第26話 ナイスプレス!
「――さて、といったことが先ほどあった。
「うむ。皆の者よろしく頼むぞ」
既に気分を切り替えたのか雨雫はノリノリで教壇で挨拶していた。
装いは金色の和装からこの学園の女性制服にいつの間にか変わっていた。
――人外の存在って便利だな。
経費が浮いて助かるわ。
「基本的には浅井――安綱の方がお世話するが、彼女は普通科に編入していただくことになった。そこで、普通科生徒のだれかにもサポート役についてもらいたい。誰かやっても良いという
そのような情報は初めて聞きましたが。誰もこんな謎存在の面倒なんかみたくないだろうにと俺が少し焦ると、すっと一人の手があがった。
「私にやらせてください」
長光であった。
「浅井か。確かに、家でも学校でもサポートできるとなると最適任だろうな。とはいえ、負担も大きいはずだが本当にいいのか?」
「はい。お世話をする相手が一人でも二人でもあまり変わりません」
「「「それもそうだよな」」」
「おい」
「じゃあ席は浅井安綱の更に廊下側にもう一席用意しよう。ちょっと通りづらくなるが、みんな我慢してくれ。では、あとは任せたぞ。机は準備室にあるから」
俺と雨の雫が揃って突っ込みをいれるも、さらりと流された。
北谷は後は任せたとばかりにすたこらと立ち去っていった。
……とりあえず席を運ぶか。
「じゃ、そっちを持って」
「
「いや、自分で使う席なんだから自分でやるのが当たり前だろう」
「そなたに任せるぞお世話係よ」
これはよくないな。
自分のことも自分で出来ないようでは困る。
そして、誰かにやってもらうことが当然のように思っている。
世話係としてこれを許して良いのだろうか?
否!
断じて否である!!
「――
「なっ!?」
ふんぞり返っていた雨の雫の全身が、ぽうっと光を発した。
どうやら呪文の効果がでたようだ。
雨の雫は「卑怯だぞ――!!」と叫びながらもてきぱきと一人で席を持ち上げ、俺の廊下側に席を設置した。
凄い力だ。
みんなぽかんとしている。
「これでよし」
「……
しょぼん、としている姿にちょっと申し訳ない身持ちになる。
しかし素直に自分のことをやっていればこんな思いなどせず、みんな気持ちよくいられるのだ。
これからお世話係としてちゃんと教えていこう。
これからどうなるのだろうか、と思った授業中。
雨雫は意外にも真面目に授業を受けていた。
教師はいつもと違う席の並びに若干の違和感を感じていたことだろう。
二列ずつ規則正しく並んでいた席が、一箇所だけ三列になっているのだ。
違和感を覚えて当然だ。
そういば、どこかの文献で人間は規則正しく物が並んでいる中で一部違う部分があるとストレスを感じる、といった文献を読んだことがある。
今の状況は教壇で全体を見つめる教師からしたら、さぞかしストレスだろう。
しかも俺を覗くメンバーがまたエグイ個性の固まりなのだ。
教師から観て左が
中央に俺。
右に式神である
更にだ。
本来机が二台しか入らない場所に、無理矢理三台机を突っ込んでいるのだ。
当然、三人の距離も普段より断然近い。
精神的な意味では無く、物理的に近い。
威圧感の固まりである。
でもね、先生。
申し訳ないですがあなたよりもストレスを感じている人間が――この教室にはいます。
そう、俺です――。
―――――――――――
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