第21話 じ、事故!?
集中していて気が付かなかったが、既に陽が傾いてきている。
平時の授業日であれば既に下校しているだろう。
周囲にいる
光世が
体力のありそうな金平も、国行も同様だ。
「……思ったより進行の時間が掛かってしまった。いいか、時間は十五分が上限だぞ。それ以上過ぎたら
「……はい」
いつもは軽い口調の北谷教諭が真剣に忠告してくる。
自分を覗く三十九名がすんなり順調に進行していたので緊張感が薄れていたが、この儀式が時として死人が出るほどに危険であったことを、改めて思い出した。
もう一度、気を引き締め直そう。
祈祷殿の前で一度立ち止まる。
脳内で学んだ儀式の流れや呪文を
――祈祷殿の中に入った瞬間であった。
「寒い……」
明らかに空気が変わったことを感じる。
自分は普段居る世界とは別の場所――
上手く説明できないが周りの空気や背筋を伝うひんやりした感覚からそう感じる。
俺はゆっくりと失礼のないよう神鏡の前に正座し深く礼をした後、邪気払いの呪文を唱えた。
心を落ち着かせ、
思わず指にも力が入るし、結んだ指も汗で滑りそうになる。
「……ナウマク・サンマンダ――タラタ・カンマン」
身を清めた後に式神召喚に必要な呪文を唱え始める。
――まず、強い力を持つ事。
出来れば凜として、品格がある姿がいい。
そして優しい心と人を想う気質。
この条件を兼ね備えていればきっと良い関係を築き上げることができる。
脳内で強くイメージを行う。
言霊に乗せた念力を神鏡に飛ばす気持ちで、俺は遂に式神召喚の
「
――言の葉を流れるように紡ぎ終わった瞬間、それは起きた。
「……な、なんだ?」
急に地震でも起きたかのように、神鏡台がカタカタっと音を立てて揺れ始めた。
やがて揺れは大きさを増し、
同時に祈祷殿の
「――結界が張られた!? 脱出を封じられた、え、うっそおおおお!!」
あまりの衝撃に俺は思わず正座を解き――
目の前に大きな力がごうごうと集約してきているのが解る。
――明らかに異常事態だ!
「カメラを見てる先生達、助けてプリーズ本気ですぐにッ!!」
逃げようにも腰が抜けて動けない。
集約された力はやがて実態を成し――それは
金色を基調に見事な塗り、
金色の
「――かた、な? なんで?」
空中にふわふわと浮いている太刀は俺の声を聞くと、鞘から刀身がスッと抜けた。
――そして抜き身の刀身の切っ先を――俺にグンっと向けた。
本能で解った。
「……はいはい、逃げなきゃ死ぬやつですねぇ、これ」
――ギュンッ!
「だぁあああああああああああああああッ!!」
腰が抜けて力の入らない足腰など知らん。
腕の力を使って後ろにジャンプ。
――どすっ。
先ほどまで俺の股間があった所に、切っ先が深々と刺さった。
「あっぶねぇっ……!!」
『――ふん、避けられたか』
「え……?」
『美しい
「……え、刀が喋ってんの?……マジで?」
『目の前で起きていることが現実である。常識的に考えよ』
「あ。そう……ですかね?」
喋る刀に常識を説かれるとか。どうかしているぜ。
『さて。そなたが我を使役したいなどと願う故、遠い所をわざわざ来てやったが……。はて、貴様の様な
北谷教諭は言いました。
『契約が成立しそうに無いときは丁重にお帰り願え』と。
「……えー。私にはどうやら分不相応なようで、今回はご
『……え。お祈り……ぇ?』
―――――――――――
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