第51話 涙?
「この結界は、
「な、なに、それ……?」
『――人は皆、
「つまり、だ。俺が死ねば、俺の霊魂が
『なんと愚かな事を……!! そなたはこの力が真に発動した時、自分がどうなるのかわかっているのか!? そなたの魂は、悠久に痛みを伴いながら
「雫、俺は賢くないからさ、先のことなんて考えてられないよ。頭が良ければ今頃は医者になってる。今を生きることだけで精一杯でさ――迷惑をかけて、ごめんな」
『この、たわけものが……っ』
雫の刀身から水が染み出してきて、地面を濡らす。
刀身に血が付いているわけでもないのに。
「なんだ、おもらしか?」
『違う!! そなたは、そなたは……絶対に不幸にさせない、幸せにすると、此方は誓ったというに……!!』
「なんだそれ? 俺の記憶にはないな。でも、悪いが俺は不幸じゃないよ。今は、ね」
『この、おおたわけものが……っ』
嘆き、悲しむように雫が声を絞り出す。
「なんだよ、それ」
鬼女が、俯きぶるぶると震えている。
右手の爪は握り絞めながら肉に食い込み、ぽたぽたと血をだしている。
「なんだよ、それ!! それじゃ、君を殺したらぼくは誰も連れて帰れないじゃないか!?」
「ああ、そして、もし無理矢理誰かを連れ去ろうとしたら、俺は自害する」
「ッ!!」
鬼女が更に息を飲み、事態を把握していく。
「それじゃあ、ぼくには何も得がない!! 君も殺せなければ、誰一人として連れ帰ることもできない!!」
「ああ、残念だったな。――
「――ッ!!」
――ドッ!!
怒り狂った鬼女が、俺の腹に蹴りを入れてきた。
筋肉や臓器を打ち付ける鈍い音が、静かな夜の川に木霊する。
「ぐっ……」
「そうだ、そうだそうだそうだ! 死なない程度に君を、痛めつける!! 少しでも、少しでも気張らしをしてやるよ!! クソがっ! クソがっ!!」
「ぐ、あ……ッ」
何度も、何度も腹を蹴られる。
先ほどの攻撃で内蔵にダメージを負った部分に、更にダメージが重なる。
『安綱。今から、此方も覚悟を決めよう。此方から出ている
「……お前のエキスを、俺の口から飲めって? とんだ変態だな」
『そうじゃ! 変態じゃ! そなたはそれぐらい
無茶なことを言う。
でも、
本当は俺のことを凄く心配してくれていることが良く伝わる。
だから俺も冗談で返答して、なんとか笑わせたくなってしまう。
確かに雫の言う通りだ。
俺はこの世界で生きる機会を得た際に、こう思ったはずだ。
『この機会を、全力で楽しんでやる』と。
もう、希望も救いもない灰色の日々は嫌だ。
美しい色に満ちた世界で笑顔に包まれたい。
活きるために、生きる。
――活きていない生。
そんな日常には、もう戻りたくない!!
「飲んでやるよ、雫エキスをゴクゴクとっ!」
薄皮が多少切れようが構わない。
刀身を掴み、刃先を直接口内に突っ込み、雫からしみ出てくる液体を嚥下していった。
「……痛みが、楽になる? 力も……!!」
少しずつだが痛みは収まり、自らの身体が軽くなってくるのを感じる。
これは、凄い。
雫のエキスをもっと貰えば、もしかしたら――まだ、まだ戦える!!
―――――――――――
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