第35話 世界終焉生物
◇
「親父!」
「ああ、分かっている。そっちは任せた」
俺は集落の方へ駆け出した。あの二人ならきっと対処できるはずだ。もしものことがあれば、スキルを使って状況を打破するだろう。
「逃しませんよぉ!!」
神狩が追ってきた。鬱陶しい。
「練・サーブルショット」
神狩自体に攻撃力や耐久力はない。鉄塊は神狩の腹部を貫通した。しかし、倒したと思えばまた新しく神狩が出現する。厄介なのは、複製した神狩が独立した意思を持って行動する点だ。俺でも複数の敵を一度に対処するのは容易ではない。
ここは
「本体を探しているようですが、本当にその方向で合っていると思っているんですかねぇ? 私の言葉は嘘かもしれませんし、村長として数十年を過ごした事も嘘かもしれませんよねぇ!」
「貴様がそんな嘘を吐いて何になる? 無意味だ」
それからは耳を塞ぎ、ひたすら木々の間を駆け抜けた。神狩はこちらの力が絶対に上回っているのを悟ったのか、あれ以上攻撃などを仕掛けることなく去って行った。
燃え上がる炎が見えた。
それと目が合った。俺は一瞬で神狩だと理解した。……何が嘘だ。
「……やはり、人々が滅ぶのを見るこの支配感は実に堪らない!! 一生このまま幸福に生きたいものですねぇ」
「俺に聞こえるように言ってくれるとは、随分と気前がいいな。神狩」
「私の人生においてこれ以上の幸福はございません。私は今、最も高揚感を覚えているのですよぉ!!」
悪魔のような声が集落に響いた。いや、悪魔の声が集落に響いた。それは本質的には悪魔と何ら違いはなかった。どちらかと言えば、神狩の方がより悪魔らしいとまで思えた。
風が強い。吹き付ける熱風は目を刺しているようだった。
「練・サーブルショット!」
塔は想像以上に脆く、大きな音を立てて崩れた。気付くと、神狩の姿が見当たらない。さっきまで感じていた、少しの魔力も消えている。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!!」
背後から声と手拍子がした。いつの間に背後を……
「私の三つ目のスキルを言っていませんでしたよねぇ。そう、三つ目は
神狩はどこからともなくナイフを取り出した。恐らく小型の魔物のスキルを利用したのだろう。小賢しい真似を。
「重・スウェフト」
その隙に下がった。しかし、目の前にあるのは形の窪んだ塀だけ。
「その程度では、私から逃げる事すらできないですよぉ?」
また背後を取られた。移動する姿も見えない。どう対処しろと言うんだ。今括で逃げてもすぐに追いつかれる。これは、賭けだが、やるしかないようだ。
「……逃げない? そうですかぁ、諦めたんですねぇ。可哀想に。では、慈悲として苦しくないよう殺しましょうねぇ!!」
喉にナイフの刺さる音がした。何度も経験しているから、今ではどうでもいいように思えた。
「カハッ__」
膝の崩れる音がした。相当痛みが来たらしい。
「どうだ、急所に刃物を刺された感想は。ああ、そうか。喉が潰されて声が出ないか。残念に」
「キ、キサ、マ……なぜ、無、傷で、そこに……立ってい、る……」
神狩は苦しそうにもがいていた。喉に刺さったナイフを取ろうとするが、痛みのせいで躊躇しているようだった。
「まだしてなかったよな、自己紹介__」
年齢274歳。性別男。昔、国の最重要保護機関によって収容されていた、ソライン家という化け物の根本となる人物。
「俺の名はフェノー・ソライン。スキルのを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます