第70話 (後日談3)家族呼び寄せ

上海市政府はコロナ禍以降、外国人駐在員の家族呼び寄せを厳しく制限していました。


私の赴任が決まった2021年初の時点では家族ビザは完全にストップしていた為に単身赴任していましたが、その後、2021年秋頃から徐々に緩和されていきました。


厳密には、ビザを取る為に地元政府に出して貰う招聘状(所謂「インビテーション」)の発行が制限されていました。


業種や会社の所在地によって政府の対応は異なっていたのですが、私の勤務先が所在する地元政府からは、1度に申請出来る家族の数が制限されていた為、私の家族の呼び寄せ招聘状が申請出来るのは何と半年以上先(!)という状況でした。


結果的には「そんなに待てない」と家族呼び寄せをあきらめた方が続出した為、2022年に入ってすぐに私も家族を呼び寄せる為の招聘状申請を地元政府に出すことが出来たのですが、その認可が出たのはロックダウン開始直前。


なんとか日本にある中国大使館にビザ申請は出せたものの、上海がロックダウンに入り色々な混乱の中でビザ発給も制限され、手続きは遅々として進みませんでした。


中国ビザ取得には、必ず本人がビザセンターに出頭し、顔写真と指紋を取られるのですが、ビザ発給の数量を制限していたためにその予約が全く取れない状態が続きました。


然しある日突然、ビザ取得代理店の旅行会社から「明日のビザセンターにキャンセルが一つ出ました。このタイミングを逃すと招聘状期限切れになる前には次の予約が取れないかもしれません」とのことで、家族は急遽仕事を休んでビザセンターへ。


そんなこんなで家族は何とかビザを取得するも、私はロックダウンの真っ最中。


家族と相談し、流石にこんな状況で上海に来るのは無理だと諦めかけていたところにロックダウンが終わったことから、私が日本に戻って家族を連れて上海に戻ることにしました。


然しその当時、私が日本に戻るのも非常に大変でした。


日本への入国にも中国に戻って来るにも双方向でPCR検査陰性証明が必要なので、検査予約を取って検査陰性証明を貰うのがまず最初のステップ。


尚、ロックダウン終了後は、スマホ健康アプリの緑色健康コード取得の為、ほぼ2日に一度PCR検査を受けていましたが、日本政府はこの検査結果を入国用には認めておらず、町中の仮設プレハブ検査場で受けたPCR検査とは別途で専門の病院にて検査を受け、日本政府指定の要件を含んだ陰性証明を取得する必要がありました。


そもそもロックダウン終了直後だったため、再び外出制限が掛かれば空港に行くことすらできなくなります。


そんなこんなで私は6月下旬に何とか上海を脱出し、家族とともに7月上旬、再び上海に血を踏みました。もちろん入国隔離付で。。。


当時、少なからぬ友人からは「そんな目に遭ってまで上海で仕事をする必要はあるのか。そんな会社は辞めて良いのでは。少なくとも家族を連れて行くのは取りやめるべきでは」など暖かい(?)アドバイスを頂戴しました。

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