第13話 ダイナマイトボデ――……ぇ
「……義兄さん。学年順位が十位にあがってましたよね? 今までは万年最下位だったのに。それはもしかして、義兄さんが
長光は、胸の前で両手を組み眼を伏せた。
「……もし、そうだったらとても残念です」
「……一応聞くけど、なんで残念なの?」
「薄緑様の護衛は、義兄さんの実績では無理だと思います。
あえて
式神召喚には、大別して三つの方法がある。
この中で最上位の難易度と力量があると言われるのは、
過去に大きな悪行を行ったとされる存在を、偉大な陰陽師が直接なんらかの
どうやら浅井家は貴族の家系のようだが、陰陽道の名家という訳では無く、そういった
人を模した形代を用意し、そこに術者が儀式を用いて通じた神々への祈り、あるいは怨霊の念のみを封入して、御力の一部を使役するといったものだ。
祈りや念と言った形のないものが力となり、力は不安定だ。
そしてどちらとも言えないのが、
これは陰陽師の思念のみで生み出される故に、陰陽師の能力がそのまま式神に
中途半端な能力の陰陽師がこの召喚を行うと、はっきり言って戦闘能力が相当に低い――人間以下の力量である式神となる可能性が高い。
調伏された依り代を持たない俺がやるとしたら、陰陽師としての能力や心が強く影響される召喚方法のみに限られる。
一学生が、
長光は――俺の努力が報われないだろうと、気の毒に思ってくれているのだ。
「そうか、心配してくれてありがとう。でも別にさ、俺は
「義兄さん……無理はしないでください。ここのところの義兄さんは、どこか変です」
「そっか、変か。……心配してくれて、ありがとう。嬉しいよ」
まあ変で当然なんだけどね、と小さく呟いて足を進める。
「それより長光はさ、護衛パートナーになって欲しい相手とかはいないの?」
「――えっ!?」
目に見えて動揺している。心なしか頬も紅く染まっている。
――ああ、これは意中の男がいる反応だ。
ちくしょう。
誰だその幸福な男は。
男ってのはな、たとえ義妹であろうとも、美人に想われている男の存在は面白くないんだよ。
「……そうか、長光も思春期なんだね」
「に、義兄さんっ!!――あっ待ちなさい! 逃がしませんよッ!?」
逃げる俺に、追いかける長光。
楽しい追いかけっこだ。
捕まえてごらんなさーい!……あれ、立場が、逆じゃね?
まさか三十歳を越えて、JKとこんなに楽しい追いかけっこするとは思わなかった。
するとしたら、痴漢冤罪から逃げる時ぐらいだと想っていた。
俺も式神召喚の準備をしなければならないな、と思いながら家まで追いかけっこを続けた。
――翌日の学校にて、不幸な事件は起きてしまった。
俺は朝から近隣の病院へと寄った。
受診するためではない。
パラフィンという白色半透明の個体を分けて貰うためだ。
パラフィン浴で溶かされたパラフィンは、まるで
それでいて乾燥すると大きく形を変えないという、まさに形代にはちょうど良い素材だった。
それに理学療法士にとっては馴染みのある素材であることも、選択材料の一つである。
「――ほら、みろ国行!」
「すっげぇ! ダイナマイトバディ!!」
「も、もの凄くリアルだね……っ」
「うはははははッ! 解剖学は得意中の得意だからなっ!!」
ちょっとした人形程度でよかったのだが、つい本気を出してしまった。
ぼん、きゅ、ぼんのリアル女性フィギュアを造っていた。
いまでは
ちなみに脳裏によぎったモデルベースは、家の風呂場で
ポーズもタオルで身をかくしている姿に設定した。
あまりにリアルなので、
このムッツリめ。
「見ろ! この髪の
「いっひっひ、腹がいてぇ! お前、それ売れるよ!!」
「それは困る。俺の大事な義妹フィギュアが他の男の手に渡るのは気にくわん。よし、こうしよう」
そして、俺は人形の股間部分に男性特有の膨らみを加えた。
「ちょ、安綱! それはさすがに!! さすがにヤバイって!? もう駄目、しんどいっ!!」
「うははははッ! 俺にはこういった才能があるのかもしれないな!!」
国行と一緒に馬鹿笑いをしていると、光世は「あっ」と言ってそそくさと去っていた。
さすがにこういった下品なことには付き合いきれなかっ「随分楽しそうですね、私も混ぜていただいて良いですか?
なぜ、早く言ってくれナインデスカ――……。
デスカー……。
―――――――――――
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