第28話 友よ! 都合の良い友よ!

 時は流れ昼休みとなった。


 中休みの度に走って男子トイレの個室に駆け込んでいた。

 しかし昼休みはそうはいかない。


 長いし、食事もとりたい。

 俺は授業が終わると即座に前に座る光世に声をかけた。


「よし、光世みつよ。食堂に行こう。金平かねひらと、国行くにゆきと――いつもの四人ッ!! でな」


 名前と四人でというのを強調して誘う。これで他の人は入って来にくくなるはずだ。


 まずは親しい所に詳しく説明する。


 そうすれば、あれどうなってんだ?

 という質問は俺だけじゃなく――他の三人にも集中する。


 完璧な戦略だ!

 仲間なんだもん、助け合おうよ。

 友達でしょ!?


「う、うん。僕も安綱とお話したかったし、いこう」


 声が聞こえていたのだろう。

 金平と国行もこちらに歩いてきた。


 しゃぁああああああああああおらぁあああああああああ!!

 かかったぁあああああああああああ!!

 計算通り!

 今日の安綱さんは寝不足でテンション高めですよ!!


 俺は三人を押すようにすたこらと食堂にいくのであった。


 券売機で素早く食券を買い、おばちゃんに「なるはやで!」と御願いした俺は、窓際最奥の席を取っていた。

 他者がなるべく近づかないようにと考えた結果である。


 約三分後。


 俺が取った席にほくほくと湯気を立てる美味しそうな学食を置く七名が座った。

 そう、七名である。


「安綱、無視は、ひどい。ご飯食べながら、ちゃんと説明しよか」


「義兄さん、私も同席させていただきますね? 雨雫あめのしずくさんのサポートは義兄さんの監視と同意義ですから」


「そなた等、雨雫では長かろう。それにその名前はいみなでもあるしのう。あまり安売りされとうない。此方のことは雫とでも呼ぶが良い」


 本当、なぜこうなった……。


 思わず額に両手をあてながら天を仰ぐ。

 昨今、男性の草食化がうんたらかんたら言うが、少し違うと思う。


 女性陣がアグレッシブすぎるわ!

 男性を上回る行動力に引くんじゃ!

 俺の心情を察してか、光世と金平は苦笑いを浮かべている。


「いいなぁ、安綱」


「……何が?」


 国行だけは羨ましそうにこちらをのぞき込む。


「だって安綱を追って三人も可愛い子が追ってきてるんだぜ? これまるでハーレムみたいじゃん。男の夢みたいじゃん?」


 国行の指摘に俺ははっとした。

 そう、内面は置いといて、外見は美しい三人の女性。


 凄く前向きに考えればだ。

 三人と俺の今の関係はきっとこうなる。


 薄緑は俺を慕い、一緒に物事を楽しむ天然な部分がある可愛い彼女だ。


 長光はそんな彼女といちゃつく俺をみて、『お兄ちゃんは私のなんだから、他の人といちゃいちゃしちゃ駄目!』と嫉妬する妹だ。


 雨雫は……式神だから結局俺に逆らえない。

 となると、普段は勝ち気だが本当は俺の言うことをなんでも聞くボディガード兼メイドさんだな。

 服も変幻自在だし、立場によって様々なコスプレも出来るだろう。


 何をやれやれ……みたいに嘆いていたんだ俺は!!


「国行。俺は勘違いしていた。これ、完全にハーレムだわ……」


「違うからね!? しっかりして!」


 光世が顔の前でぶんぶんと手を左右に振って否定する。


「安綱、貴様は疲れているのかもしれないな……」


 金平のシルバーフレームの眼鏡から、憐憫の眼差しが覗く。


「ハーレム、て何?」


「ほう、此方こなたをハーレムにのう。良い度胸じゃ。食いちぎってくれよう」


「義兄さん。姫殿下や雫さんに変な事をしたら……わかっていますよね?」


 ハーレムの意味を理解していない一名は除くとして、国行を除く全員から賛同が得られなかった。


 やばいな。

 俺、寝不足で思考がいかれている。

 明らかに正常思考ではない。


 考えてみれば精神は以前の世界の俺でも、肉体はこの世界の安綱のものなのだ。

 徹夜慣れなどしていない脳に過負荷をかけすぎた。


「えっと、さ安綱。安綱自身もきっと大変だったんだよね? 僕たちも昨日、雫さんと式神契約を交わすに至った経緯とか、なんで今日には転校生になって一緒に勉強しているのか、とか。……姫殿下と安綱の関係とか(ぼそ)。興味が有るからさ、説明してもらってもいい? 多分、安綱にとっても状況の整理になると思うんだよね」


 光世は頬をポリポリ掻きながら微笑を浮かべてる。

 がちゃがちゃ訳がわからなくなっていた状況を打開するような、正鵠せいこくた光世の指摘に俺は身を震わせ感激した。


 ちくしょう!

 なんて気遣いの出来るいい人間なんだ。

 お前がもし女だったら確実に惚れていたのに!!


「その通りだな。まぁつまりはだ――」


 俺は昨日祈祷殿で起きたこと。朝に学園長室で起きた事。

 そして姫殿下――薄緑と出会ってからのことを全て説明した。



―――――――――――

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