第5話 ケンイノコトバ 1

 低能は、知ったことをすぐに使いたがります。

 どこかの校長先生で、こんな人がいたそうです。


 ある経営コンサルタントか何かをされている方の講演に行って、そこで聞いた話に感銘を受けたのか、あるいはこれを自分の職場でうまいこと使えそうだなと思ってか、まあとにかく、これとなったらさあ、ダボハゼのごとく、その講師の言葉を何やら持出して、ひんしゅくを買ったそうです。


 それがどんな話かは覚えていませんが、問題になったのは、これ。

 優秀な人を「人材」というのはいいが、そうでない、課題のあるような人に対してね、「人材」ならぬ、、、

「人罪(じんざい)」!!!

って言葉を使ったのよ。

 御丁寧に、御自身の勤務先の学校で保護者なんかにも配る頼りか何かに。

 教師間だけならまだしも(それでも問題だが)、まして保護者に配るとは。


 期せずして、その経営コンサルタント氏の講演内容が

「ケンイノコトバ」

になってしまったわけです。


 校長先生ともあろう御方が、どこかで知ってこれはいいと思った挙句に見境なくそこで使われていた言葉をちゃっかり盛り込んで、自分の主張内容に取込む。

 まさにこれ、小学生あたりが何かのきっかけで、たいていは先生がたまたま言った言葉なんかが多いけどさ、ことわざを知るじゃないですか。それを使って、あちこちで使いたがる状態。それ、何とかの一つ覚えじゃねえかと思うけど、ズバリ。

 小学生ならまだかわいげもあるし、言葉を知って使うことは大事や。

 やり過ぎたらそれは控えなければということを知るのも勉強よ。

 だけどな、ええ年のそれなりの地位のある人のすることではないわな。


 この前、こんな勉強してきたんだぞ!

 ねえねえ、どう?

 こんなのって、こういうふうに言ってやればいいんだぞ!

 ほら、すごいでしょ。

 ボクチャン、すごいだろー!

 ワタシって、すごくないかしら!


 そんなことを言う50代(くらいでしょう)のおっさんやおばさん見て、皆さんどうですか?

 そんな話なのですよ、これね。


 なまじな能力を身に着けてそれを見境なく使うのはまさに、無能というよりは低能の面目躍如とさえいえるオハナシであります。

 まさに、何とかの一つ覚えの典型的な事例ではないですか。


 こんなのは、親しい人との酒の席か茶飲み話の場までにしておこうぜ。

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