレンツ侯爵家、王妃の実家だ」
買っては足がつくが、貴族のお抱えが造る場合は紋章入りが絶対だ。世界には我が帝国を合わせて10の国がある。全ての国で義務付けられている。
王家とて例外は無い。足がつかないようにと犯せば罪は重くなる。中身が無くなろうとも、作成者はすぐにわかるようになっていた。あってもなくても割り出せるわけだ。
「……裏付けも済んじまったな。そういや、名前なんて呼んでるんだ? 」
「ミレーヌ」
「ブッ……ゲホゲホ! 」
「俺が1週間悩んだ名前だぞ? 」
「王妹も『ミレーヌ』なんだよ」
「偶然か神の思し召しか……」
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ーーー夕食は、顔がソックリなふたりの対象的な会話が印象的だった。
「物物しかったのに。久々に男性の兄弟ってああなのかしら」
ーーーズキッ
胸に痛みが走る。けれど一瞬で。
•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。
またあの夢だ。
急いで懇々と眠り続けている青年の元に向かう。
変わらないはずの夢が揺れた。
青年の瞼が動き、瞳がうっすら開いた。
٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。
パチっと目が覚めた。
(もう少しだったのに……あれ? )
ガバリと起き上がった。
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「……姫に趣味はあったか? 」
「趣味? 専属メイドが勧めた娯楽小説を読み耽ってるって言ってたくらいだぜ? ……って兄貴、聞いといて寝るのかよ? 」
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またあの夢。
……動く。瞳が開けられる。
今こそ君の姿を。
薄ら開いた瞳に朧気ながら映るのはーーー。
٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。
ハッと目を覚ます。
「え? 兄貴? 」
(あれは……)
扉を開け放ち、走り出す。階段を駆け上がると彼女が部屋の前にいる。
「……! 」
姿絵と寸分変わらぬ美貌の姫がそこにいた。
異世界人ではなかったのだ。
残念さと逸る気持ちを胸に近づいた。
~fin~
覚めない夢は甘過ぎる 姫宮未調 @idumi34
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