第30話 耳年増
一回やらかしている以上強い事は言えない。
――が、この提案内容は絶対に入浴中の女性陣と俺が出くわさないように配慮が成されている。
そして洗濯物にも一切近づくことなく、俺の部屋への異性の訪室は禁止。
結論的に言えば、これは雨雫がどうこうではない。
俺を隔離するシステム作りのようなものだ。
義妹にこれほど危険視され、避けられるのは正直いって悲しい。
でもまぁ、年頃の男女兄妹っていうのは案外こういった関係性なのかも知れない。
実際に妹がいたわけではないからわからないけど。
「これは皆が安心して快適に暮らすための提案です。お父さん、お母さんは何か意見ありますか?」
その問いに、義父母は「大丈夫だよ~」と手をふりながら楽しそうに笑っている。
「ありがとうございます。では、公平に多数決を取りたいと思います。これで良いということで賛成の方は挙手を御願いします」
女性陣はもちろん両親も賛成だろうし、俺も多少得心行かぬ気持ちはあるものの、異議を挟む程に不服という訳では無い。
これは決まりだろうなあ、と思いながらすっと手を上げようとしたときであった。
「異議あり!」
笑顔で眼鏡をいじりながら多数決を取る長光の言葉を、椅子をガタっと鳴らして立ち上がった
そのまま
「な、なんですか? そ、そんなに気にいらない内容ですか?」
「いや、そこまでではない。一度こうして異議を唱えてみたかったのじゃ」
ふふふ、やっとできたとご満悦な雨雫。
俺と長光が向ける冷えた視線を意にも介さず、雨雫は
「基本的に此方は長光の意見に賛成じゃ。多数決的にも決定で良いだろう。――じゃが、
へらへらした笑顔の中に、強い意思を込めた眼をしている。
「私と同室は、嫌ですか?」
心なしか寂しそうに長光が問う。
なんだかんだで同級生(?)の同性と一緒に住むことを楽しみにしていたのかもしれない。
「そうではない。別に長光と同室ということが嫌な訳では無いぞ」
「では母さんの部屋にしますか? 本当なら一人部屋の方が落ち着けるかと思いますが、部屋数も限られていますので、そこはご理解いただけると……」
「そのような贅沢は望んでおらぬよ」
「では、雫さんはどうするのがいいと思いますか?」
うむ、と言って腕を組み直すと雫は俺に視線を向けながら、意見を述べた。
「
「「え!?」」
俺と長光の声がシンクロした。
長光がキッと俺のことを『どういうことですか!?』と言わんばかりに睨みつけてくるが、俺は知らない。
ぶんぶん、と必死に涙を浮かべつつ首を振る。
俺は無実です!
もうオールナイトでのお説教は勘弁してください。
この
「お前は何を言ってるんだ!? 男と同室を希望とか、
「神聖なる此方に向かってまたも妖刀呼ばわり!! まして何じゃその淫刀とは!?」
「
「誰が淫猥じゃ!! 言葉責めが趣味の変質者に言われとうないわ!!」
「そんなもん趣味じゃねぇよ!! 俺は紳士を目指してるんだ!」
「そなたのどこが紳士じゃ! 紳士は紳士でも変態紳士がいい所じゃろうが!!」
「あ!? 清楚系ビッチ(笑)のお前に言われたくねぇよ!! いい加減にしろ!!」
「いい加減にして欲しいのはお二人ともです!」
長光の一喝で
「義兄さんも下品な言葉使いは辞めて下さい。せっかく最近はまともな事が多かったのに……・。とにかく話を纏めましょう」
長光は疲れた顔でふぅと息をつく。
「例え式神と言えども、雫さんは女性です。ましてや綺麗でスタイルもいい。そんな雫さんを義兄さんと同室にはできません」
きっぱりと言う長光に、雫は不適な笑みを浮かべる。
「ほう、お主は、そうかそうか……」
「な、なんですか?」
「いやぁ、耳年増がここにおったかぁと思ってのう」
「誰のことですか!?」
「長光は、愛する大切な兄と此方が淫らな関係になるのではないか、と心配しておるのであろう?」
「なっ……愛!? ち、違います!」
耳まで真っ赤に染めて長光が声を張り上げて否定する。
ほうほう……。
――続けてくれたまえ?
―――――――――――
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