最終話 もう1人?
と、言うわけで職員室に来たのだが――。
何故か薄緑、雫、光世、長光が付いてきた。
薄緑と雫は、まぁ護衛対象と式神だから解るけど。
長光さん達は何故きたよ。
長光は『視線で人を殺せます』と言わんばかりの眼光で無言だから理由は聞けない。「俺と帰りたいのか?」とか聞いた日には、内臓をスクランブルにされそうなので。
「失礼します」
「おお、来たな。……浅井だけ入って来い。ほれ、こっちの面談室に来い」
「はい」
「さて、呼び出して悪いな。お前に注意……はなんだかもう必要なさそうだから、確認だけしておこうと思ってな。お節介をやかせてもらった」
「確認、ですか」
「ああ。お前は姫殿下の護衛に選ばれてよぉ。嬉しくて、はしゃぎたい気分か?」
「それは難しいところです。光栄と誇る気持ちもあれば、身の丈に合わない。そう思う気持ちもあります。……とはいえ、お任せいただいたからには全力で、責任を持って取り組むべきというのが心情です。個人的な事を言えば、とても良くしていただいているので喜ばないのは、かえって失礼かと思います」
「そうか……」
少し考えるように北谷教諭は相談室の窓から空を眺め――言った。
「気持ちはわかるが、余りはしゃいだり喜んだりするのは控えた方がいいぞ。特に、仲の良い奴の前では」
はい?
「それは、どういった意味でしょうか?」
「……お前のことを熱く。羨ましくなるぐらい熱ーく想って護衛に指名していたのは、姫殿下一人じゃないってことだ」
「……は?」
「――いや、なんでもない。これで俺のお節介は終わりだ。後は自分で考えろ。はい、お疲れさん」
そう言って一足早く北谷教諭は面談室を出て自分の執務机へと移動し、黙々と作業を開始した。
俺はもやもやした気持ちを抱えながら、職員室を「失礼しました」と言って後にした。
職員室前にはまだ四人が待っている。
俺は長光に視線を向け、じっと考えを巡らせる。
「……なんですか?」
「――いや、なんでもない。ただ、うちの義妹に会えて本当によかったなって」
「なんですか、それは」
くるくると髪をいじりながら、長光は視線を逸らす。
その姿に苦笑しながら、俺は愛すべき皆に告げる。
「――さあ、帰ろう。今日も楽しかった!」
「うむ。あ、安綱よ。そういえば、そなたは此方をぶん投げた罰をまだ受けていなかったのう」
「え?」
「いや、なに。約束は約束じゃからな。薄緑よ、どこかに良い罰を与えられる場所はないか?」
「ん。うちの刑場に、石抱き場が、ある。確か、しばらく誰も使って、ないよ」
「え」
「ほう、それはちょうど良いのう」
「あ。私もお付き合いしますね」
「え、いや、あの」
「「「問答無用(です)」」」
「……はい」
生きる――活きる希望のある世界は、人生はこんなに美しかったのか。
俺は未だない満足間を抱きながら心から笑い――。
――ズキッと自分の頭を襲う頭痛も気にせず、笑顔でみんなに連行されていった。
いつまでこの世界に居られるかは分からない。
それでも、今この瞬間。
俺は誰よりも幸せだ。
心からそう思える
異世界に陰陽師として転生したからには……。
これからもハイテンションで、全力で道化になり楽しんでいこう――。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
一先ず、これで文庫本換算で1冊分。完結という形にさせていただきます。
本当にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
他作品も含め、これからも応援してくださると嬉しいです!
・『生き別れの妹とダンジョンで再会しました』
・『幸せで飯を喰う女×不幸で飯を喰う男の1LDK』
↑
カクヨムコン9に参加中の、この作品たちもどうぞよろしくお願いします!(゚∀゚ )
やり直したからには、レッツゴー陰陽師!~社畜予備軍おっさんの青春リスタート~ 長久 @tatuwanagahisa
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